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【 人間・山本五十六 その3 】 [新潟県]

【 人間・山本五十六 その3 】 

山本五十六を評価する声に、彼が偉大なる指導者かつ教育者であり、部下・後輩から慕われた人だった・・というものがあります。実際、彼に接した部下・後輩をして、尊敬せざる能わざるの人物だったようです。 そして彼は優秀な部下を重用し、思う存分の活躍の機会を与えています。 もっとも、マリアナ沖の空戦で七面鳥撃ちみたいな一方的な敗北を喫したのも、部下に「生きて帰ってくるな」と言って出撃させる特攻作戦を立案したのも、山本五十六が育てた部下達ですが・・・・。

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実は上司が後輩思い/部下思いであるという事は、えこ贔屓と紙一重です。

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部下の査定を経験した人なら分かりますが、人事評価の査定ポイントはゼロサムです。誰かに加点すれば、その分、他の誰かを減点しなくてはなりません。

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優秀な部下を育てた人、部下思いという評判の人を調べてみると、本当に親身になって指導したという事もありますが、人事評価にメリハリを付けた人だという事が分かります。

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普通の上司なら、2人の部下に対して、60点と40点と査定するところ、特にメリハリを付けて、80点、20点の査定を付けたとします。80点を貰った人は感激し、より職務に励みます。頑張る事と、特別に高い評価点を貰った事で、その部下は、さらに高い地位で大きな仕事をして昇進します。 その人は、当然上司に指導していただいたおかげだと語り、査定した上司は、良き指導者または名伯楽と言われます。

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問題は20点を付けられた方が、どう思うかですが、低査定を貰った人には発言の機会もありませんから、彼らの声は無視されます。高査定を貰った人だけが目立ち、その上司もよき育成者として、評価されます。 だからそれを狙う人は、査定のコントラストを強くします。 

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しかし実際のところ、メリハリをつける事、評価のコントラストを強くする事が、良い事か否かは難しい問題です。ただ言える事は、より伸びる部下を育てる為に、意図的にメリハリをつけ過ぎるのは、公平ではなく、組織にとっても悪いことだという事です。

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オヒョウが駆け出しのサラリーマンだった頃、名工場長、名部長とうたわれた上司がいました。工場の多くの部下の心をつかみ、若い部下を感激させ、尊敬させる人物でした。 その人の指導を受けた人は多く、幹部に昇進した人も大勢います。その一人は、今某製鉄会社の副社長です。 しかし、殆どの部下から慕われるとは、どういう事なのだろうか・・?やがてからくりが分かりました。

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その部長の乗った飛行機が墜落して不帰の人になったのです。その日、オヒョウは会社にいませんでしたが、後で聞いたところでは、搭乗者名簿にその部長の名前を発見したとたん、職場では「ざまあ見ろ!」と歓声をあげ、拍手した人がいたとのことです。 実にさみしい話ですが、 その人は、その部長から不当ともいえるほど低い査定を受けて冷遇されていたのです。

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言われて考えてみれば・・・・、その会社では副長(参事補)段階では、追い越し人事は非常に稀なのですが、製鋼部では、懲罰的とも言える昇進遅れがありました。 同じ課の中で大学の後輩に追い越される屈辱を味わった人もいたのです(拍手したのは別人ですが)。 ゼロサムの人事評価の中で誰かを抜擢すれば、誰かを低く評価せざるを得ません。

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五十六の人物像を読むと、この部長の事を思い出しました。山本五十六も人事評価にメリハリを付けた人物ではなかったか?今、山本五十六を絶賛する人は、彼に評価してもらった人達です。では低く評価され、冷遇された人はどうなったのか? 語る機会もないまま南溟に沈んだのかも知れません。

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彼は、郷土の後輩に対して面倒見のいい人物としても知られています。郷土の後輩が彼を頼ればこころよく面倒を見、一方で長岡の後輩でありながら自分に頼ろうとしない人物についても評価しています。「彼は、コネに頼ろうとしない。見所のある男だ」と褒めています。

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「人間・山本五十六」には海軍提督の来阪に合わせて、大阪で長岡中学の同窓会を緊急招集した時の話があります。 住友財閥にいる彼の後輩が、一定時間住友本社の全電話回線をストップさせて、関西地区のOB呼び出しの為に電話をかけさせたというエピソードがあります。(当時、住友財閥は合資会社で、グループ全体で一つの会社でした)それに感心した山本五十六は、住友の重役に、無名の管理職だったその後輩 「秋山君をぜひ宜しく」 と頼んでいます。その結果、ほどなく秋山氏は、住友の重役に抜擢されています。

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あれ?まてよ? 今も住友グループに秋山さんという有名な幹部がいるな。彼のご子息かな・・・?それにしても「人間・山本五十六」ではこのエピソードを美談として取り上げていますが、果たしてそうか? 住友本社にとってはたまったものじゃありません。

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山本五十六の長岡贔屓、後輩贔屓は、取りも直さず、他の地域の出身者にとっては差別に過ぎないのですが、その視点が、山本五十六の人物像を語る時に欠落しています。 そしてそれが海軍の為によかったかは疑問です。

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明治維新の際、賊軍の汚名を受けた長岡の人々が名誉を獲得するため、団結して奮闘したというのは、美談でしょう。 昭和に到るまで、薩摩出身者の閥が残った海軍で、伊予松山出身の秋山真之や、長岡出身の山本五十六が奮闘したのも、事実でしょう。また明治人には自分の郷土へのこだわりと、ふるさとを共にする人々の仲間意識が特に強かったのも事実でしょう。

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しかし、国全体を考えた場合、結果としてそれらが組織の弱体化をもたらしたのだと、オヒョウは思います。

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それはともかく、部下をひきたてようにも、えこ贔屓しようにも、自分にその権限がないとできません。つまり昇進しないとできません。次号では、そのあたりについて管見を述べます。


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