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【 日本脳炎と西ナイル熱 】 [医学]

【 日本脳炎と西ナイル熱 】

 

一時期、異常気象があると、何でも地球温暖化と結び付けて語る人がいました。報道ステーションのキャスターだった古館某は、雨が降っても、洪水が出ても、猛暑日が続いても、全て地球温暖化のせいで、それは先進国が野放図に温室効果ガスを排出したためだ・・と指摘していましたが、その因果関係についての説明はありませんでした。

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一方、熱帯性の伝染病が温帯の地域に広がっていく世界的な現象については、地球温暖化と結び付けて結論を急ぐおっちょこちょいはいないようです。近年、蚊が媒介する熱帯地域の伝染病であるジカ熱やデング熱が日本でも話題になりますが、日本の気候が熱帯に近づいたから・・・とは限りません。日本の夏は昔から熱帯と同じくらい暑かったのです。

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日本では戦後間もない時期にマラリアが流行し、デング熱も発生しました。これは南方から罹患した兵隊が復員し、日本国内に病原体をもたらしたからです。国内の衛生環境も良くなく、国民の栄養状態が悪かったことも理由ですが、最大の理由は南方からの復員兵です。その後、日本の復興とともに適切な対策がとられ、マラリアもデング熱も終息しました。

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今日、世界的に熱帯の伝染病が流行りだしたのも、地球上を多くの人が高速で移動する時代だからだ・・と私は推測します。しかし、理由はどうあれ、熱帯の病気がそれまで無かった涼しい地域に広まるのは困った事態です。でも蚊が媒介する伝染病については何等かの対策がありそうです。

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外国で話題になるのは、かつてはアフリカの一地域の風土病だった西ナイル熱が米国や欧州に広まりつつあることです。米国では既に西ナイル熱は大きな問題ですし、最近ではギリシャやイタリアで死者が発生しています。

http://news.livedoor.com/article/detail/15145481/

西ナイル熱は日本脳炎と似たウイルスが起こす病気で、コガタアカイエカが媒介する点も似ています。違うのは、日本脳炎の場合、増幅宿主が主に豚なのに対して、西ナイル熱では中間宿主が鳥やコウモリだという点です。

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家畜である豚ならば、管理も対策も可能ですが、空を飛ぶ野生の鳥やコウモリではそうはいきません。対策の難しさという点では日本脳炎より西ナイル熱の方が難しそうです。太平洋を越えて飛んでくる鳥が少ないためか、この病気は日本では報告されていませんが、私は日本で発見されるのも時間の問題だと思います。鳥でもコウモリでもコガタアカイエカでもなく、ウイルスを持った人間が空を飛んで日本に来るだろうからです。

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日本では忘れられつつある日本脳炎も軽んじていい病気ではありません。いったん罹れば、死亡率も高く、重い後遺症が残る場合もあります。そして驚いたことに、北海道出身者は、日本脳炎の予防注射(ワクチン接種)を受けていなかったのだそうです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53776

看護師の坂本氏が指摘されているのは全くもっともで、人の移動が盛んな現代、日本国内で、本州以南は日本脳炎の流行地域、北海道は非流行地域として、区別するのはナンセンスです。日本脳炎の恐ろしさを人々は思い出すべきです。

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病名または病原体の名前に「日本」が付く疾病は幾つかありますが、いずれも日本国内の感染者の数は激減しています。それが「日本は清潔な国」と評価される理由の一つですが、名前は「日本何とか」でも、日本だけの病気とは限りません。日本脳炎については、東南アジアと東アジアに広く分布しています。以前のブログでも紹介しましたが、中国では「日本脳炎」と言わずに「乙型脳炎」と呼んでいます。中国では多くの豚を飼っており、日本脳炎は広く存在するのです。だから日本国内だけ始末しても、海外から日本脳炎が逆輸入される可能性は常にあります。

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日本脳炎の場合、鹿児島や沖縄、千葉など養豚が盛んな地域での防疫対策が重要ですが、豚と蚊が接触する機会を減らし、さらに蚊の絶対数を減らすことが有効です。日本脳炎も西ナイル熱も、熱帯では複数種の蚊が媒介しますが、温帯ではコガタアカイエカが中心になります。コガタアカイエカを減らせば、日本脳炎だけでなく西ナイル熱の予防にも役立ちます。

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では蚊をどうやって減らすか? 従来の蚊取り線香や蚊帳は、人間の居住空間に蚊が入らないようにするもので、いわば人間と蚊の共存を目指すものです。しかし、これからは屋外の蚊を減らす対策が重要になります。蚊の絶対数を減らす必要があるからです。

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しかし、ピレトリンのような薬剤を大量に散布するのは、環境への影響や費用面で問題があります。ピレトリンは哺乳類や鳥類への毒性は少ないと言われますが、ピレスロイド耐性の蚊の出現も考えられます。化学物質を用いて、ある生物種の跋扈を抑え込むことには、やはり抵抗を感じます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89

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私が提案したいのは、以前のブログでご紹介した、レーザー光線で蚊を撃墜する装置の普及です。

https://tabi-labo.com/162527/mosquito-laser

荒唐無稽と思われていますが、この装置は量産化すれば50ドルくらいで販売できるそうです。開発者はマラリア対策として、途上国での普及を考えているようですが、価格を考えると最初に先進国で採用して、価格的にこなれた後に途上国に持っていく方が現実的です。

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最初に日本でコガタアカイエカ対策として実験的に導入することも可能です。特に養豚場の周囲にこのレーザー光線の装置を設置し、豚とコガタアカイエカを接触させないようにすることで、日本脳炎ウイルスを駆逐できるかも知れません。そうなれば、日本脳炎ワクチンを打つ必要もなくなります。

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そう簡単には・・・多分いかないでしょうが、コガタアカイエカを減らせれば、近い将来予想される西ナイル熱の日本上陸を遅らせることができるかも知れません。

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次の段階として、インドネシアなどの東南アジアの諸国にこの装置を提供して、養豚場の周囲などに設置し、本格的に日本脳炎Japanese encephalitisの撲滅作戦を展開することを提案します。

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まだ人類が成功したウイルスの撲滅作戦は、天然痘ウイルスだけです。この作戦に成功すれば、歴史的な勝利となります。

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でもひとつだけ理解できない事があります。日本脳炎が今でも猖獗を極めるとされるインドネシアのバリ島は、イスラムの世界です。養豚場は・・多分無いはずなのですが・・どうして日本脳炎が多いのでしょうか? まあ、どうでもいいことですが。


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【 なんのためにスポーツをするか その2 】 [雑学]

【 何のためにスポーツをするか その2 】

 

高校時代の恩師である、高瀬允先生は、論語の授業の中で、西洋と東洋の違いの一部を示されました。生活の規範を東洋では個人の道徳感に求めるのに対して、西洋では法律(つまり皆で決めた規則)に求める。どちらが妥当かは分からないが、明確な違いがある・・とおっしゃったのです。

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「東洋の道徳観に依拠する行動規範では、短い文章ですべてが足りる。一方、西洋の場合、社会や生活が複雑になれば、その都度、新たな法律(規則)を設けて対応しなければならない。その結果、法律はひたすら増えるばかりで、それらを全てマスターしなければ法曹の仕事ができない・・となると大変だ。司法試験に通るには自分の身長の高さの法律書を読んで理解・記憶しなければならないというが、それも道理だ。

一方、東洋の素朴な道徳感は、時代が変化しても変化しない。実に、「思邪無」の一言で多くの行動規範が網羅される。自らに省みてやましさがあるかないかで、正邪が自ずと判断できるはず・・・」と言うことです。

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西洋流の、全ての尺度に法律を用いる考え方では、裁判では、その行為が法律に抵触しているか否かがポイントになります。抵触していなければ、どんなに邪悪な行為でも処罰はされません。善悪の判断は二の次です。その結果、悪人はいかに法律の穴を見つけるかで悪知恵を絞り、悪徳弁護士は、どうやって法律をかいくぐって悪事を無罪とするかで才能を競い、裁判は一つのゲームになっています。

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同じことはスポーツにも言えます。西洋に起源を求める、多くのスポーツは規則を明確に規定します。野球の敬遠はルールに則った正当な作戦です。いくら「卑怯なり。正々堂々と勝負しろ」といっても無駄です。敵の強打者を全打席敬遠するのもありです。

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サッカーやバスケットボール、柔道などの時間制限のある競技で、リードして終盤を迎えた時に消極的な行動に出て時間を稼ぐというのも、当然ありです。西洋に起源を持つ、ルールが全てのスポーツ競技なら当然です。

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もっとも、柔道などの格闘技の場合は、あまりに逃げまわったり、消極的な態度を取れば、指導や警告が入り、さらには相手の得点になったりしますが。

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では、精神の鍛錬と人格の陶冶を目的とした青少年のスポーツで、ルールに違反していなければ何をやってもいいという考え方が適切か?と言えば、それは疑問です。

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青少年が学校で学ぶべきは、勝利至上主義でも、姑息な手段をよしとする生き方でもないはずです。スポーツを通じて学ぶべきは、スポーツマンシップを尊び、時には相手を思いやり、自らについては潔さを旨とする態度でしょう。

これは洋の東西を問いません。

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では何か良い具体例はないか?と考えて思いつくのは、その昔の清水善造の「誉のテニス試合」です。戦前の修身の教科書にも載っていたそうですが、彼が1920年のウィンブルドンに挑戦者決勝戦(今の準決勝戦)に出場した時の武士道精神にあふれたプレーは、英国でも絶賛されました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B4%E5%96%84%E9%80%A0

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接戦の中、相手のチルデン選手が転んだ時、彼は敢えてやさしい球を打ち、敵に情けをかけたのです。彼は優勢を保ち勝利は目前になりましたが、しかしたったひとつのプレーを境に逆転し彼は敗退しました。しかし、全ての観客は敗者の清水選手を絶賛し、拍手を送ったのです。このエピソードには尾ひれが付き、アメリカ人の線審が日本人を勝たせないために嘘のジャッジをしたという話が登場しましたが、それはどうやらフィクションだったようです。また彼が放ったやさしい球というのも、単に清水選手のミスだったという説もあるそうです。しかし、彼はにっこり笑って語らなかったそうです。負けた方が称賛された・・という点では、松井秀喜の星稜と明徳義塾の甲子園での試合に似ていますが、内容は全く逆です。

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清水選手のプレーを、100年後の今の日本人ならどう言うでしょうか? 日大アメフト部の内田監督や明徳義塾野球部の馬淵監督なら「勝たなきゃ意味ないよ。ばっかじゃないの」とでも言うのでしょうか?

でも、私がスポーツ選手なら、そんな監督たちに、指導されたくはないな・・と思います。


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