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【 ハブ空港異聞 その2 】 [航空]

【 ハブ空港異聞 その2 】

 のっけから私事で恐縮ですが・・・(あっ、ブログに私事を書くのは当たり前か)、オヒョウの家内は、小さな英会話教室を主宰しています。そこの生徒さんの女の子が・・・「 先生、この間、お父さんが出張でヘルシンキに行ったの 」と言うので、家内が 

「 フィンランド出張だったのね。珍しいですね。 」と言うと、

「 ううん、ドイツ出張だったの 」

「 それならデュッセルドルフかフランクフルトへ出張したのでしょう? 」

「 ううん、ドイツ出張でヘルシンキに行ったの 」

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ちなみにこの生徒さんのお父さんは、某製鉄会社に勤務する技師だそうです。 そして、フィンランドには製鉄会社もあり出張の機会は確かにあります。 ラウタルウキという会社は薄板と表面処理鋼板で独特の地位を築き、北極圏に近いトロニオにはオウトクンプというステンレスメーカーがあります。どちらもユニークな存在として知られています。10年以上前ですが、ヘルシンキでIISIの総会が開かれた事もあります。

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だから、製鉄会社の技師がフィンランドへ出張する事もあるのですが、どうもそうではなく、やっぱり目的地はドイツだったみたいです。ではなぜ、彼女はヘルシンキと言ったのか?

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多分、彼女のお父さんは、ヘルシンキ行きのフィン・エアに乗り、ヘルシンキからドイツ行きの飛行機に乗り換えたのでしょう。これは非常に合理的な方法です。

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日本から直行便でロンドンに行かれた方はご存知でしょうが・・・、ロシアを過ぎ、最初にヨーロッパに入るのはフィンランドであり、ヘルシンキの上空を通過します。 だから、ロンドンでなくヘルシンキまでなら、飛行距離は短くなり、その分積載燃料も減って軽くなり、運行コストは大幅に下がります。 ドイツのデュッセルドルフに行く場合、どうせ日本からの直行便は無く、フランクフルトかパリかロンドン乗り換えになります。それならヘルシンキ経由が、一番距離が短く、便利で安価になります。ヘルシンキ乗り換えを選んだなら、彼女のお父さんは、非常にスマートな選択をしたことになります。

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しかし、ヘルシンキ経由が便利になるのは、日本から大圏コースで飛ぶ場合だけです。 欧州便が直行便ではなく、アンカレッジ経由だった昔、最初の到着地は、ロンドンだったり、コペンハーゲンだったり、アムステルダムでした。 北極点から南下するコースだと、どれも大きな違いが無かったからです。 そしてそれらの空港から最終目的地に向かったのです。

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欧州=東アジア間は、大圏コースであれ、北極空路であれ、着陸地点の緯度は高い方が飛行距離を短くできて有利です。 試しに、大圏コースをメルカトール図法の地図に描けば、北に大きく迂回している事に気付きます。だから、飛行距離を短くするには、北の空港が便利なのです。

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北米の東海岸と日本を結ぶ場合も同様です。北米から飛んでくる飛行機は、北東の方角から、成田に進入してきます。これは、アンカレッジ経由の時代も東海岸直行便の時代も同じです。

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そして、燃料切れの飛行機は、しばしば、成田に到着できず、新千歳に下りたりします。(仙台に下りた事もあったはず)。無論、飛行機の性能から考えた飛行可能距離は、問題なく成田まであるのですが、少しでも離陸重量を軽くして省エネ飛行をしたい、エアラインは燃料搭載量をギリギリにして飛びます。偏西風に逆らって飛ぶ、東京行きでは意外に燃料を消費し、足りなくなる場合もあるのです。常習犯はノースウェス・・・。それなら、最初から、到着地を成田ではなく、新千歳や仙台にすればいいのです。成田なら乗り換えなくて済む、首都圏への乗客には不便ですが、どうせ成田から国内線に乗り換える乗客、或いは近隣の国へ向かう乗客には、千歳の方が、都合がいいのです。

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もっとも、北海道のフィンランド化などという表現を使えば、なにやらロシアの存在を考えてしまい、適当な表現ではありませんが・・・。

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前原国交相は 「アジアのハブは羽田」と考えていますが、北米や欧州との交通だけを考えるなら、実は北海道の方がいいのです。ダイレクトに首都圏に入る直行便については、ハブもスポークもへったくれもありません。成田と羽田はそれでいいのです。

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そもそも国際線でのハブ&スポークシステムは、そんなにすばらしいのか? 米国でも欧州でも国内のハブ&スポークのシステムは存在しますが、国際線での明確なハブはありません。

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欧州では、東アジア便については、前述の通り、ヘルシンキがハブになりえますが、EUに飛来する飛行機で東アジア便はむしろ少数です。 それはなぜか? ハブ&スポークは本当に正しいのか?については次号で管見を申し上げます。


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コメント 2

Dr.Y.

たびたび すみません。今、学生と一緒にK市警察の方による薬物乱用に関する講演とビデオ上映を聴かされ(見せられ)て、ウツ状態です。ところで、羽田のハブ空港化、ハブという用語に問題があるのかもしれませんが、ごく当然のことではないですか? 私の勤務先の近くにあるK地方空港からは、成田便が1便?出ているだけなので、海外に行こうとする人は、サンダーバード経由で関空を使う人が多いらしい。まだ、仁川利用というのは、当地では一般的でないみたいですね。私など、こちらに引っ越して以来、サンダーバード云々の面倒さゆえに(荷物を関空まで宅配?するサービスは、あるらしいですが)、海外には出かけていません。東京にいる間に、もっと海外に行っておけば良かったのに、と思います。
で、千歳あるいは仙台をハブ空港に、というご意見のようですが、一体実現可能な構想として提言されているのでしょうか? 上に書かれているのは海外便のコスト計算のみですが、国内便でそれら空港のハブ利用だけで、K空港から仙台あるいは千歳行きの国内便が日々満杯になるとでも?(たしか、今も日に1便ずつはあるみたいですが)
先月、久しぶりに羽田便に乗ったら、往復ともジャンボ?(1番大きい機)でなくて驚きました。ことほど左様に、地方からは羽田経由でないと国内便が維持できないのでは.......
by Dr.Y. (2009-10-23 16:30) 

笑うオヒョウ

Y博士さん、コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。 基本的に貴兄のお考えに同意するもので、本当に新千歳や仙台がハブとして適していると考えている訳ではありません。

小生の説明不足をお詫びする次第ですが、申し上げたかった事は下記の通りです。
1.羽田は既にハブになっていて、これからハブを目指すというのはおかしい。
2.仁川がハブとして機能する事に何の問題も無く、便利だから利用する人が
  多いのは結構な事ではないか。
3.前原氏が言う様に、ハブ空港の定義を国際線と結びつける必要は
  ない。
  もし、国際線云々に拘泥するなら、札幌や仙台の方が好都合。
   → 極論の例として新千歳を挙げた訳で国内線の不便を思うと、
     北海道が、(国内線も含めての)ハブになりうるとはとても
     思えません。
     つまり、国際線のハブという発想がナンセンス・・という意味です。

小生の説明不足を反省し、この点を補足したブログを今週中に、したためたい・・と思います。
by 笑うオヒョウ (2009-10-29 12:32) 

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