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【 Pledge and Review 】 [政治]

【 Pledge and Review

何時の頃からか、選挙公約の事をマニフェストと呼ぶようになりました。特に民主党が躍進しだしてから、彼らの選挙のやりかたをマスコミはマニフェスト選挙と呼んで評価しています。従来の情に訴えたり、無内容な支持依頼の言葉を連呼するだけの(自民党時代の)選挙手法とは一線を画すものとして、マスコミはこれを支持しています。

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しかし、オヒョウには理解できないのです。マニフェストなるものが、それまでの選挙公約と何が違うのか・・がです。これは以前のブログにも書きましたが、manifestとは本来、宣言あるいは明言という意味です。更に言えば、昭和の時代の人たちにとってはマニフェストとは共産党宣言の事です。 それがどうして日本語では選挙公約という意味になったのか・・・。

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ある目標を明確にし、その達成を宣言して仕事に取り組むというのは全てにおいて甚だ合理的です。民間企業でも、上司と部下の面接では、業務目標を明確にして、一定期間後の達成度や進捗状況を評価・確認するというのは一般的です。また経営者が株主に対して経営目標とその達成度を報告する義務があるのも当然の事です。しかし、目標を達成した場合と、達成しなかった場合の信賞必罰についてはどうしても甘さがでてしまいます。

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その点を厳しく実行したのは、日産の再建にあたったカルロス・ゴーンでその経営手法を“コミットメント経営と言って、マスコミはもてはやしました。 

(どうでもいいけれど、どうしてマスコミはカタカナ英語が好きなのか?)

彼は、目標を達成した人にはポストとボーナスを与え、目標を達成できなかった人は解雇・・という手法で経営し、自らも巨額のボーナスを貰っています。・・・ 

もっとも、オヒョウに言わせれば、当時の日産には改善すべき点が多くあり、彼でなくてもあたりまえの事をすれば、業績は相当程度回復したはずですが・・・。

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彼の用いた言葉commitmentは約束の意味であり、manifestより強い意味があります。manifestは不特定多数を相手にした宣言であり、commitmentは約束した対象者が明確になっているからです。対象が明確であれば、ご褒美と罰も明確になります。

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では契約社会の本家であり、ビジネスとは全て契約の履行である・・というスタイルの米国ではどうでしょうか?米国でも、目標を宣言してその達成度を報告・評価するスタイルは当たり前です。政治の世界でも同様です。でも彼らはmanifestとは言わず”Pledge and Review”という言い方をします。政治用語としては、manifestよりもpledgeの方が適していると、オヒョウも思います。

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“Pledge and Review”のスタイルの典型は、共和党の下院議委員だったギングリッジだろうと思います。 彼はクリントン政権下での選挙で勝利し、下院の多数派を共和党が取る事に成功しています。その結果、クリントン大統領は一種のレイムダック状態になりました。

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下院議長に就任したギングリッジは、TVカメラの前で、選挙公約にあった多くの法案について、ひとつずつ「これは就任後100日以内に、成立させます」と宣言し、幾つかを実現させています。

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注目すべきは、彼がその宣言を選挙前ではなく、選挙後にした事です。日本の政治家とは違います。その共和党のギングリッジらが提案した政策は”Contract of America”という名前が付いています。 まさに国民との契約という発想です。

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日本の政治家は、選挙前にはバラ色のマニフェストを語りますが、選挙後は、マニフェストへの言及が少なくなります。票欲しさと、ライバルとの違いを強調するために、実現できそうもない無責任な内容をマニフェストに盛り込むからでしょう。

先日も鳩山首相は、憮然として「選挙公約は国民との約束だから真剣に取り組むのは当たり前」と発言しましたが、逆に言えば、その当たり前の事を、確認しなければならないほど、選挙公約がないがしろにされているという事です。

・高速道路の無料化

・ガソリン暫定税率の廃止

・普天間基地の県外移設

・子ども手当の全額支給

・消費税upは、4年間は検討しない

・赤字国債の発行停止

まさに国民にとって、バラ色の公約ですが、それらが実行できない事は選挙前の民主党にも分かっていたはずです。

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そして、民主党は、選挙公約の実行期限を明言しませんでした。計画を尋ねられると、主な公約について任期中(あるいは4年以内)に実行すればいいというぬるい回答です。・・・・・・カルロス・ゴーンのcommitment経営、米国の政治やビジネスの基本的なスタイルである、Pledge and Review、それに共和党のContract of America等に比べると、日本の民主党のManifestという名前は、誰が名付けたのか知りませんが、いかにも軽く責任感を感じさせません。

「選挙対策で無責任な事を言ったけれど、できなければそれでもいいや」という臭いがプンプンします。 やはり、マニフェストなどと言わず正統な日本語である選挙公約で良かったのではないか? とオヒョウは思います。 どうせ実現できないのだし。


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コメント 4

Dr.Y.

私が聞いた説では、マニフェストは英語が起源なのではなく、イタリア語のmanifestoから来ている由。なぜ日本語で“選挙公約”と言わないか、というと、やはりカタカナ表現だと格好良いと思っている人が年輩の政治家にも多いからでしょうか? 今日は久しぶりの雪です。
by Dr.Y. (2010-03-09 17:01) 

笑うオヒョウ

Dr.Y様 コメントありがとうございます。

なるほど、イタリア語のmanifestoがオリジナルなのですね。勉強になりました。 当地も今日は雪がチラホラ舞っています。九州の方や太平洋側の方のブログを見ると、明るい陽光と花の写真が多く掲示してあり、ちょっとコンプレックスを感じたりします。 それにしてもブログを書く方は皆さん、上等なカメラをお持ちですね。私などは、オモチャみたいなカメラしか持っていないので、
どうも写真をブログに載せるのに抵抗を感じます。
またのコメントをお願いします。

by 笑うオヒョウ (2010-03-09 18:30) 

Dr.Y.

イタリア語起源とゆうか、私も昨日書き込んだ時に英和辞典でチェックしなかったのですが、手元にある一般的な英和中辞典には、manifestは形容詞で明白な、動詞で明らかにする、という意味が主で、名詞は船舶の積荷目録しかありません。動詞manifestの名詞形はmanifestationですね。

で、英語でも宣言(共産党宣言など)のことは、manifestoというらしい。
by Dr.Y. (2010-03-10 12:16) 

笑うオヒョウ

Dr.Y様 コメントありがとうございます。

英語でmanifestの綴りで調べると、やはり明白なという形容詞が中心で
後は動詞という事らしいですね。オヒョウの説明は、ちょっと不正確でした。お詫びして訂正します。形容詞の場合の用例として、Manifest Destinyという米国の言葉がでてきて、これはアメリカ大陸は白人が支配して当然だ・・という思想を示すものだそうですから、政治用語としてmanifestを使うのは、いかがなものでしょうか?
私がマニフェストを宣言・・・としたのは、コンピューター用語で宣言文をmanifestと呼ぶからです。 JAVA・・といっても私は実際にプログラムできませんが、manifest型という型式が出てきます。選挙公約とはますます遠い世界ですが。 またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-10 12:35) 

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