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【 お前の家は私の城 】 [イギリス]

【 お前の家は私の城 】 

昭和30年代のロシア(当時ソ連)の風刺漫画に面白いものがあります。雑誌「クロコヂール」に掲載されたものです。

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題名は「お前の家は私の城」というもので、家の1階の窓から英国人が顔を出し、2階の窓からは武器を持った米国人がニヤニヤと笑った顔をのぞかせているものです。

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これは勿論、英国の諺「私の家は私の城」をもじったもので、元の意味はどんな男だって家に帰れば一家の主で、責任と権威がある・・とか、家庭の中までは、他人が干渉すべきでないというものです。 

諺の原文はAn Englishman's house is his castle.です。

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しかし、イギリスの場合、自国に米軍基地を抱え、米軍に母屋を乗っ取られているではないか? という、ソ連から西側社会への風刺です。ちなみに、英国にある米軍基地はケンブリッジの近くにありますが、それ以外にインド洋のディエゴ・ガルシア島を米国に貸与しており、そこに巨大な米軍基地があります。

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もっとも、当時ソ連も国外に軍事基地を持っていましたから、他国の事は言えません。キューバに建設しようとしたミサイル基地は断念したものの、ワルシャワ条約機構の各国にすぐソ連軍を展開できる状況でしたし、アフリカ諸国にも軍事拠点を置いていました。それに1979年以降はベトナムカムラン湾にも海軍基地を置いていましたから、同じ事です。

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それにしても、米軍基地が世界に展開しているのは不自然ではないか?という素朴な意見はありえます。かつて日米安保に反対した世代の末裔が残っている朝日新聞などは、世界中に駐留する米軍に真正面から反対するのではなく、イタリア人の口を通して批判しています。http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201007060711.html 

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米軍が駐留する役割と意味合いは、時代によって異なり、また地域・国家によって異なります。だから統一的な議論はできないのですが、米軍基地反対派は、全体をまとめて駐留米軍反対の結論を出したいようです。

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実際、韓国の米軍と、沖縄の米軍と、英国の米軍では意味合いが違います。 それぞれの国の中での駐留米軍の位置づけが異なりますし、アメリカ側からみた位置づけも異なります。

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独断と偏見を承知で言えば、NATO諸国での駐留と、日米安保に基づく駐留、その他・・・の3種類で分けて考える事が可能です。

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NATO諸国の場合は、同盟国として友人に協力するための駐留ですし、日米安保の場合、戦後の進駐軍(占領軍)の意味合いと、同盟軍の意味合いが半分ずつです。

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NATO諸国の場合でも、実は第二次大戦の連合国だった国(英国等)と枢軸国だった国(ドイツ)では違います。英国の場合、戦中から同盟国だった訳です。ドイツでは冷戦時代は同盟国ですが、その前は交戦国で戦勝国の占領軍として乗り込んできたのですから位置づけは違います。

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その他の場合は、実に様々です。イラク、アフガン等は、現在交戦中の地域の軍事拠点であり、占領軍として振舞っています。一方、既に撤退しましたがフィリッピンの米軍は旧植民地に君臨した軍隊でしたし、サウジアラビアでは米軍はあくまで客として滞在するという立場でした。

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日本の米軍駐留に反対する人達は、同盟国として駐留しているはずの米軍がしばしば占領軍として振る舞う事を問題視します。特にその違いが明確なのが、日本本土の場合と沖縄の場合です。日本本土の米軍基地は、早い段階でNATO型(ドイツ型)に移行しましたが、沖縄の場合、米軍は今でも占領軍なのです。

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マスコミは、沖縄の基地負担が過大である事を議論する際、しばしば基地の数や、島の総面積に占める基地の面積比率を取り上げ、本土との差を指摘しますが、一番問題なのは人々の意識です。

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沖縄に駐留する米軍人とその家族に、占領者としてのおごりがあるなら正すべきです。 英国に駐留する米軍将兵には決して見られない、地元の人を見下す姿勢があるなら、正すべきです。

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沖縄には、米軍専用ビーチがあります。広大な米軍専用のゴルフ場があります。 いつだったかJALの沖縄キャンペーンで、アメリカ人の女性タレントが、少女時代に沖縄の美しい米軍専用ビーチで泳いだ思い出を楽しそうに語っていましたが、これは多くの日本人には不愉快な話です。そんな事だからJALは潰れるのだ・・。

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普天間基地移設問題に関連して、米国では、基地を置かせてもらっている沖縄に感謝しようという運動が始まりました。しかし、米軍専用ビーチがあり、米軍専用のゴルフ場があり、「日本人オフリミット」の場所が多くある状況下では、説得力がありません。日本政府も在日米軍も、何か大切なものを忘れています。

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ところで、国内に外国の軍隊の基地がある事が不自然であるのは、日本だけではありません。サウジアラビアでは、国内に米軍基地がある事を自国民に知らせていません。 英国でもケンブリッジの米軍基地は殆ど知らされておらず、英国人でもその存在を知らない人が殆どです。

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その英国も実は国外に軍事基地を多数持っていて、そのどこもが「英軍出て行け!」のプラカードに囲まれています。 一番、基地反対運動が激しいのはキプロス島にある英軍基地で、それにジブラルタルの英軍基地が続きます。

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第二次大戦あるいは東西冷戦の名残とも言うべき、海外駐留の軍事基地ですが、これからは縮小撤退があいつぐでしょう。手始めは、キューバにある米軍の悪名高いグアンタナモ基地の返還でしょう。

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しかし、沖縄の基地が返還される目処は立ちません。なぜなら東アジアでは、まだ残念ながら冷戦が終わっていないからです。その点を議論せずに、沖縄の基地問題は解決しません。


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