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【 空樽能鳴 】 [政治]

【 空樽能鳴 】

のっけからお説教臭くて申し訳ないのですが、「空樽能鳴」とは、福沢諭吉の言葉で、意味は読んで字の如くで、空の樽は叩けばよく鳴る・・つまり、ペラペラ喋る奴ほど中身は空っぽだ・・・という、まるでオヒョウの為にあるような言葉です。

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鳩山首相は、あまりペラペラ喋るタイプではなく、その訥々とした話し方は好感が持てるのですが、英語で話す時は能弁になるのでしょうか?英語で米国の首脳に話しかける度に相手の心が離れて行く様です。オバマ大統領との最初の会談で「 Trust me.」と言ったそうですが、果たして、信用してもらえるでしょうか?

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逆説で考えるオヒョウは、自分から「信用してくれ」などと言ってくる相手を信用してはいけない・・・と考えますから、あの言葉は逆効果だったかも知れません。考えてみれば、本当に自信がある人は、口で語らずに証拠を見せます。そうして相手を信用させます。 見せるべき証拠が無い人が、仕方なく口先で「信用してくれ」と言う訳ですが、そんな場合は甚だ危ういのです。

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そもそも、trust me とはどういう意味でしょうか?「私は嘘を付かない」という単純な意味でしょうか? それとも日本風に言えば「決して悪い様にはしないから、私にまかせてくれ」という意味でしょうか?前者であれば、当たり前で発言するほどの事ではありませんし、後者であれば、それはそれで問題です。

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「悪いようにはしない」という場合、「あなたにとって不利益になる事はしない」と概ね同じ意味ですが、鳩山首相は日本と日本国民の利益を代表しているのですから「米国にとって不利益になる事をしない」などとは言えないはずです。もしそうなら、日本に対する裏切り行為です。なぜなら外交とは常に国益と国益の衝突ですから、どんな友好国であっても、相手にとって不利益になる事はしない・・とは言えないはずなのです。

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あるいは 「悪いようにはしない」を日米合意尊重、日米同盟堅持は、最低限守るよ・・という意味に解釈する事もできます。しかし、それは鳩山首相の本意ではないでしょう。 彼は「日米合意の重みは理解するがそれにこだわらない」とか、「新たな対等な日米関係の構築を目指す」と自ら言っているからです。

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まして現内閣は、日米合意にも日米同盟にも消極的な社民党と連立しています。Trust me.という言葉は、オバマ大統領の耳にはいぶかしく聞こえたに違いありません。

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そして、結果的に、鳩山首相はオバマ大統領を裏切った形になっています。早期に日本の提案を出すと約束しておきながら決断を先送りし「拙速はよくない、新しい提案の締切りも設けない」と言い出しました。これは、かなり重大な約束違反です。  

Trust meを、嘘をつかない・・・という極めて控え目な意味に解釈しても、それに反した事になります。

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せめて日本語で「私を信頼して欲しい」と言っていたなら、ニュアンスの違いだとか、通訳の説明の問題に帰着させて、ごまかす事もできました。でも、この英語の言葉はアメリカ側の心にしっかりと残ったはずです。やはりTrust me. などと言わなかった方がよかったのです。

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では鳩山首相と同じように、外交交渉の直後に前言を翻して、相手の信用をなくし、周囲を慌てさせた首相は他にいるでしょうか?ひとりだけいます。かつて暗愚の宰相と言われた鈴木善幸です。

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彼は訪米してレーガン大統領と会談した後、帰国してすぐ「日米同盟には軍事的側面は含まない」と、とんでもない発言をして外務大臣を慌てさせました。結局、鈴木善幸首相の発言に反発した伊東外相が辞任する形になりましたが、米国は呆れ果て、日米関係は冷却化しました。

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実はその頃まで、日米同盟という言われ方はあまりありませんでした。専ら日米安保条約と呼ばれ、10年置きに来る、条約見直しの度に安保闘争が繰り広げられ、左派系の人々の合言葉は「安保反対」でした。そして、安保条約の実体は軍事面での同盟関係でした。

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しかし、もともと社会党で、政権側に付きたい一心で自民党に鞍替えした鈴木善幸は、日米安保条約を快く思っていませんでした。

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だから、彼は本音として、日米の軍事同盟に反発したのですが、その結果は非常に深刻でした。しかし、世の中は不思議です。

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彼が退陣した後の首相、中曽根康弘は一転して、対米協調路線を取りました。レーガン大統領とは個人的にも友情を結び、ロン・ヤスの関係になり、日米安保に関しては、中曽根の「日本は不沈空母」との表現も飛び出しました。

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米国側からみれば、あまりに無責任で交渉相手にできなかった鈴木善幸の時の反動で、中曽根に肩入れしたという側面もあるでしょう。同じ様な現象は韓国の盧武鉉政権から李明博政権に移行した時にも発生しています。

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ぶれまくり、舌の根も乾かぬ内に前言を翻す鳩山政権も、その後に強固な日米関係を築くための布石だと考えれば、納得がいきます。でも彼が9億円の「子ども手当」スキャンダルで退陣したあと、日米関係を修復する首相が登場するかな?・・・と思ってもその人材がいないのです。


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夏炉冬扇

こんばんは。
なかなか難しいですね。
いい人なのでしょう。


by 夏炉冬扇 (2009-12-16 20:28) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇さん、コメントありがとうございます。

多分、鳩山由紀夫氏は、いい人なのだろうな・・と思います。
まじめで正直な人柄である事は間違いないでしょう。
でも、良い人すぎると、政治家には向きません。
特に総理大臣には向いていないでしょう。

やはり鳩山氏は学者になった方がよかったのかも。
それにしても、日本の政治家はみなさん、総理大臣になると、
だんだん、人相が悪くなるように思います。

なぜなのでしょうかね?
by 笑うオヒョウ (2009-12-17 02:49) 

yoshimi

この首相に関する解説記事をいろいろ読むと、人に嫌われたくない、目の前の相手にうける言葉をつい言ってしまう(=相手によって発言がコロコロ変わる)、とか、いわゆる八方美人的性格なので、どうも指導者には向いていないようですね。今までの発言を追っていくと、彼の発言をいちいちまともに受け取るのもバカらしい気がします。
いわゆる”いい人”なのでしょうが、そういう人は優柔不断な場合も多いですし、難局ではあまり頼りになりません。四方八方を丸く収めるような類稀な調整能力がない限り、結局、”より悪い”決断をする可能性は高いように思います。

by yoshimi (2009-12-17 11:18) 

笑うオヒョウ

yoshimiさん、コメントありがとうございます。

確かに、鳩山首相は、人に嫌われたくない、人と対立したくな・・と考え、相手の考えに迎合するところがありますね。国民新党の亀井氏や社民党の福島氏はそのあたりを見ぬいていて、完全な少数政党なのに、連立政権をひきづり回しているみたいです。政権与党内には多数決はなく少数意見がまかりとおっっているように思えます。

小沢一郎は、鳩山がそういう性格なので御しやすいと思ったかも知れませんが、政権内でまとめる力が総理に無くては、困ります。

アメリカから見れば、アメリカとの関係より、代議士が数人しかいない社民党の意見を重視する、鳩山政権が不思議な存在に見えるでしょうね。

またコメントをお願いします。





by 笑うオヒョウ (2009-12-17 12:44) 

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