SSブログ

【 地下にあるもの 】 [政治]

【 地下にあるもの 】

 

大阪の学校法人に国有地を払い下げたものの、その土地にゴミが多く埋まっていたことから、そのべらぼうな撤去費用を国が負担する事になり、不適切な国有地売却として大きなスキャンダルに発展しています。実際、埋設ゴミの撤去に8億円もかかるとは信じられません。森友学園なるものが怪しげな存在であることは論を待たず、不当な安値での国有地売却は追及すべき問題です。しかし、私は全く別のことを考えます。

・・・・・・

元は沼地だった土地の地中から膨大なゴミが出てくる様子を見ていると、大阪市民はその沼をゴミ捨て場にしていたのだな・・と分かります。 大阪人はあの有様を見て恥ずかしいと感じないのだろうか・・・。 公共の場を汚し、汚物を無責任に放擲するのは、本来の美意識からは遠い行動です。

それにしても、同じゴミ捨て場でも、有史以前のゴミ捨て場は貝塚として珍重され研究対象となるのに、現代のゴミ捨て場はひたすら醜いばかりです。

・・・・・・

同じように、地下汚染が問題となるのは、東京豊洲の市場移転先です。 小池都知事は、土壌汚染を発見して、鬼の首を取ったがごとく、得意満面で昔の知事の非を追及していますが、疑問も多くあります。 冷凍マグロを地面に直接置く訳ではあるまいし、地面から多少のベンゼンが検出されても、食品には影響ないのではないか?と素朴に思います。 それに豊洲がだめで現在の築地がいいのか?と言えば、それも怪しいところです。 築地は環境調査を徹底する前に建設した設備ですから、地中に何があるか、わかったものではありません。

・・・・・・

そしてこの問題を追及する朝日新聞こそ、築地の本社の地下を汚している可能性があります。 インクの有機物質も問題ですし、何といっても新聞社といえば鉛汚染です。 もっとも今の時代、新聞印刷と鉛にどういう関係があるか知らない方も多いでしょうが・・・。

・・・・・・

豊洲がいいのか築地の方がいいのか、それとも両方だめなのか、よくわかりませんが、時間だけは経過します。大騒ぎで移転が遅れる分、関係者の負担は膨らみ、都民の負担も増大します。小池氏はその点にはひたすら無頓着です。

・・・・・・

豊洲の東京ガスの工場跡地だけでなく、残念ながら、日本の場合、工場の跡地にはなにがしかの汚染物質があると考えた方がよさそうです。 化学工場でなくても、機械の洗浄には、トリクロロエタンやトリクロロエチレンを使います。そして六価クロムやPCB、石綿のような極端な有害物質でなくても、化学物質であれば今は問題視されます。

・・・・・・

私の知る、ある鋼管製造会社も市川の工場跡地を道路公団に売却した後、汚染物質が発見され、裁判に訴えられ、莫大な賠償金を払わされました。高速道路の下の土地に多少の有機溶剤が染みていても問題なかろうに・・という理屈は通りません。

・・・・・・

工場だけではありません。ドライクリーニングの店からはテトラクロロエチレンが発生しますし、ゴルフ場の除草剤も地下水を汚染します。 困ったことに、人が社会生活を営めば、土壌汚染と地下水汚染は自動的に発生し、しかも汚染源の特定が難しいのです。 その昔、有吉佐和子が指摘した「複合汚染」は、今も文字通り、地下で進行しています。 工場や工場跡地での汚染に対しては、マスコミも厳しく糾弾しますが、市井の人々の暮らしに関連した汚染や自分たちに都合の悪い汚染は無視します。

前述のクリーニング店のテトラクロロエチレンや新聞社の鉛公害がその例ですし、マスコミは自分たちが遊ぶゴルフ場についても、あまり追及しません。

・・・・・・

私の鹿島の家は20年以上井戸水を使っていましたが、化学物質が検出されて飲用不適となり、仕方なく水道水に切り替えました。 近隣のゴルフ場が関係している可能性がありますが、断定もできません。

・・・・・・

地下が汚いのは、工業化が進み、近代化した日本だけの事情であり、外国はそうではない・・・とナイーブに考える人もいるようですが、そうではありません。 中国の土壌・地下水の汚染は、日本人の想像をはるかに超えています。

・・・・・・

ではアフリカやアジアの途上国はどうか? 途上国は汚染されていない・・と考えたかどうか分かりませんが、昔日本の民放が募金して途上国に井戸を掘って、飲料水や生活用水を確保してあげるという奇妙なキャンペーンを行いました。よかれと思って行った善意の行動でしたが、落とし穴がありました。 

・・・・・・

実はユーラシア大陸とアフリカ大陸には、地下の浅い位置にヒ素が集積・濃縮した地層が広範囲に存在します。 浅い井戸を掘って、飲料水や生活用水、灌漑用水を提供した場合、途上国の多くの人がヒ素中毒になる可能性があるのです。「アフリカに井戸を!」という思い付きで始めたキャンペーンは、健康上の大問題を指摘され、ヒ素かに、いや、密かに幕を閉じました。

実は豊洲のベンゼンよりも、アジア・アフリカのヒ素の方が、遥かに大きな問題です。

・・・・・・

本当は、むやみに地下のものを暴くべきではないのかも知れません。日本だけでなく、世界中に、見たくないもの、見せたくないものを地中に埋める考え方があります。中国では衝突した新幹線車両の残骸を地中に埋めようとしましたし、日本では大地震などの天災の後の瓦礫を埋めます。 今、恋人たちが語らう横浜港の山下公園は、関東大震災の瓦礫を埋めたその上に造られています。 東日本大震災も満6年が経過し、悲惨な風景は姿を消し、瓦礫は地中に埋まっているはずです。

・・・・・・

悲惨なものを地中に覆い隠し、その上に地上の平和な風景を演出すべきだ・・という意見がありますが、一方で地中の埋設物に神秘さを感じることもあります。

中国の蒲松齢が編纂した「聊斎志異」には多くの奇談・怪談が登場しますが、その中に

「西域の砂漠には実は龍が埋めてある。誰でも行って勝手に掘り出して好きなだけその肉を食らっていいが、決して口外してはならぬ。そのことを話せば、命を失う」と男が語る逸話があります。

・・・・・・

口外すれば死ぬというのに、どうしてその男はそれを知っているのか?あるいはどうしてそれを語るのか?という論理矛盾はともかく、この話を読んだ時、これは面白いと私は思いました。

・・・・・・

それというのは、中国では恐竜の化石発掘のブームが起き、ゴビ砂漠はチラノザウルスなどの白亜紀恐竜化石のメッカになっていたからです。

聊斎志異に登場する龍が恐竜と同じかは不明ですが、想像の動物である龍が、恐竜の化石からイメージされてできたとする説に、ひとつの手がかりを与えます。 中国の人は大昔からゴビ砂漠に恐竜の化石があることを知っていたのでしょうか?

・・・・・・

地中に埋めたものの神秘さという点では、「満開の桜の下には死体が埋めてある」というゾッとする表現で桜の美しさを讃えた梶井基次郎でしょう。 

・・・・・・

荒唐無稽な表現ですが、オヒョウの知己で、梶井のこのユニークな表現を否定的に言う人はいません。皆が認めています。無論、本当に死体が埋まっていると考える人はいませんが・・・・。

・・・・・・

まもなく、桜前線は本州で北上を開始し、来月には大震災のあった東北にも到達します。津波の被災地にも桜が咲くでしょう。震災後6年では、新しく植えられた桜は大木にはなっていませんが、ささやかな花でも桜が咲けば、ありがたいものです。

しかし桜が咲いても、その地下に死体が眠っているなどとは、絶対に考えたくありません。 津波の被災者で、いまだ行方不明の方は2000人を超えるのですが・・・。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。