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【 両角良彦とCANDU炉 その1 】

【 両角良彦とCANDU炉 その1 】

先日、つくばで日本原然株式会社の山本文雄氏の講演を聞く機会がありました。 山本氏は、遠心分離法によるウラン濃縮技術の世界的権威です。ご承知のように、今に日本で稼働している商用の原子炉の殆どは軽水炉で、この方式は、事前のウラン濃縮と、使用済み核燃料の再処理が必要です。使用済み核燃料は、再使用サイクルを繰り返した後に、最終処分場に行く訳ですが、今の日本では、その再処理工程がなかなか稼働しないのと、最終処分場が確保できないのが大きな問題になっています。

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今の日本の原子力産業が直面する種々の問題を聞いた後、オヒョウはふと思いました。「 両角良彦のCANDU炉がものになっていればなぁ・・・・ 」

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オヒョウが彼の存在を知ったのは大学か高校の時代で、彼が通産省事務次官の頃です。 彼が趣味とするナポレオン研究の本を読み、内容の濃さに驚きました。 今すぐ大学の文学部の教壇に立っても講義できそうなレベルと思われ、アマチュアなのにここまで研究できるとは!(通産官僚なんて暇なのかな?)と感心した訳です。当時は、日銀理事をしながら森鴎外の研究で他の追随を許さなかった吉野俊彦とか、サラリーマンなのに趣味の研究で名を挙げる人が何人かいたのです。昨今は、官僚とは仕事もせずに国家の金を蚕食する悪者の様に言われますが、尊敬に値する人物もいるはずだ・・とオヒョウは思います。

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話は脱線しましたが、彼は通産事務次官を退任した後、電源開発の総裁に就任しました。今なら天下りだと非難されるところですが・・・。そこで彼は、原子力発電所にCANDU炉を採用しよう・・と大胆な提案をしました。

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ご存知の方には、くどい説明で恐縮ですが、CANDU炉とはカナダが開発した重水炉です。軽水炉と同様、加圧水型と沸騰水型がありますが、多くの特徴があります。

軽水炉に比べての利点と言えば、

1.燃料の前処理、濃縮工程が不要で、天然ウランがそのまま使える。

2.1.の結果として、軽水炉の使用済み核燃料をそのまま使える。

3.使用済み燃料から複雑な工程なしに容易にプルトニウムを回収できる。

4.故障が少なく、圧倒的に高い稼働率を維持できる。

逆に不利な点と言えば、

1.冷却剤として大量の重水を必要とするので高価。

(オヒョウが学校にいた頃、たしか重水の価格はスコッチウィスキーと同じくらいでした)。

2.プルトニウムが容易に取り出せるという事は、簡単に核兵器を製造できる事を意味する。

3.軽水炉より、廃棄物が多く発生する。

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両角氏は、上記のCANDU炉のメリットに加えて、電力各社の原子炉が全て軽水炉なので、実験的な意味合いから電源開発は重水炉導入を提案したものと思いますが、即刻猛反対を受けて、提案は却下されました。

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反対した理由は、既に動燃(当時)が検討していた核燃料サイクルの構想とぶつかるからですが、それ以上に、プルトニウムを容易に抽出できる技術や設備を日本が持つ事の外国への影響を考えて、遠慮したという事情があったようです。 外国に気兼ねして原発を持つのをあきらめるなんて、変な話ですが、日本らしいです。

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前述しましたが、CANDU炉は、軽水炉の燃えカスの燃料をそのまま燃料に使えます。 また新品の燃料を使う時もウラン濃縮が不要です。だからCANDU炉単独で動かすより、既存の軽水炉のシステムに、嵌め込む形で運転すると極めて合理的です。 なかなか動かない再処理工場の負担を大幅に軽減できますし、能力不足が心配な濃縮工程の負担にもなりません。

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そして、政府はCANDU炉を否定しながら、ほぼ同じ機能を持つ新型転換炉「ふげん」を開発し、さらにその延長上に高速増殖炉「もんじゅ」を開発しました。 政府方針は大きくぶれています。

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そして「ふげん」は廃炉となり、「もんじゅ」はナトリウム漏れで運転をできないままです。 あまつさえ、高速増殖炉用の燃料(軽水炉よりかなり高濃縮)を製造中にJCOの臨界事故を起こし、2名が亡くなりました。

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そんな事なら、CANDU炉を導入しておけばよかった・・・とオヒョウは思うのです。それにプルトニウム抽出の問題ですが、日本が遠慮する一方で、ウラン濃縮能力が乏しい韓国や中国はCANDU炉を導入し、どんどんプルトニウムを作り出しています。核拡散防止条約に加盟している各国は、核燃料も核生成物も厳密に管理されており、CANDU炉を運転しても何ら問題はないのです。日本だけが遠慮する必要はないのです。

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とはいえ、CANDU炉はもう30年も前の技術です。 今更、なぜオヒョウが思い出すのか・・といえば、それなりの理由があります。CO2削減25%のプロジェクトには、CANDU炉が最適だと、オヒョウは思うからです。 それについては次号で申し上げます。


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