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【 幽霊と妖精 GHOSTとFAIRY、SPRITE、Nymph、ELF その1 】 [イギリス]

【 幽霊と妖精 GHOSTFAIRYSPRITENymphELF その1 】

先週の日曜日の午後、新宿で開かれた小さな朗読会を聞きに行ってきました。

「あやなす響き」という、美しい名前の会は、年1回程度の頻度で開かれているそうです。 これまで地方在住の私にはこの朗読会に参加することは無理だったのですが、東京転勤により可能になりました。

そもそも、この会に顔を出そうと思ったきっかけは、Y教授です。

私が自分のブログ(つまり笑うオヒョウ)に名前を出した中尾幸世さんについて、彼女は芸能人か一般人か?という話になったのです。 私の理解は、彼女の現在の職業は「朗読家」である・・というもので、芸能人と一般人の中間的存在と考えていました。

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その私の理解は正しいか? そこで彼女が朗読をする「あやなす響き」を聞きに行こうと決めた訳です。

昭和の時代、寡作のTVドラマ作家である佐々木昭一郎の作品に登場した中尾幸世はあまり有名な女優ではないかも知れません。 しかし一部の「昭和をひきずる人達」には、忘れられない人です。

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今回の朗読会は、中尾幸世さんの朗読と、守安功・雅子夫妻のアイルランド音楽を主体とした演奏を聞く会です。

守安功・・同性同名の、携帯ゲームの会社の経営者がいますが、全く別人です。

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そして、この日の彼女の朗読は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と夏目漱石の小品だったのです。 これはいきなり直球勝負ではないか・・。

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漱石と小泉八雲の関係は微妙です。 二人は若干の時間差をおいて旧制五高の英語の教授をしています。 そして東京帝大では漱石が八雲の後任として英語の講師をしています。しかし2人の教育方法は正反対でした。八雲は英語の詩をろうろうと歌い上げ、その芸術性を教えましたが、学問としての英文学や英語学の解説については不熱心でした。 後任として赴任した漱石は、学生達の学力不足に愕然とし、厳しく英文学を指導しました。しかし甘えていた学生達からは評判が悪く、前任の八雲を慕う声が強く、これは漱石を悩ませたとのことです。

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その両者の教育方法を比較し、両者の関係を解説するとすれば、大学の講義を1年続けても足りません。 ではいったいどんな解説がなされるのか?

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やがて定刻になり、中尾幸世さんが現れました。小さなスタジオに少人数が集まった空間で、最初に私と彼女の視線があいました。

彼女はにこやかに微笑んで、真正面から相手を見つめ、視線をそらしません。

その清楚な雰囲気は昭和の時代のままで、「四季・ユートピア」や「川の流れはバイオリンの音」の頃と変化がありません。 これなら今でも女学生の役を演じることができそうです(その眼鏡が老眼鏡でなければ)。

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一方、観客の方は・・と言えば、それなりの年齢で、いずれも「昭和時代の少年少女達」です。 還暦を挟んで、現役の人とリタイアした人が混じっています。年齢層としては、西島三重子のライブに集う人達と似ていますが、ちょっと違います。後者は普通のビジネスマンとそのOBが多いように思えますが、「あやなす響き」に集う人達は、どちらかというと、学者や教員、芸術家というタイプに見えます。

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やがて、中尾幸世さんはゆっくりと、朗読を始めました。夏目漱石の「永日小品」の中から「暖かい夢」を選んでいます。 実に素晴らしい朗読です。 目を閉じて聞けば、頭の中にロンドンの風景が広がります。 ひとつひとつの言葉が心に溶け込んでいくような朗読です。

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朗読は誰がやってもよいというものではありません。

私は、詩の朗読については、その詩を書いた本人が語るのに限ると思います。

草野心平の詩なら草野心平が、サトウハチローの詩ならサトウハチローが語るのが最高です。

小説やエッセイの場合は少し違います。

私はベテランの役者(俳優、女優)が最適だと考えます。

その次はNHKのアナウンサーです。

タレントまがいの民放のアナウンサーには、朗読は向いていません。

最悪なのは、台詞を読むのが本業の声優と呼ばれる人達です。

彼ら彼女らは、映像に音声を乗せるのには適していますが、キャラクターが強すぎて朗読には向きません。

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中尾幸世が出演した作品には台詞が多くありません。 だから彼女の朗読とはどんなものだろうか?と少し危惧していたのですが、それは杞憂でした。

彼女の朗読は本物であり、彼女の職業を訊かれたとして「彼女は朗読家です」と答えて何の問題もありません。 もちろん女優としても通用するでしょうが・・。

私はなんとなく安堵感のようなものを感じました。

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朗読に続いて、守安功・雅子夫妻による木管楽器とハープ、打楽器の演奏が始まります。 しかし悲しいことに、音痴で音楽についての教養も全くない私には、本当の価値が分かりません。スコットランド民謡とアイルランド民謡の違いを尋ねられても、的確に答えることができません。

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ただ、昔私がヒースロー空港の免税店で買ったCDアルバム「Celtic tides」には、アイルランド音楽が何点か収録されており、スコットランドともイングランドとも違う旋律を聞かせてくれます。 それを聞けば、アイルランドとブリテンは明らかに違う国だ・・と私にも理解できます。 

守安雅子さんのハープの音色は、昔どこかで聞いたアイルランドの旋律を心の中によみがえらせ、不思議な安心感と心地よさをもたらしてくれます。

この朗読会は目を閉じて聞くほうがいいかも知れない・・。

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さらに、アイルランド音楽とアイルランド文化に造詣の深い守安功氏の解説が始まります。ゴースト(Ghost)や妖精についての説明です。

脱線しますが、英国は世界で一番幽霊が多い国だそうです。

一方で、アイルランドは世界で一番妖精が多い国だそうです。

・・・・どうして計算したのかは不明ですが・・・・

ゴーストとは幽霊・亡霊ですが、守安氏は、それは違うと言うのです。

ゴーストには幽霊も含むけれども、目に見えない神秘的な現象、人知をこえた超自然現象、神の仕業として畏れるべき現象、妖怪等、森羅万象の不可解な事全てを含んでゴースト(もしくはゴーストのしわざ)なのだ・・と英国人は解釈すると言うのです。 ちなみに、これがフランスに行けばファントム(Phantom)となるようです。

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そんなこと言ったって、シェークスピアの「マクベス」には幽霊が登場するし、「ハムレット」のおとっつぁんも幽霊になって登場します。E.ブロンテの「嵐が丘」のヒースクリフの前に現れるのも幽霊です。 漱石の「倫敦塔」にも幽霊が登場するではないか・・と私は考えます。 やっぱりゴーストは幽霊ではないのか?

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しかし、ゴーストとは目に見えないたましいであり、存命中は肉体という殻をかぶっているけれど、亡くなったあとは、目に見えず知覚できないだけだ・・と解釈すれば、幽霊とは、落命後のゴーストの一形態にすぎないと考える事ができます。

ではゴーストとは、たましいのことなのか? 

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実は、それについて考えている人は、以前から多くいます。

以下 次号

IMG_0371.JPG

写真は、中尾幸世さんの許可を得て掲載していますが、転載の可否については諒解を得ておりません。 転載を希望される場合は、笑うオヒョウのコメント欄で、私にお知らせ願います。


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