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【 ハゲ山の一夜 その1 】

【 ハゲ山の一夜 その1 】

 

昔の勤務先で一緒に仕事をしたS部長とK部長と私の3人で春の春日山に登りました。上杉謙信の居城として有名な上越市のお城です。

正確にはS部長とK部長は既に仕事を引退して悠々自適の身分であり、元部長なのですが・・。現役で仕事をしているのは私だけです。

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春日山城の頂上からは、あいにく佐渡ヶ島は見えませんが、米山や長野県との県境の山脈、その手前の平野が見渡せます。 山の斜面には、少し芽を出し始めた若葉が見えます。そこでS部長がつぶやきました。

「 日本は本当に森林が豊かだね。緑に溢れている 」

彼は出張で出かけた中国の風景と比較しているのです。

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「 ああ、全くそうですね 」とオヒョウ。

「 日本は江戸時代から森を公有地として、入会を制限して、森林の伐採をコントロールしてきからね。乱開発を免れたおかげかも 」とK部長。

「 森全体をご神体にする宗教のおかげで、人間が立ち入らなかったり、鎮守の森として神社の境内の森を大切にした事も大きいね 」とS部長も続けます。

遠くでウグイスの声も聞こえます。

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全てのことを外国と比較するのが、適切かどうかは分かりませんが、森林をどのように保護するかは、国ごとに比較できる項目です。その国ごとに事情があり、森林の扱いも国によって違いがあります。 日本にもいろいろ問題がありますが森林保護という点では優れています。

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オヒョウが鉄の勉強を始めた頃、製鉄産業の発祥の地はヒッタイト王国(帝国)と言われました。 近年は別の国でもっと早く製鉄が行われていたとの説がありますが・・。

そのヒッタイトはトルコのアナトリア半島の中にあり、今は砂漠の中で、製鉄産業どころか近代的な都市もありません。

なぜ製鉄業が栄えたヒッタイトは滅んだのか?

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それは製鉄業の燃料として、周辺の森を伐採し、周辺がハゲ山になったからです。

古代インカではセメント(モルタル)産業のために森林が伐採され、ハゲ山になってしまった例があります。

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茨城県鹿嶋で行われたたたら製鉄は、高松の浜の松を燃料に用いましたが、松林が再生可能な範囲内でしか、松を伐採しませんでした。そのために生産できる鉄の量も制限され、その刀を帯びて出征する防人の人数も制約されたというのが、オヒョウの説ですが・・・、誰も支持してくれません。

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しかし、森林の再生や持続可能性に無頓着だった外国の製鉄では、森林が消滅してハゲ山になった時点で産業も経済も都市も破綻しています。

古代だけではありません。 英国も産業革命の初期、石炭ではなく薪炭を燃料とした為、グレートブリテン島の森林は消滅しました。ロビンフッドの森もアイバンホーの森も、マクベスで動いたバーナムの森も既にありません。スコットランドもイングランドもウェールズもヒース(現地ではヘザーと呼びます)の灌木の林か、湖水地方のピーターラビットが住む森ぐらいしか残っていません。

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ドイツも一度、天然林を完全に失い、その反省から南部に人工林を設けました。チューリンゲン森と黒林が有名ですが、どちらも人工林です。 木を伐採したあとに律儀に植林するあたり実にドイツ人的です。

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フランスは、パリなどの大都市を囲む形で複数の大きな森を残しています。

実に国それぞれです。

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中国と韓国は残念ながら森の保全ができていません。 単なる気候風土の問題だけでなく、民族性の問題なのか?

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先日の韓国出張では、日本海の上空に雲が出ていて、下の景色が断片的にしか見えませんでした。山陰の鳥取砂丘が見えた後、雲の上を暫く飛び、次に陸地が見えた時、それが日本なのか、韓国なのか、一瞬迷いました。 しかし、よく見ると、山肌に植わっている樹木が貧弱で、地面が隙間から見えます。日本なら森の上空を飛んだ場合、地面は見えません。 ああ、これは韓国の上空に差し掛かったな・・と分かります。

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以前、私の母が言っていました。「日本の風景と韓国の風景で一番違うのは、山に樹木があるかないかで、日本の山は鬱蒼とした緑で覆われているのに対して、朝鮮半島の山はハゲ山なのです」。

ハゲ山というのは大袈裟だとしても、確かに緑は薄いのです。

地上に降りると、釜山のあたりの山はそれなりに緑ですが、浦項の町あたりまでいくと、山の緑は少なくなります。 日本で言えば、例えば瑞牆山のようなアルペン的な山容が続きます。 

「うーむ、これはなぜなのかな? 子孫のために植林しようという発想が無いのかな?」 どうもさっぱりわかりません。

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中国の場合、砂漠化が進行し、山々だけでなく平地でも砂漠化が進行しています。

日本の鳩山元首相は、中国の環境対策の為に、ポンと1兆円のお金を中国に渡しましたが、それで砂漠化防止や植林が進んだ・・という話は聞きません。

そもそも1兆円という金額が不可解です。

中国全土の緑化には1兆円でも足りません。北京を囲む形で砂漠化が進行する河北省だけに限れば、1兆円で大きな成果が上がります。 それとて中国の賃金と物価相場で考えた場合で、日本人のコストで考えたら、河北省だけでも足らないはずです。

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鳩山氏は自ら額に汗して働いた事はないでしょうから、日本人の1兆円の税金の重みは分からないでしょう。多分ブリジストンの年間売上高の何分の一・・という程度の理解で中国にプレゼントしたのですが、それが環境対策に活かされているかは甚だ疑問です。 多分、尖閣諸島近海をうろつく監視船の建造費と高級官僚の余録に化けたのではないでしょうか? とにかく、北東アジアの国で豊かな森林を持つのは日本だけみたいです。

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私は春日山を下りながら、妙なことを考えました。

そもそも、木を植えるとはどういうことか? 森林に関わる人間の営みとはどういうことか?

 

それについては次号で考えます。


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