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【 オバマとオマハ 】 [アメリカ]

【 オバマとオマハ 】 

オバマ大統領が公約にうたい、なんとか実現させたいのが、国民皆保険化です。

多くの先進国で実現している基本的な福祉制度が米国で実現していないのは不思議ですが、オバマがそれを実現させたいのはよく判ります。そして民主党が悲願としてきた案件をオバマが実現すれば、彼の名前が歴史に残ります。

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オヒョウの個人的な記憶ですが、勤務先のシカゴの事務所を縮小移転する際、解雇された1人の女性秘書が一番悩んだのは、健康保険(医療保険)の問題です。彼女のご主人は糖尿病を患っており、失業した場合、新たに医療保険を契約しなくてはならないが、その負担が大きいというものでした。 

その時、オヒョウは米国が皆保険でないことに驚きました。 勿論健康保険(医療保険)が無い訳ではなく、民間企業の保険会社と契約する訳ですが、その費用は自己負担です。 

病気になった時の負担が自分持ち・・・というのは、豊かな人にとっては、問題ないでしょうが、蓄えの乏しい人にとっては辛い事です。病気自体が肉体的・精神的苦痛である上、場合によっては収入を絶たれ、しかも治療費が自己負担・・というのでは三重苦です。

アメリカとは厳しい社会だ・・。

米国は、基本的に自分の事は自分で責任を持つ・・という発想です。憲法修正第2条を拡大解釈して銃砲の所持を国民に認めているのも医療保険を任意として民間に任せているのも、その発想に基づきます。 

そして、米国には勤労意欲や貯蓄の意志が乏しい人が少なからずいて、福祉の充実とは、徒にそれらの人を利するだけの政策だとして反対する人も多くいます。 

でもこれでいいのか?

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そのシカゴの街並みをミシガン湖の湖畔から眺めれば、スカイラインには超高層ビルが並びます。そして気付くのは、その中に、石油会社のビルと、大手小売の会社のビルが1棟ずつある他、保険会社のビルが多い事です。 

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米国で今どの産業が盛んであるかを占うには、大都市の摩天楼の持ち主を見ればいいのです。 シカゴだけではありません。ニューヨークのパンナムビルはメリルリンチのビルに代わりましたし、クライスラータワーも今は持ち主が異なります。大企業の栄枯盛衰を知る中で、常に元気なのは、金融と保険です。特に保険会社が隆盛を誇る事に気付きます。

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その医療保険の会社の最大手は、ネブラスカ州オマハにあるMutual of Omahaです。 実のところ、オマハで有名なのは、Union Pacific鉄道の本社と、著名な投資家ウォーレンバフェット氏が経営する投資会社Berkshire Hathaway社と、そしてこの保険会社です。 ああ、それに加えてオマハビーフというのが、とてもおいしいと評判です。 オマハを訪れた人は皆、空港でチルドビーフのパックを買って帰ります。

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オバマは就任後このネブラスカ州の州都にまだ訪れていない様ですが、是非訪問してMutual of Omaha社や、Berkshire Hathaway社と協議すべきです。ちなみにBerkshire Hathawayは傘下に多くの保険会社を持ち、実質的に米国の保険業界を支配しています。

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ところで、オバマの提唱する国民皆保険に対する反論は、

1.自分は既にお金を払って、医療保険を購入している。それなのにお金を払っていない人々にも同じサービスが与えられるのでは不公平だ。しかも、その制度に自分が払った税金が投入されるというのでは、2重取りされる訳で不公平だ。

2.お役所が介入すれば、自由に医師や治療方法を選べない。お役所から押し付けられる医師や病院では心配だ。

3.コスト意識が乏しいお役所が治療方法を管理すれば、すぐに財政は破綻してしまう。 

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実のところ、1~3の意見の内、適切なのは、3.だけです。全ての福祉制度は、導入時に必ず不公平を発生させます。しかし長期的に見れば、全体にとっての公平が実現するものです。だから不公平感を拠り所に反対するのは、不適切です。

自由に医師を選べなくなる・・というのは、むしろ逆で、コストに敏感な民間の保険会社は、細かく医療現場に干渉してきます。米国ではお産や手術の後の入院日数が短いのですが、これはアメリカ人がタフだからではなく、保険会社が長期間の入院を認めないからです。

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国民皆保険制度に一番反対しているのは、実は国民ではなく、保険会社です。上記の国民の意見は保険会社の反対をカモフラージュする為の声に思えてなりません。 

米国が政府管掌の健康保険(または医療保険)制度を設けるという事は、民間会社の事業を圧迫する事になります。 民業圧迫というのは国営事業にとって最大のタブーですから、慎重に行う必要があります。 だから、オバマはオマハへ行き、保険会社を説得するべきだと、オヒョウは思うのです。

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米国は自己責任の国であると同時に、イコールチャンスの国でもあります。結果平等ではないけれど、出発点では平等な機会を与えようという発想を皆が理解しています。

出発点での公平さ、平等なチャンスを・・という考えを延長すれば、自己責任の及ばない部分については、公的制度で平等を担保すべきだという発想になります。 

つまり、健康や疾病については自己責任ではない面もある訳で、公的医療保険を設ける事は、米国の考え方に矛盾しません。保険会社の抵抗に屈せず、オバマがこの政策を実現する事を期待します。 (オヒョウとは直接関係ない事ですが・・・)。


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笑うオヒョウ

タケルさん、コメントをありがとう。 こんどタケルさんのブログにも
遊びに行きますのでよろしくお願いします。
by 笑うオヒョウ (2009-10-19 01:03) 

笑うオヒョウ

失礼しました。タケルさん、コメントではなくniceでしたね。
それから、本文中に誤字(誤変換)がありました。

回顧ではなく、解雇でした。

お詫びして訂正します。

ちなみに・・解雇という言葉は一番嫌いな言葉です。
by 笑うオヒョウ (2009-10-19 01:08) 

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