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【 北海道のブラックアウト その3 】 [雑学]

【 北海道のブラックアウト その3 】

 

北海道の地震でもうひとつ問題だったのは、通信手段が麻痺して、その復旧が遅れたことです。携帯電話の中継設備の電源が失われたこともありますが、急増した通信需要に設備容量が追い付かなかったことも原因です。

なぜそうなったか?と言えば、人々の通信がインタラクティブになったからです。カタカナ英語は苦手なので、日本語に言い換えれば、人々が使う情報伝達手段が双方向になったから ということです。

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かつて、一般の人は受け身の立場にあり、情報とは放送や新聞によってもたらされるものでした。皆が同じ情報を同時に受けとりますが、逆に自らが発信することはありません。つまり一方通行の情報です。 通信手段としては、最小限度のAMラジオとアナログの固定電話があれば十分でした。例え停電しても、乾電池で動くトランジスタラジオは、停電時も使えました。

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乾電池がなくても、鉱石ラジオやゲルマニウムラジオを使えば電源なしで聞こえます。

台風接近も、ラジオで知ります。天気概況の「御前崎 西の風 風力3・・・」といったアナウンサーの声で、自分で天気図を書いたりしました。

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今はそうではありません。圧倒的な情報量が押し寄せます。スマホの画面を押せば、気象衛星の雲の画像や、気圧、降水量、気温のパターンが現れます。通信量は膨大です。

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それだけではありません。人々は情報の発信者になりつつあります。 地震や台風の現場の状況は、普通の人々がスマホで撮影してインターネットにアップします。以前は、インターネット情報を無責任で質の悪い情報だとして嫌っていたマスコミも、視聴者が撮影した携帯やスマホの映像をそのまま使います。

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それに加えて、地震や台風の災害が発生すれば、人々は家族・友人・知人の安否を確認するために、電話します。あるいはLINEで通信します。通信の主役は双方向の通信になります。全員が情報の発信者になれば、飛躍的に通信量は増え、回線はパンクします。今、インターネットの回線の性能を言う時、必ず上りと下りの通信速度が表示されますが、昔の電話回線には上りも下りも無かったのです。時代はインタラクティブです。

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かつて固定電話しか無かった頃、回線がパンクして電話がかからなくなっても、人々は辛抱しました。 今、携帯電話が通じなければ、その不便さは堪えられるものではありません。 我々が我儘で贅沢になったのか、それともそれが当たり前なのか?

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では、どうすればいいのか?

災害発生時などの緊急事態に、通信量が増えてしまうのは、ある意味仕方ないことです。皆さん、家族や知人の消息を知りたい訳ですから。 しかしその場合でも、通信量を節約することは可能です。

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長い文章は不要です。長い会話も不要です。動画もいらないでしょう。ただ生きているということを示すために、笑顔の自撮り画像を一枚送信すれば、全てを物語ります。実際には家が壊れたり、怪我をして泣きたい気持ちであっても、にっこり笑って自分の顔を送りましょう。それだけで、心配してくれている人達は安堵します。

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通信は、長時間かけて送信しても冗長になるだけで本当の意味での情報量が増えない場合があります。むしろ短時間に送る限られた情報が、とりわけ笑顔の顔写真が、全てを物語る場合もあるのです。

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20世紀の後半、パロアルト研究所の所長だったネグロポンテ博士は、「やがて有線の通信手段は無線になり、無線の通信手段は有線になる」というネグロポンテスイッチを予言しました。21世紀の初め、実際にそうなりましたが、2010年代はさらに変化しています。 高速インターネットは既に、幹線部分は光ファイバーになり、抹消部分はWiFiBluetoothの無線を用いる複合型になっています。通信もハイブリッドの時代です。無線は5Gの時代になりつつありますが、光ファイバーの性能もさらに向上するでしょうから、ハイブリッド型通信はこれからも続くでしょう。

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そこで、地震や台風、洪水や停電に強い通信システムは?と訊かれても、門外漢の私には分かりません。 でもとにかく回線の数を増やし、冗長性を持たせる事が重要だと思います。 それも、単に変調方式を工夫して、1本のケーブルの中の回線数を増やすのではなく、物理的にケーブル(ファイバー)の本数を増やすことが重要です。

また長時間の停電時に中継地点の機能を失わないために、長時間の放電に耐えるマグネシウム電池など、多様な非常電源装置を持つことも重要です。

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通信量の急増に対してパンクしないシステム、停電や災害に対して強いシステム、停電し、電話が通じない静寂の中で、そんな事を考えるのもいいかも知れません。


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