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【 EMIの身売り 】 [イギリス]

【 EMIの身売り 】

イギリスの大手レコード会社のEMIの経営が不振で再び身売りの話がでているそうです。

再び・・というのは、EMIはしばしば経営危機になって、いろいろな金融機関やファンドの傘下に入っていたと聞いているからです。

私がロンドンにいた頃にすでにそうだったのですが、当時はまだCDの全盛期でした。今はCDの売れない時代です。レコード会社にとっては氷河期とも言えます。MP3で配信するビジネスも盛んですが、CD程の儲けにはならないようです。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20110621-OYT1T00983.htm

そう言えば・・と、また昔の事を思い出します。

昔、私が学校にいた頃、CTスキャンの事をEMIスキャンと言っていました。

CTとは、Computer Tomography つまりコンピューター断層撮影の事ですが、ではEMIの意味は何か?

その説明をしていただいたのは、電子計算機言語学の浦昭二教授です。

先生はFORTRANという言語が、行列計算に非常に適していることを説明され、その例としてCTの原理を紹介されました。実はFORTRANが向いているというより、コンピューターが行列計算に特に向いているという事です。

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肺のレントゲン写真に詳しい方ならご存知でしょうが、肺の厚み方向の一部だけを高い解像度で撮影する断層写真という手法は昔からありました。しかしそれはカメラとフィルムを逆方向に水平移動させるもので2次元の画像です。カメラとフィルムを回転させながら、コンピューターを用いて膨大な行列計算をすれば、3次元の画像が得られる事は明らかです。

問題は計算機の処理能力と低い線量で鮮明な画像を得るX線撮影技術です。

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1960年代、世界中を席巻したビートルズを擁したレコード会社EMIは莫大な利益をあげていました。EMIの経営幹部は考えました。

「この莫大な利益を、人々の福祉のために使おう・・・」

普通の人だったら、恵まれない人とか、福祉団体に寄付したりするところですが、彼らが考えたのは夢の新技術です。

ちょうどコンピューターの性能が上がってきました。X線撮影技術も向上しました。そこで彼らはコンピューター断層撮影装置の開発に投資しました。

そして出来上がった装置をEMIスキャンと呼びました。

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やがて、特許も切れ、民間のレコード会社の名前を冠するのはいかがなものか?という事から、EMIスキャンはCTスキャンと名前を変えました。

さらに時代は進み、X線被曝をなくすため、あるいは軟組織を鮮明に写しだすため、核磁気共鳴型のCTMRI)が登場しました。

現代は、微小なガン病変を検出できる陽電子CT(ポジトロンCT=PET)の時代です。

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この技術革新は、すべての人にとって福音でした。

CTのおかげで、外科的侵襲なしに、体内の状況が手にとるようにわかります。

怪我をしても、病気になっても、CTを撮れば多くの事が分かり、原因が突き止められます。このお陰で命が助かった人も多いはずです。

そして、ヤブ医者にとってもCTは頼もしい道具です。

従来の2次元の画層から得られる情報は乏しく、経験を積んだベテラン医師でなければ見つけられない病変も、CTなら新米医師も見つけられます。これで誤診をまぬがれた例も多いはずです。

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そして現代はPETです。

これは患者の減少と経営悪化に悩む病院には頼もしい武器です。これは人間ドッグに使われ、早期ガンの発見に威力を発揮しますから、健康人ばかりで病人のいない地域でも病院経営を可能にします。

つまり、すべての人にCTは役立ったのです。

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今は老齢の域に達したビートルズのメンバーがその事を知っているかはわかりませんが、彼らもきっとCTのお世話になったはずです。

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ああ、しかし、それなのに、CTの産みの親であるEMIはビートルズの後、ヒットに恵まれず、その上CDが売れないCD不況の時代になって、何度も経営危機に陥りました。そしてまた今回の身売りです。

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イギリスは、国土も人口も日本よりかなり小さい国です。大学の数もはるかに少ないのです。しかしノーベル賞受賞者は多く、そして画期的な発明・発見が多くなされています。 CTスキャナーもそのひとつです。

日本でも同種の技術が開発される土壌はたしかにあるのですが、なぜかなかなかものになりません。

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やはり、スーパーコンピューターが何かも知らないくせに、パフォーマンスだけで研究開発予算を斬って得意になっている女性が大臣をしているような国ではだめなのでしょうね。

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日本で巨額の利益をあげた企業や個人は、一体何にお金を使うのでしょうか?

粉飾決算と不適切な株式の分割で、濡れ手で粟の200億円を手にしたライブドアのホリエモンは、六本木ヒルズで高級ワインを飲む日々から、塀の中の日々に移りました。

仮に彼の金儲けが非合法なものだったとしても、彼がその200億円を世のため人のために使っていたのなら、オヒョウは同情します。しかし彼がしたのはプライベートジェット機に女性タレントを乗せて海外リゾートへ行く事です。

彼は阿呆なのか、それとも本当は精神が貧しい卑しい成金なのか・・・。

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一方、経営に失敗したEMIの経営者達は、ある意味で敗北者であり、責められる立場にあるのでしょう。でも、会社は潰しても、世にCTスキャンを送り出した功績は消えるものではありません。もって瞑すべしですね。

だから、私は今もEMIのファンであり、CDも持っています。

ただし東芝EMIだけど。


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