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【 ものづくり その1 】

【 ものづくり  その1 】

現代は“ものづくりの時代”なのだそうです。近年、日本は若年労働力の不足や円高のせいで、「工業立国日本」のお株は中国や韓国に取られています。

一方、中国は世界の工場となり、韓国も情報家電の分野などで、日本の産業を凌駕する勢いです。

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それにはそれぞれ理由があるのでしょうが、我が国の指導者は、日本の若者が製造業や技術・技能職に魅力を感じなくなり、サービス業などの第三次産業などを希望するようになったことも一因と考えているようです。 さらにその根底には、学生の理科系離れもあるかも知れません。

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だから、ものづくり国家の再興のための「ものづくり大学」ということなのでしょうか?日本には「ものつくり大学」という珍妙な名前の大学があります。

名誉職の名前にはトヨタの豊田章一郎氏、日立の庄山悦彦氏、東京農工大の神本武征名誉教授らの名前が並んでいます。なるほどねぇ。政府の肝いりで、財界の有名人の名前を集めたのでしょうが・・・、これは何か変です。

英語の名称は、Institute of Technologist ですが・・・、工業大学で用いられるInstitute of Technologyとどう違うのか、英語の苦手な私にはさっぱりわかりません。

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「ものつくり大学」は私立大学ですが、それ以外に「ものづくり大学校」という紛らわしい名前の教育機関が複数あります。私などは混乱するばかりです。

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「ものつくり」の根幹を支える技能とは、果たして大学で研究するものなのか?私は違うと思います。日本に高い技能を誇る職人がたくさんいて、技能オリンピックの金メダルをかっさらい、日本の近代産業と伝統産業の両方を支えていた昭和の時代、彼らの多くは大学を卒業していませんでした。

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しかし、彼らが専門知識や教養を持たなかった訳ではなく、それらは徒弟教育の中で、或いは専門学校で習得され、大学は出ていなくても、職人は専門職として尊敬される存在でした。

繰り返しになりますが、職人が習得すべきもの、修行時代に学ぶものは、大学の教室で黒板に向かって方程式を書くことで身に付く学問ではありません。 大学以外の場所で、その人自身を高め、社会を豊かにするための専門知識は、確かに修められたのです。

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これは欧州でも同じことです。ドイツでも英国でも、国を豊かにし、文化的生活をもたらした職人達は、大学をでていませんでした。

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職人が尊敬され、その製品が世界に通用するブランドとなるドイツやスイスの場合はどうでしょうか? ドイツではマイスター制度という徒弟教育があります。もっとも日本の徒弟教育と違い、明確に制度化され、途中の段階で学校教育も受けるシステムです。ドイツは中学の段階で、職業訓練校(ハウプトシューレ)と、実科学校(レアルシューレ)、普通科中学(ギムナジウム)の3種類に分かれます。 マイスターを目指す少年は、職業訓練校や実科学校を選択するのです。 ドイツやスイスの高品質の工業製品は、彼らの手によって作られました。

一方、将来大学などの高等教育を受けることを希望する生徒達はギムナジウムに進みます。

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英国にも同じような教育制度があります。中学段階で、3種類の学校 コンプレヘンシブスクール、グラマースクール、ミドルスクールに分かれます。コンプレヘンシブスクールは技能者養成のための学校であり、グラマースクールは大学進学を前提とした学校です。

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しかし、近年事情が変わってきました。どの国でも大学進学率が高くなり、普通科を目指す少年が増えたのです。 また、子供達の将来のコースを11歳やそこらで決めていいのか?という問題が出てきました。小学校の児童の段階では、本人の適性も分かりませんし、親が勝手に決めることでもありません。

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だから、ドイツでも英国でも、途中で進路変更ができるようになりました。中学・高校の段階で、職業訓練校や実科学校に進学した人も、大学に進学できるようになり、中等教育のコースは多様化してきました。大学の数も増えました。 

若者は3Kの仕事を嫌がり、ホワイトカラーばかりになりました。マイスターを志す有為の人材は減りだしたのです。

そして、その頃から・・石油ショックを経た1980年代頃から・・欧州の産業は衰え、競争力を失い始めたのです。

工業製品は日本を始めとした東アジアの製品に押されています。欧州がEUに統合された後も、その傾向は続いています。

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近年、ドイツの経済力が急速に回復し、EU経済の牽引役になっていますが、よく見ると、トルコや東欧からの外国人労働者が産業を支えていることに気づきます。昔のドイツに戻った訳ではありません。

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欧州だけではありません。中国も韓国も大学進学率はどんどん高くなり、職人を希望する人は減っています。韓国では、昔から肉体労働を蔑む両班的思想があり、ブルーカラーの職に就きたがりません。 中国では急速に暮らしが豊かになり、「せめて子供には高等教育を受けさせてやりたい」という親の願いがかなうようになったので、大学進学者は増える一方です。 そして中韓ともに、立身出世は人生の目標として認められますし、日本以上の学歴社会ですから、大学に行くことは当然のことになりつつあります。しかし、国全体の経済を考えると、これは不都合です。

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このことだけを理由とするのは牽強付会ですが、最近韓国の経済は低迷し、中国の経済成長にも急ブレーキがかかっています。 本当のものつくり“を志向する有意の人材が減り、そして適切な教育制度を持たない国は、経済が衰退するのかも知れません。その反省と焦りが「ものつくり大学」でしょうが・・・、これがうまくいくとは思えないのです。 

以下、次号


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