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【 消費税率 直間比率 エントロピー の三題噺 その3 】 [政治]

【 消費税率 直間比率 エントロピー の三題噺 その3 】

 

人々は、さまざまな借金をします。 普通のサラリーマンの人生を考えた場合、最初にする借金は、奨学金かも知れません。 あとは車のローン、住宅ローン・・・考えてみれば庶民の一生なんて、借金に追われ、その返済を続ける人生なのかな?とも考えます。

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ローン先進国・・というべき米国には、人々が借金に追われる人生を送るアイロニーをテーマにした文学作品が幾つかあります。 その代表格は、アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」であろうと私は思います。 学生時代、これからサラリーマンになろうという時に、これを読んだ私は、勤め人の人生とはこんなにも憂鬱なものなのか・・と思い、落胆した記憶があります。 しかし、その時、私は既に借金人生を始めていたのです。つまり奨学金を得て学校に通っていたのです。

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ここから話は飛躍します。

私が高校生だった頃、自治医科大学が誕生しました。それまで、私立の医学部または医科大学というのは、高額の入学金や学費が話題となり、お金持ちの子供・・もっと言えば開業医の子供しか入れないものだったのですが、自治医大は違いました。分類としては私立大学ながら学費は無料、その代わり、医師となった後に9年間の辺地での勤務を義務付けられる・・というものです。 一種の奨学金の進化形です。入学者は純粋に学力だけで選抜されます。

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当然、開業医の子弟は、この大学に猛反発しました。 実質的に開業医の子弟だけを対象とした私立医大の存在で、一種のギルドを確立していた開業医の世界(当時は実地医家なんて呼び方で持ち上げていました)にとって自治医大は風穴を開ける存在になるからです。

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私の同級生で病院長の息子だったI君は自治医大を非難しました。

「オヒョウよ。奨学金の代わりに、その医学生の将来を縛るなんて人権の侵害だぜ。憲法で職業選択の自由などと共に、居住地の自由も人は保証されているのに、借金のかたに、それを制限し、勤務地を強制するなんて、これは一種の人身売買だ。憲法違反だぜ。 借金で縛られた女工哀史や苦界に身を沈めた風俗嬢と同じだぜ。断固反対しなきゃ」

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なんと新設医大の奨学金は、人権侵害から憲法違反の話に膨らんでしまいました。しかし、銀のスプーンをくわえて生まれて来たようなI君が、自治医大を非難しても説得力はありません。 親から学費を出してもらえる彼には奨学金は必要ありませんが、奨学金無しでは進学できなかった青年もまた多くいたのです。ちなみにI君は、その後、順天堂の医学部を出て、父親から引き継いだ病院を経営しています。

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無暗に借金をするのがいい事だとは思いませんが、必要な時に必要な借金をすることは、当然の経済行為であり、現代社会はそれなしではまわりません。 人生で最初に出会う借金である奨学金が、悪い借金だとは、到底私には思えません。

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先日、呉の港から江田島に向かうフェリーボートの中で明治時代の事を考えました。当時、近代化を急ぐ政府は優秀なテクノクラートの育成が重要だと考え、官費でそれらを育成する学校を幾つか作りました。

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森有礼らが、大学令を作り、大学予備門/旧制高校から帝国大学へ進むエリートの教育コースはできていましたが、それでは足りなかったのです。お金持ちの子弟や家柄のいい子供ばかりを集めても仕方ありません。 学費は国が出し、一種の俸給として生活費も支給する学校にしなければ、優秀な人材は確保できないと、国は判断しました。

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実際、日本は貧しく、そうしなければ上級学校へ進学できる生徒はごく限られていたのです。テクノクラートとして求められていたのは、軍人(士官)、そして中等学校の教師です。 その結果、陸軍士官学校、海軍兵学校、東京高等師範学校、広島高等師範学校、東京女子高等師範、奈良女子高等師範ができ、それらの卒業生が、19世紀から20世紀にかけての日本の近代化を進め、歴史を作っていったのです。

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それらの官費のエリート養成機関の内、2つ(海軍兵学校と広島高等師範)も、広島県に存在したというのは、どうも不思議に思えてなりません。フェリーボートの中で私は考えました。明治のある時期、広島はある意味で西日本を代表する土地だったのでしょうか?

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それはともかく、それらの学校で学んだ学生達は、国に選ばれた存在としてのエリート意識や責任感・義務感は持ったでしょうが、借金のかたに将来を束縛されるなどという被害者意識は無かったはずです。そしておそらく、今の時代の自治医大の学生や、防衛大学校の学生も同じでしょう。

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借金のかたに労働力として売られた人身売買と奨学金ではそこが違う・・と私は思います。 奨学金だろうと、ギャンブルの為の借金だろうと、借金は等しくエントロピーを減少させる行為です。でも人生を考えた場合、いい借金と悪い借金があるし、必要な借金もあるのだよ・・と私は主張したいのですが、なかなかうまく説明できません。

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では1000兆円もある日本政府の借金はどうなのか?と訊かれても、すぐには解答できません。 ただ一つ言えることは、エントロピーは相当小さくなるのだろうな・・ということだけです。


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