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【 8月5日 宮島一日行 その1 】 [広島]

【 85日 宮島一日行 その1 】

ある日、ふっと「宮島へ行こうかな」と思い立ちました。そこで、以前私の上司だったW専務が、会社を辞める前、広島の生活の記念に宮島観光に行かれた事を思い出しました。W専務にとって、宮島は漱石の「倫敦塔」なのかも知れません。

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ご承知の方も多いでしょうが、漱石はその作品「倫敦塔」の中で、「ロンドンに滞在する者は記念に一度ロンドン塔を訪ねるがよい。しかし、一度きりで二度行くべきではない」という趣旨の事を語っています。事実、彼は2年間のロンドン滞在中、一度しかロンドン塔を訪れていません。 その地を離れる前に訪ねる場所というものあるなら、ある人にはそれがロンドン塔であり、ある人にはそれが宮島なのかも知れない・・・。ちなみに私はロンドン塔を複数回訪ねています。

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そして、なんとなく私も宮島に行きたくなった訳ですが、顔をあげると、目の前にA部長の顔が見えます。そう言えば、彼も宮島を訪問したいと言っておられました。「Aさん、突然ですが、明日の休日、宮島にご一緒しませんか?」と尋ねると二つ返事でOKです。

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去年、一緒にスナメリを見にいったKさんとFさんにも声をかけますが、こちらの二人は先約があったりして、明日は一緒に行けないとの返事です。しかし、それは禍根となりました(後でわかったことですが)。

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そして翌朝、呉から宮島までのドライブは快適です。Aさんとは、これから当社はどちらの方向に経営を進めるべきか、問題は何か、そしてその為に我々は何をすべきか・・という話題でひたすら盛り上がります。 うーむ、私は、もっぱら下品な話とくだらない話が好きなのですが、Aさんと話すとどうしても硬い話になってしまいます。

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宮島口のフェリー乗り場に着くと、係員が、車を置いて人だけで宮島に渡るのか、それとも車ごとフェリーに乗るのか?と尋ねます。さてどうしたものか・・と一瞬迷いましたが、車ごと乗船することにしました。

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着いた先の宮島で、海岸線を一周してみたかったからです。この島はかなり大きく、歩いて一回りは無理だと思ったのです。少しの時間、瀬戸内海の潮風に吹かれて私たちは1030分、宮島に上陸しました。狭い波止場を出ると、私たちは敢えて厳島神社とは反対方向の左側に車を進めました。時計回りに島を一周しようと思ったからです。

しかし、海岸通りを走り、まだ誰も泳いでいない海水浴場の包ケ浦を過ぎると、道は細くなり行き止まりになっています。 「あれぇ? 宮島一周道路は無いのかな?」

しまった!やっぱり広島県の観光地に詳しいFさんを連れてくれば良かった!

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至る所に野生の鹿が歩いている道路を我々は波止場まで引き返し、今度は厳島神社の方角に向かいました。神社の近くの駐車場に車を停めるためです。しかし、道路は観光客と鹿でごったがえしています。おしゃもじとアナゴ丼の看板が並ぶお土産物店が軒を並べる狭い街には、駐車場はほとんどありません。 神社の前まで行ってから、やむを得ず引き返します。大勢の観光客、そして鹿が歩く小路を、車で引き返すのは、どうにも、バツの悪く肩身の狭いことです。外気温は既に30℃を超え、車椅子の人も炎天下の中を神社の方角に進んでいます。 それなのに嵩張る自動車で邪魔をし、エアコンの利いた社内にいる事が、ちょっと恥ずかしくも思われます。

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結局たどり着いたのは、先ほどフェリーを下船した波止場の駐車場です。「なんだ、最初からこの港に車を置いて、歩けば良かった」

そこから私たちは、今戻ってきた道を歩いて引き返し、今日一番の目的である、厳島神社に入りました。

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美しい朱塗りの柱、白壁、上品な檜皮葺の屋根、借景となる背後の弥山の緑、そして海の青色。 実にバランスが取れていて、落ち着いた美しさです。噂には聞いていましたが、さすが日本三景のひとつだけあります。

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特に海面上に連なる回廊、舞楽の舞台、能舞台は見事です。海上に置くことで、開放感と涼感を醸し出し、通常の陸上の建築物とは全く違う風景を創出しています。これが全て平清盛のアイデアだとすれば大変なことで、彼はただの権力者ではなかったのだ・・と気づきます。

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それにしても、観光客には多くの外国人がいます。日本人以上に多いようです。宮島/厳島神社は、学校の修学旅行の定番でもあり、春や秋は高校生や中学生が多いそうですが、今は夏休みでいません。その代わりにおびただしい数の外国人です。

そういえば、岩国の海兵隊基地にいる米兵とその家族は宮島をしばしば訪れると聞きますが、聞こえてくるのは英語だけではありません。英語はむしろ少数派で、フランス語、イタリア語、ロシア語、北京語や広東語も聞こえます。まるでヒースロー空港のターミナルみたいです。聞こえないのはドイツ語と韓国語ぐらいです。岩国の米軍人だけではありません。 いえ、もちろん、私はそれらの外国語を解する訳ではありません。でも何語かぐらいは分かるのです。

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「でも、どうしてこんなに外国人が多いのかなぁ?」

海外に日本を紹介するポスターやパンフレットには、必ず、富士山や浅草の浅草寺、京都の金閣寺などと並んで、海上に屹立する厳島神社の朱色の大鳥居の写真があります。やはり、安芸の宮島は外国人観光客に最も知られた観光地なのでしょう。

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本殿に続く回廊で、フランス語でささやくカップルを見ると、「ここはパリのボンヌフ橋か?」と錯覚する・・こともないのですが、不思議な感覚です。カップルの反対側には、おみくじやお守りが並ぶ売店があります。「何か、お土産物を・・」と見渡すと、細身の便箋が目に留まります。 ちょっと懐かしい思いがします。

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随分前ですが、短冊状の縦書きの便箋に手書きの手紙を時々もらったことがあります。典型的な理科系の人ですが、敢えてプライベートではインターネットもパソコンも電子メールも使わない人です。 美しい手書きの手紙をいただきました。

その方からは私のプログに登場する許可は得ていないので、これ以上は説明できません。

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それはともかく、郵便で頂いた手紙には、やはり手書きの手紙でお返事を出すべきだ・・・と私は考えました。そこで私も便箋に返事を書こうとしたのですが、いかんせん、小学生も呆れるような金釘流の悪筆です。 悪戦苦闘しながら、毎回自己嫌悪に陥りました。

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最近では、私からお便りを出す場合は、ほとんど電子メールです。紙の手紙でもワープロで作成しプリントアウトして送っています。しかし、それでは風情が無い。私も短冊状の便箋に手紙をしたためてみたいな・・。 ふとそんな思いに駆られ、私はお土産として厳島神社の便箋を買い求めました。でも考えてみたら、もう書く相手もいないのですが・・。

夏便箋 書くあてもなく 求めけり

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高舞台を過ぎて、先を望めば、能舞台が見えます。そちらは朱塗りではなく素木の造りです。 朱塗りと素木の建築が混じるのは鹿島神宮と同じですが、それはそれで調和が取れています。 そういえば、A部長は一度、能を見てみたいと言われています。

毎年、冬には厳島神社の薪能が予定されていますから、その時また来ようかな・・と思いながら、厳島神社を後にして、我々は砂洲の先にある清盛神社に向かいました。

それにしても、どうしてこんなに外国人が多いのかな?

以下 次号


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