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【 放蕩息子の帰還 その1 】 [航空]

【 放蕩息子の帰還 その1 】

日本航空の経営状態が悪化しています。 

オヒョウ自身も経営状態の厳しい会社に在籍した事があるので判りますが、関係のない外野席から勤務先の経営状態について、アレコレ言われるのは不愉快なものです。

しかし日本航空の問題は、例え株主でなくても、日本国民全員にかかる問題であり、皆が関心を持って当然の話題です。 だから今回は、それについて考えます。

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もともと、国を代表する航空会社つまりナショナルフラグキャリアーとは、高コストで赤字体質なものです。 日本航空は発足当時、国が株式の大半を持つ特殊会社でしたが赤字が続き、その赤字を国が補填する状態が続きました。

昭和30年代、社長の松尾静麿氏は池田勇人首相から「この放蕩息子が!」と罵られたとの事です。でも当時は、赤字でも放蕩息子でも、国の威信をかけて国際線に飛行機を飛ばす必要もあったのです。 

しかし、時代が進むにつれ、航空業界は自由競争の時代になり、ナショナルフラグキャリアーといえども、採算を重視する普通の会社になっていきました。日本だけでなく多くの先進国が同時進行でそうなりました。 

その過程で「親方国旗」の体質が抜けずに、競争から脱落する会社もありました。ベルギーのサベナ、イタリアのアリタリア、スイスのスイスエアなどは、国を代表する航空会社なのに経営破綻しています。米国の場合はナショナルフラグキャリアーとは言い難いのですが、パンナムが破綻しています。 

日本航空の場合「親方日の丸」の経営体質、かなりラジカルな集団も含む7つの労働組合、官僚的な接客態度、高すぎる乗務員の報酬とプライド、経営規模に対して多すぎる役員、コネや縁故で採用する人事・・・など、本来なら20世紀中に破綻してもいいくらいの問題を抱えています。 

それが今まで持ちこたえてきたのは・・・、日本が経済大国で、航空需要も順調に伸びてきたお陰です。東京=札幌便など、他の国がうらやむドル箱の国内幹線空路もありますし、太平洋路線は、飽和した大西洋路線に比べて、旅客の伸びがあったからです。 

でも、もうそういう時代ではありません。航空業界のコスト競争は苛烈で優雅な経営は許されなくなりました。そして、企業経営がうまくいかないなら、外国企業の傘下に入るのもやむをえません。 

でも今回手を挙げたデルタ航空の資本参加がうまく行く保証はありません。デルタ航空は過去に自分自身もChapter11の適用を受けた経験があり、彼等が日航のコスト合理化を指導すれば、効果があるはずですが、そう簡単ではありません。 

大前研一氏も指摘していますが、カルロス・ゴーンの登場でV字回復した日産自動車とは全く状況が異なるからです。レガシーコストを削り、組合の発言力を弱め、本当に企業体質の改革を行うなら、株式の過半数を持たなければできません。

デルタ航空が拠出する500億円では、日航の株式の10%台にしかならず、 指導力は発揮できません。デルタ航空は日航への資本参加で、手薄な東アジアと太平洋路線のパートナーを得るメリットだけを考えているのかも知れません。

日航への資本参加についてはアメリカン航空も手を挙げていますが、これについては、ここでは触れません。 

このままでは、今年中に日航は債務超過になり、しかも3年以内の再建の目処が立たない事から産業再生法の適用も受けられない見込みです。そうなると、日航を再建する為に新たな法律を作って、政府主導で改革するしかありません。 

前例として考えるべきは旧国鉄の分割民営化です。 旧国鉄も、モータリゼーションという時代の変化に対応できず、高コスト体質を抱え、政府からの干渉や民業圧迫防止の理由で経営の自由を失い、過激で先鋭的な組合を複数抱えて、行き詰まっていました。

その様な企業には、生体解剖に近い荒療治しかありません。 

旧国鉄の場合そうはいっても鉄道は国民に不可欠・・・という事情がありましたが、日本航空の場合、JALが無くてもいいではないか?という意見も成り立ちます。 

JALのレゾンデートルを問われる環境下で、どの様な再建策がありうるか・・・。 

オヒョウが考えるその具体的内容については、次号で申し上げます。

 


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