SSブログ

【 CO2削減マイナス25%は可能か? 】 [政治]

【 CO2削減マイナス25%は可能か? 】 

産業界からは、鳩山首相が唱えるCO2マイナス25%の目標に対して反発があります。 一方で、地球温暖化防止では、そもそも新しい技術にチャレンジする必要があるのだから目標は高くていいのだ・・という意見もあります。

或いは、できるできないの話ではなく、既に、首相が公言したのだから、やる方法を考えなくてはならないのだ・・・という声もあります。どれも正論ですが、時々、怪しげな意見があります。楽観論の中の代表的なものを2つあげます。

 1.かつて日本版マスキー法が施行され、自動車の排ガスが規制された時、自動車メーカー各社は、到底できない・・・と言いながら、実際に技術開発に取り組むと、日本の底力を発揮して高い目標をクリアーした。だから今回も何とかなる・・・ 大前研一氏らの意見です。 

2.これまで、日本の産業界は省エネに真剣に取り組んできて、高い成果を挙げている。だから、その延長上で、今は不可能と思われるCO2削減目標もきっと達成できる。

・・・・・・・

どちらも、政府ではなく民間企業の技術開発力を高く評価する発想ですが、いかんせん、大事なところが抜け落ちています。 民間の技術者・開発者は、自社の利益になる事でなければ開発しません。もっと下世話な言い方をすれば、儲からなければやりません。それは精神が卑しいからではなく、企業とは利益を追求するのが本分だからです。

・・・・・・・・・

日本企業が排ガス規制クリアーに取り組んだのは、そうしなければ車が売れないからです。 逆に他社より早く目標を達成すれば、シェアを大幅に伸ばすきっかけになるから、頑張ったのです。環境をきれいにしようという高邁な精神もあったかも知れませんが、それだけで、何百億円もの開発費はでません。

・・・・・・・・・・

鉄鋼業などの日本企業が、省エネに真剣に取り組んだのはエネルギー価格が高騰したからです。 省エネする事で会社が儲かったからです。だから、設備投資や開発投資をしても採算に見合う範囲でしか省エネ技術は進みません。 採算を度外視した究極の省エネもあるでしょうが、コスト的に見合わなければ実現しません。

・・・・・・・・・・・・

実際、製鉄会社は、石炭価格と石油価格を睨みながら操業します。石炭価格が上がれば、高炉に重油を吹き込み、石油価格が上がれば、高炉に微粉炭を吹き込みます。 鉄鋼製品価格が下がれば、重油も微粉炭も吹き込まず、高炉の出銑比を落とします。 彼らは決して、地球の化石燃料の枯渇を心配している訳でも、CO2の増加を心配して操業条件を変更する訳でもありません。 単純に限られた設備で限られた期間に、いかに利益を極大化するかを考えているだけです。

・・・・・・・・・・・

では今回の、CO2削減プロジェクトはどうでしょうか?企業は開発に取り組んでも報われません。開発コストの相当分は自分持ちでしょう。 開発に成功しても、製品の生産コストは増加するでしょうが、それを製品価格に転嫁したら、競争力はなくなります。

・・・・・・・・・・

お客は、排ガスの少ない自動車は買いますが、鉄鋼製品の場合、生産時にCO2をあまり出さなかった鉄鋼だよ・・・といっても、その分値段が上がれば買ってはくれません。 鉄は鉄で同じだからです。 だから、製造業にCO2削減努力を求めるならインセンティブが必要です。CO2削減義務を負わず、低コストで製造できる外国企業と競争できるだけのコンペンセーションが必要です。 そしてそれらは税金から賄われる事になります。

・・・・・・・

繰り返しになりますが、かつての省エネ活動はコスト削減でもありました。だから企業の取り組みとして成立したのです。これからのCO2削減は、ほぼ間違いなくコストアップです。やればやるほど、コストは膨らみます。だから、オヒョウは削減目標達成を危惧するのです。

・・・・・・・・

日本の産業界はこれまで、幾つものハードルを乗り越えてきましたが、それは、官民の阿吽の呼吸があったからです。 利益の追求者である民間企業と、理想を掲げる行政は、本来別の方角を向いていますが、国益にかなう場合は、協議して方針を決めていました。第一次、二次の石油ショック、円高不況、公害対策・・・どれもそうです。

・・・・・・・・

しかし、今回は微妙に違います。官民で温度差があります。政府のトップがまず目標値を掲げるのは当然ですが、今回は産業界がかなり白けています。従来の自民党政治とは異なり、産業界との馴れ合いを排除し、かつ官僚主導を廃して政治主導にするのが鳩山流の様ですが、これから産業界との根回しが必要になると思います。 

素材産業だけではありません。政府は電力業界とも摺り合わせが必要ですが、少し難しそうです。なぜなら、発電事業でCO2を削減するには、原子力発電設備をフル稼働させる事が必須になりますが、閣内には原子力発電反対の閣僚もいるからです。http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091009.html

高い目標を掲げる事はいいとして、それに人々が付いていくかどうかが分かりません。 結局笛を吹いても人々が踊らなければ、排出権の購入でお茶を濁す事になりますが、それこそは最悪の事態と言うべきです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。