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【 フィルムノワール 】 [映画]

【 フィルムノワール 】 

最近、DVDで見た映画「The Good German」(邦題:さらばベルリン)の解説には、フィルムノワールの作品・・・と書いてあります。

更に、先日読んだ、「ブレードランナー」の解説にも、フィルムノワールの作品と書いてあります。 うーむ。よく分かりません。

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フィルムノワールというのは、1940年代~1950年代に主に米国で制作されたB級映画で、退廃的でアウトローが登場する映画だと思っていました。

基本的に白黒で、主人公はくたびれた探偵か刑事、ストーリーはひたすら暗い作品であると考えていたので、1980年代以降の作品をフィルムノワールと言われると、さて、フィルムノワールの定義とは何ぞや?と思ってしまいます。

そこでWikipediaで調べてみると、面白い事が分かりました。基本はオヒョウの理解の通りですが、ハリウッドのフィルムノワールの他に、フランスのフィルムノワール、香港のフィルムノワールなどの派生種があります。

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具体的にどういう作品がフィルムノワールたりえるかと言えば、

1.退廃的な世界に犯罪や暴力がテーマとして登場するアウトローの話です。しかし、暴力礼賛という訳ではありません。

2.主人公はうだつのあがらない探偵や刑事、生活の落伍者などであまり格好良くありません。

3.全体に暗く閉塞感が漂い、救いの無い結末で虚無感を味わいます。

4.悪女とも言うべき女性が登場し、主人公を惑わせます。

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問題は、悪女とは何か?です。一応ヒロインですから、絵に描いた様な悪党という訳にはいきません。 ちょっとすれっからし・・というところですが、ひとつの記号としては、タバコを吸う女性・・・という事で見分ける事ができます。

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映画「ブレードランナー」は1980年代のカラー作品であり、フィルムノワールとするには無理がありますが、ハリソンフォードが演じる主人公のデッカード刑事はくたびれていて、颯爽とはしていません。ショーンヤングが演じるヒロインのレイチェルは、決して悪女ではないのですが、レプリカントだし、葉巻を吸います。 この2点でフィルムノワールと言えるのかも知れません。 ちょっと不自然ですが・・・。

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「さらばベルリン」は、面白いサスペンス映画ですが、かなりむちゃくちゃなところがあります。これがフィルムノワールの傑作とされるのは、いかがなものか・・と思います。 

サスペンスものであらすじを言ってしまってはいけないのですが・・・、ちょっとバラします。

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主人公はアメリカ人ジャーナリストの男性ジェイクで、ドイツ降伏直後の廃墟となったベルリンを訪問します。戦後処理と日本への降伏勧告を決めた、あのポツダム平和会議を取材する為です。 雇った運転手は、主人公の昔の愛人レーナの交際相手です。 運転手はベルリンのソ連支配区域と米国支配区域を往復し、闇の物資を運んで儲けていますが、レーナの夫が旧ナチスの重要人物であると知り、ソ連への引き渡しを画策しますが殺されます。レーナの夫は実はロケット製造工場でユダヤ人を酷使した戦争犯罪人として、身を隠していたのですが、最後に射殺されます。主人公のジェイクはレーナのベルリン脱出を画策して成功し、最後はベルリンの空港から飛び立つレーナを見送る場面で終わるのですが・・・・、

映画は全編、どこかで見た映画の焼き直しの様です。 終戦直後の欧州の都会が舞台で、鍵となる人物が実は生きていた・・という筋立ては「第三の男」と似ていますし、ソ連占領下の区域での暗殺は「灰とダイヤモンド」を彷彿させます。 ベルリンで射殺された死体がポツダムに流れ着くのは、日本の「戻り川心中」みたいです。なんといってもすごいのは、最後のベルリンテーゲル空港のシーンです。

夜の空港から飛び立つ女性をトレンチコートの男が見送る場面は「カサブランカ」とそっくりです。「カサブランカ」のオマージュというのなら、それもいいのですが、そうではなさそうです。 

サスペンス映画としては面白いのですが、この場面では、思わず笑ってしまいます。 ところで、この作品がフィルムノワールであるためには、ヒロインに何かの事情があり、悪女である必要があります。 この映画のヒロインである、レーナが不特定多数の男性に抱かれていた過去は、紹介されますが、それとタバコを吸うだけでは悪女とは言えません。どうして、彼女を悪女と言えるのか? この説明は、最後の空港の場面で明らかになります。

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レーナは実はユダヤ人ですが、戦争中はナチスの中枢にいて、どうして最後まで生き残れたのか・・? 主人公のジェイクが彼女に尋ねます。彼女は、戦争中、安レストランを訪れる隠れユダヤ人を見つけて、ゲシュタポに通報する事で、自分自身は生き延びたのです。 だから辛い過去のあるベルリンを離れたがったのですが・・・、どうしてユダヤ人を見つける事ができたのか? 

その部分の彼女の説明がちょっとわかりにくいのです。

日本語の字幕スーパーでは、「あなたから学んだジャーナリストの観察眼でユダヤ人を見つけた」となっています。

英語の台詞では、「あなたから学んだテクニックを利用して、ユダヤ人を見つけた」となっています。

テクニックとは何か? レーナは以前、ジェイクの愛人でした。そして、レーナは戦争中、安レストランで客を取っていたのです。

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いささか下品な説明になりますが、ユダヤ人の男性は割礼をします。だから性器を見れば、アーリア人かユダヤ人かが分かるのです。彼女はおそらく、ベッドを共にすることで、ユダヤ人男性を見つけていたのでしょう。これは台本にも無い内容をオヒョウが推測するのですが・・。うーむ、生き残る為とはいえ、これはまさしく悪女というか毒婦です。飛行機を見送るジェイクのやりきれない表情は、愛人と別れる切なさだけではなさそうです・・。

そう考えれば「さらばベルリン」はフィルムノワールの条件を満たします。

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さらばベルリン」はともかくとして、オヒョウが考える、最もフィルムノワール的と言える映画は「チャイナタウン」です。 年代も新しいしカラー作品なので正確なフィルムノワールの定義からは外れますが、オヒョウはこれが代表的作品だと思います。 この映画のヒロインが抱える事情については、また稿を改めて・・・考察します。


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