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【 最低賃金論 その1 】 [政治]

【 最低賃金論 その1 】

 

アベノミクス・・・以前にも書きましたが、国の政策に自分の名前を付けて自画自賛するのは、どうもいただけません。かつて米国でレーガン大統領が推進した経済政策・・減税を進め、小さな政府を目指し、サプライサイドを重視した政策をレーガノミクスと呼びましたが、これは他の経済評論家などが名付けたのであり、レーガン自らそう呼んだ訳ではありません。安倍首相が自分の考えや政策を従来の経済政策と区別して説明するのは結構ですが、自分が率先してアベノミクス・・と呼ぶのはどうもねぇ。自分自身をレーガン大統領になぞらえて考えるのも全くいただけません。

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そのアベノミクスの評価は、人によって違います。どの指標を取るかで評価が分かれる訳ですが、地方創生というか、地方経済の活性化にこだわる石破氏などは、さびれる一方の地方経済を目の当たりにして、どうしても批判を強めねばならない・・というところでしょう。

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一方、有効求人倍率をみると、ここ数年は大幅に改善されています。新卒者の就職事情をみると、空前の売り手市場で、学生は好きな会社を選べる状況です。デフレが続いた時代の就職氷河期が嘘みたいです。地球温暖化は困るが、就職戦線の温暖化は大歓迎・・という学生もいます。アベノミクスさまさまです。

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学卒のホワイトカラー以上に求人難なのは、現業の人たちです。トラックの運転手が足りず、日本国内の物流に支障がでています。建設現場では、人手不足のために、プロジェクトに遅れがでています。本当はオリンピックまでに完成したかった一部の建設プロジェクトが後回しになり、オリンピック以降に取り組むことになっています。肝心のオリンピックに間に合わないのは残念ですが、建設業界としては、仕事量が平準化され、オリンピック後の落ち込みが緩和されるので、業界の中には歓迎する人もいます。

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製造業の生産現場の人手不足も深刻です。製造業離れ、3K職場敬遠の中で、工場には若い人が集まらず、本来なら年金生活を楽しむはずの70歳のベテラン工員が、辞めるに辞められない状況です。こんなことは、高度成長期にもバブル経済の頃にもありませんでした。

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そこでふと考えます。こんなに人手不足で、求人難なのに、給料が上がらないのはなぜか?

ノーベル経済学賞を受賞したルイス教授の学説では、近くに潤沢な労働力の供給源がある場合は、経済が好調でも賃金は上昇せず、人手不足になって初めて賃金水準が上昇する・・とのことです。なんだか当たり前の話で、これでノーベル賞が貰えるのか?と思うのは、いまだ日本が経済学賞を受賞できず、かつ私がノーベル賞学者を輩出していない学校の卒業生だからかも知れませんが・・。

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それにしてもルイス教授の学説では、人手不足が深刻化している日本では、賃金が上昇してもいいはずです。それに賃金を決定するもう一つの要因である、企業収益も好転しています。東証一部上場の大企業の半分近くは、過去最高の好決算を出し、内部留保の金額も最大になっているのです。

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それなら、「少し働く人にも分け前をよこせよ!かつて盛んだった労働分配率の議論があまり聞かれないのはどうしてなのか?」と言いたくなります。その労働分配率の議論があまりないのは、本来労働者の味方であるはずの革新系の野党が、小党に分裂し、ひたすら弱いからでしょう。自民党が圧倒的に強く、なかでも安倍一強という状態だからかも知れません。

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しかし、それ以外にも理由はあります。

賃金上昇を決定するもう一つの要因は、経済成長率ですが、安倍政権下の日本は本当にGDPが増大しているのか??少し微妙です。バブル崩壊後やデフレ時代のマイナス成長に比べればましですが、プラス成長といっても3%未満の値では、本物の経済成長とは言えません。為替相場いかんでどうにでもなり、ドルベースでは違う値になります。前述の空前の人手不足も、少子高齢化で労働人口が急激に減り出したためと考えれば、ルイス教授の学説とはあまり矛盾しません。賃金は必ずしも上昇するとは言えないのです。

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だから賃金が増えなくても文句が言えないのか?・・と納得する訳にはいきません。解決可能な問題もあり、手が打てるはずです。行政は、自治体ごとに最低賃金の金額を設定し、これを毎年改定しています。自治体によって異なりますが、昨年の最低賃金上昇率は最高でした。経済を自然に任せておいても、なかなか勤労者の所得が増えないので、法律で縛って底上げしてやろう・・という発想です。

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これは労働者を保護するものですが、この方法には問題がたくさんあります。一つは最低賃金法が規定するのは、あくまで最低額のガイドラインであり、平均的な給与所得者の賃金に与える影響は限定的だということです。もう一つは、地域間格差の問題です。この法律は地域によって賃金水準が異なることを認めるわけで、そうすると、雇用は低賃金の地域に流れます。私はシェンゲン協定が成立する前後のEUを眺める機会がありました。シェンゲン協定によって、EU域内の人の移動が自由になると、賃金水準の低いスペイン人のトラック運転手は、フランスで引っ張りだこになりました。一方賃金の高いフランス人運転手のトラックは商売あがったりになり、EU政府に泣きつきました。

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日本でもトラック運賃の地域差はあるようですが、トラック運送業界で問題は顕在化していませんし、製造業でも、沖縄の最低賃金額が東京のそれより低いから・・といって、すぐ工場が沖縄に移動することにはなりません。しかし、地域間格差を肯定してしまうことは、やがて禍根となりえます。

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もうひとつ、賃金を国家権力が恣意的に操作することの問題です。本来は市場経済の合理性というか「神の見えざる手」が経済をバランスさせる訳ですが、国家権力が深い思慮無しに介入すると失敗します。その一つが韓国の例です。

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韓国の文大統領は、以前から国民の間の所得格差が大きいことを憂い、かつ一部の財閥だけが儲かり、零細企業が取り残されている韓国経済をなんとかしたいと思っていました。その志はよいのですが、それに加えて、韓国人のエトスとも言うべき日本への対抗心から、最低賃金を日本のそれより高くする政策決定をしました。具体的にはソウルでの最低賃金は1時間1万ウォン(=1000円)です。

「ついに賃金水準で韓国は日本を抜いた。ワハハ」

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安倍政権を貶すことを生き甲斐にしているかのような元通産官僚の古賀氏は、それをもって、「ついに韓国は日本を抜いた。安倍政権の経済政策はダメだ」と主張しています。

https://dot.asahi.com/dot/2018072100022.html

しかし、その結果、韓国は大変なことになりました。

最低賃金が上がったために、労働コスト増を製品価格に転嫁できない零細企業は人を雇えなくなり、倒産や解雇が増え、失業者が増大しました。人を減らした企業に残った勤労者には、著しい労働強化が待っていました。一方、製品価格に転嫁できる会社は製品価格を上げたために、国際競争力がなくなり、韓国の輸出産業は弱くなりました。韓国国内では失業率が上がったのに、物価は上がる状況になり、一歩間違えば、景気の後退と物価上昇が同時に進むスタグフレーションになります。

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もともと韓国では若年労働者の失業率が高く、国家経済の宿阿と言うべき状態だったのですが、さらに失業者が増えます。大学を出ても、就職できず、(コンビニが潰れたために)コンビニの店員にもなれない・・というバカげた事態になりました。

http://news.livedoor.com/article/detail/14178518/

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日本の大手企業では、長い間、ベースアップは、労働生産性の向上分にとどめる方針が春闘での暗黙の了解になっています。しかし、韓国の賃上げは生産性の向上代とは無関係であり、賃上げさえ実現できれば、会社が潰れても構わない・・・という無茶な方針で賃上げ闘争を行います。

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最低賃金だって、ひたすら上げればいいというのなら簡単です。時給1万円だって、時給10万円だって構わないのですが、それで経済が回らない場合、かえって国民は貧しくなります。文大統領には、その点が理解できなったのかな?

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韓国はともかく、日本で賃金水準を上げ、かつ失業率を低く維持し、好景気を維持するにはではどうすればいいのか?

 

ポイントは、雇用の流動性と、求人側と求職側のミスマッチの問題です。

それについては次号で


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【 造船業と安全保障 その1 】 [雑学]

【 造船業と安全保障 その1 】

 

世界の主要な造船会社と造船所という括りで、インターネットで調べると、驚いたことに米国からは2箇所しか選ばれません。いずれも東海岸のノーフォークとニューポートです。どちらも米海軍の艦艇を製造する造船所で、有名な艦船を製造しています。

世界初の原子力空母であるエンタープライズは、ニューポートで建造され、ノーフォークを母港としています。最新の原子力空母であるジェラルドRフォードもニューポートで建造されています。実は、空母の核燃料を交換できる港はニューポートだけで、ニューポートの造船所をなくすことはできません。ニューポートとノーフォークだけとなると、どうやら、民需に頼る造船所は駆逐されたようです。

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ちなみに、エンタープライズの加圧水型原子炉は、あの東芝を破綻に追い込んだウェスチングハウス製ですが、最新のジェラルドRフォードでは、ベクテル製に切り替わっています。原子炉の世界も栄枯盛衰が激しいようですが、これについては別稿で申し上げます。

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米国では、大型の正規空母を建造する技術と原子力船/艦を製造する技術の維持・継承が必要であり、どうしても上記のニューポートとノーフォークを残す必要があるのでしょうが、この2箇所のドックだけでは・・・実際のところ大規模な戦争に堪えられるか不明です。

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今から20年以上前、私が石油掘削リグを建造する造船所を探して、南部(メキシコ湾岸)を回った時には、アーカーガルフマリーン(コーパスクリスチ)やアボンデール(ニューオーリンズ)の造船所にはまだ活気がありましたが、今はもはや、米国には民間の大型船舶を製造する造船所は生き残っていないようです。

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米国には民間船舶として、大型客船や石油掘削リグ、LNGタンカー、コンテナ船などの高付加価値船舶の需要が一定量あります。(ここで高付加価値船舶)とは、トン当たりの単価が比較的に高い船舶を意味します。一番高いのは漁船で、一番安いのは石油のタンカーだそうです)。しかし、もはやそれらの船舶を国内で製造することはなさそうです。

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では、今、それらの船を建造するのはヨーロッパの造船所かな?と思えば、欧州の造船所も全く元気がありません。経営状態は惨憺たるもので、吸収合併と合従連衡を繰り返して、2大グループに集約されたのですが、経営は火の車です。

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大型客船の建造では優れた技術と実績を誇るイタリアのフィンカンティエリは、経営破綻し国家の管理のもと、再建中です。

https://www.fincantieri.com/en/

デンマークのODENSE造船所は、船殻のレーザー溶接に関しては先進的な技術を持ち、コンテナ船やRo-Ro船の建造では、一目置かれる存在でしたが、MAERSKグループの傘下に入った後、大赤字を出した造船部門として切り捨てられました。

https://en.wikipedia.org/wiki/Odense_Steel_Shipyard

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フィンランドのバルチラ(トゥルク造船)も大型客船の建造に実績があり、また推進ポッド方式など、革新的な船舶設計に挑みましたが、経営的には厳しく、STXグループの傘下に入った後、ドイツのマイヤー・ベルフトに吸収合併され、厳しいリストラを受けています。ちなみに、バルチラは造船業だった頃の住友重機と技術提携の関係にあり、昔の私の上司もフィンランドに派遣されていました。

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大型の石油掘削船を建造したイタリアのベレーリは90年代の初めに倒産し、今は跡形もありません。結局、欧州の造船会社は、ドイツのマイヤー・ベルフトグループとイタリアのフィンカンティエリグループの2大グループに分かれました。前者はバルト海沿岸を中心とした北海岸グループ、後者は地中海沿岸を中心とした南海岸グループと言えますが、どちらも経営は厳しく、国家の保護が前提となります。それなしでは、即刻倒産かも知れません。

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日本の三菱重工が、大型客船の建造に進出し、あるトラブルから2000億円の損失を出し、会社の経営が傾いた時、世間は天下の三菱重工がなんというヘマをしたのだ!と驚きましたが、何のことはない、三菱だけでなく、大型客船を製造している造船会社はどこも巨額の赤字を出しているのです。

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では、欧米や日本の造船会社から逃げた新造船の引き合いはどこへ行ったか?と言えば、韓国と中国を含むアジア諸国です。特に中国と韓国の幾つかの造船所が世界中の大型船需要をかき集めたために、他の国の造船会社は苦境におちいったのです。

全ての製造業の競争力はQCDのバランスで決まります。日本の造船会社は、Q品質、D納期管理では他の追随を許しませんし、欧米の造船会社の技術力に定評がありますが、Cコストとなると中国にはまるで敵いません。適者生存・・の原則で考えれば先進国の造船所は滅び、中進国の造船所が生き延びるのは、理の当然ですが、これでは安全保障上の問題が生じます。

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20世紀ならともかく、21世紀の現代、造船所の有無が安全保障に影響するか? と言えば、これは大ありだと私は思います。

以下次号


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【 日本脳炎と西ナイル熱 】 [医学]

【 日本脳炎と西ナイル熱 】

 

一時期、異常気象があると、何でも地球温暖化と結び付けて語る人がいました。報道ステーションのキャスターだった古館某は、雨が降っても、洪水が出ても、猛暑日が続いても、全て地球温暖化のせいで、それは先進国が野放図に温室効果ガスを排出したためだ・・と指摘していましたが、その因果関係についての説明はありませんでした。

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一方、熱帯性の伝染病が温帯の地域に広がっていく世界的な現象については、地球温暖化と結び付けて結論を急ぐおっちょこちょいはいないようです。近年、蚊が媒介する熱帯地域の伝染病であるジカ熱やデング熱が日本でも話題になりますが、日本の気候が熱帯に近づいたから・・・とは限りません。日本の夏は昔から熱帯と同じくらい暑かったのです。

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日本では戦後間もない時期にマラリアが流行し、デング熱も発生しました。これは南方から罹患した兵隊が復員し、日本国内に病原体をもたらしたからです。国内の衛生環境も良くなく、国民の栄養状態が悪かったことも理由ですが、最大の理由は南方からの復員兵です。その後、日本の復興とともに適切な対策がとられ、マラリアもデング熱も終息しました。

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今日、世界的に熱帯の伝染病が流行りだしたのも、地球上を多くの人が高速で移動する時代だからだ・・と私は推測します。しかし、理由はどうあれ、熱帯の病気がそれまで無かった涼しい地域に広まるのは困った事態です。でも蚊が媒介する伝染病については何等かの対策がありそうです。

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外国で話題になるのは、かつてはアフリカの一地域の風土病だった西ナイル熱が米国や欧州に広まりつつあることです。米国では既に西ナイル熱は大きな問題ですし、最近ではギリシャやイタリアで死者が発生しています。

http://news.livedoor.com/article/detail/15145481/

西ナイル熱は日本脳炎と似たウイルスが起こす病気で、コガタアカイエカが媒介する点も似ています。違うのは、日本脳炎の場合、増幅宿主が主に豚なのに対して、西ナイル熱では中間宿主が鳥やコウモリだという点です。

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家畜である豚ならば、管理も対策も可能ですが、空を飛ぶ野生の鳥やコウモリではそうはいきません。対策の難しさという点では日本脳炎より西ナイル熱の方が難しそうです。太平洋を越えて飛んでくる鳥が少ないためか、この病気は日本では報告されていませんが、私は日本で発見されるのも時間の問題だと思います。鳥でもコウモリでもコガタアカイエカでもなく、ウイルスを持った人間が空を飛んで日本に来るだろうからです。

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日本では忘れられつつある日本脳炎も軽んじていい病気ではありません。いったん罹れば、死亡率も高く、重い後遺症が残る場合もあります。そして驚いたことに、北海道出身者は、日本脳炎の予防注射(ワクチン接種)を受けていなかったのだそうです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53776

看護師の坂本氏が指摘されているのは全くもっともで、人の移動が盛んな現代、日本国内で、本州以南は日本脳炎の流行地域、北海道は非流行地域として、区別するのはナンセンスです。日本脳炎の恐ろしさを人々は思い出すべきです。

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病名または病原体の名前に「日本」が付く疾病は幾つかありますが、いずれも日本国内の感染者の数は激減しています。それが「日本は清潔な国」と評価される理由の一つですが、名前は「日本何とか」でも、日本だけの病気とは限りません。日本脳炎については、東南アジアと東アジアに広く分布しています。以前のブログでも紹介しましたが、中国では「日本脳炎」と言わずに「乙型脳炎」と呼んでいます。中国では多くの豚を飼っており、日本脳炎は広く存在するのです。だから日本国内だけ始末しても、海外から日本脳炎が逆輸入される可能性は常にあります。

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日本脳炎の場合、鹿児島や沖縄、千葉など養豚が盛んな地域での防疫対策が重要ですが、豚と蚊が接触する機会を減らし、さらに蚊の絶対数を減らすことが有効です。日本脳炎も西ナイル熱も、熱帯では複数種の蚊が媒介しますが、温帯ではコガタアカイエカが中心になります。コガタアカイエカを減らせば、日本脳炎だけでなく西ナイル熱の予防にも役立ちます。

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では蚊をどうやって減らすか? 従来の蚊取り線香や蚊帳は、人間の居住空間に蚊が入らないようにするもので、いわば人間と蚊の共存を目指すものです。しかし、これからは屋外の蚊を減らす対策が重要になります。蚊の絶対数を減らす必要があるからです。

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しかし、ピレトリンのような薬剤を大量に散布するのは、環境への影響や費用面で問題があります。ピレトリンは哺乳類や鳥類への毒性は少ないと言われますが、ピレスロイド耐性の蚊の出現も考えられます。化学物質を用いて、ある生物種の跋扈を抑え込むことには、やはり抵抗を感じます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89

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私が提案したいのは、以前のブログでご紹介した、レーザー光線で蚊を撃墜する装置の普及です。

https://tabi-labo.com/162527/mosquito-laser

荒唐無稽と思われていますが、この装置は量産化すれば50ドルくらいで販売できるそうです。開発者はマラリア対策として、途上国での普及を考えているようですが、価格を考えると最初に先進国で採用して、価格的にこなれた後に途上国に持っていく方が現実的です。

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最初に日本でコガタアカイエカ対策として実験的に導入することも可能です。特に養豚場の周囲にこのレーザー光線の装置を設置し、豚とコガタアカイエカを接触させないようにすることで、日本脳炎ウイルスを駆逐できるかも知れません。そうなれば、日本脳炎ワクチンを打つ必要もなくなります。

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そう簡単には・・・多分いかないでしょうが、コガタアカイエカを減らせれば、近い将来予想される西ナイル熱の日本上陸を遅らせることができるかも知れません。

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次の段階として、インドネシアなどの東南アジアの諸国にこの装置を提供して、養豚場の周囲などに設置し、本格的に日本脳炎Japanese encephalitisの撲滅作戦を展開することを提案します。

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まだ人類が成功したウイルスの撲滅作戦は、天然痘ウイルスだけです。この作戦に成功すれば、歴史的な勝利となります。

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でもひとつだけ理解できない事があります。日本脳炎が今でも猖獗を極めるとされるインドネシアのバリ島は、イスラムの世界です。養豚場は・・多分無いはずなのですが・・どうして日本脳炎が多いのでしょうか? まあ、どうでもいいことですが。


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【 なんのためにスポーツをするか その2 】 [雑学]

【 何のためにスポーツをするか その2 】

 

高校時代の恩師である、高瀬允先生は、論語の授業の中で、西洋と東洋の違いの一部を示されました。生活の規範を東洋では個人の道徳感に求めるのに対して、西洋では法律(つまり皆で決めた規則)に求める。どちらが妥当かは分からないが、明確な違いがある・・とおっしゃったのです。

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「東洋の道徳観に依拠する行動規範では、短い文章ですべてが足りる。一方、西洋の場合、社会や生活が複雑になれば、その都度、新たな法律(規則)を設けて対応しなければならない。その結果、法律はひたすら増えるばかりで、それらを全てマスターしなければ法曹の仕事ができない・・となると大変だ。司法試験に通るには自分の身長の高さの法律書を読んで理解・記憶しなければならないというが、それも道理だ。

一方、東洋の素朴な道徳感は、時代が変化しても変化しない。実に、「思邪無」の一言で多くの行動規範が網羅される。自らに省みてやましさがあるかないかで、正邪が自ずと判断できるはず・・・」と言うことです。

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西洋流の、全ての尺度に法律を用いる考え方では、裁判では、その行為が法律に抵触しているか否かがポイントになります。抵触していなければ、どんなに邪悪な行為でも処罰はされません。善悪の判断は二の次です。その結果、悪人はいかに法律の穴を見つけるかで悪知恵を絞り、悪徳弁護士は、どうやって法律をかいくぐって悪事を無罪とするかで才能を競い、裁判は一つのゲームになっています。

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同じことはスポーツにも言えます。西洋に起源を求める、多くのスポーツは規則を明確に規定します。野球の敬遠はルールに則った正当な作戦です。いくら「卑怯なり。正々堂々と勝負しろ」といっても無駄です。敵の強打者を全打席敬遠するのもありです。

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サッカーやバスケットボール、柔道などの時間制限のある競技で、リードして終盤を迎えた時に消極的な行動に出て時間を稼ぐというのも、当然ありです。西洋に起源を持つ、ルールが全てのスポーツ競技なら当然です。

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もっとも、柔道などの格闘技の場合は、あまりに逃げまわったり、消極的な態度を取れば、指導や警告が入り、さらには相手の得点になったりしますが。

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では、精神の鍛錬と人格の陶冶を目的とした青少年のスポーツで、ルールに違反していなければ何をやってもいいという考え方が適切か?と言えば、それは疑問です。

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青少年が学校で学ぶべきは、勝利至上主義でも、姑息な手段をよしとする生き方でもないはずです。スポーツを通じて学ぶべきは、スポーツマンシップを尊び、時には相手を思いやり、自らについては潔さを旨とする態度でしょう。

これは洋の東西を問いません。

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では何か良い具体例はないか?と考えて思いつくのは、その昔の清水善造の「誉のテニス試合」です。戦前の修身の教科書にも載っていたそうですが、彼が1920年のウィンブルドンに挑戦者決勝戦(今の準決勝戦)に出場した時の武士道精神にあふれたプレーは、英国でも絶賛されました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B4%E5%96%84%E9%80%A0

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接戦の中、相手のチルデン選手が転んだ時、彼は敢えてやさしい球を打ち、敵に情けをかけたのです。彼は優勢を保ち勝利は目前になりましたが、しかしたったひとつのプレーを境に逆転し彼は敗退しました。しかし、全ての観客は敗者の清水選手を絶賛し、拍手を送ったのです。このエピソードには尾ひれが付き、アメリカ人の線審が日本人を勝たせないために嘘のジャッジをしたという話が登場しましたが、それはどうやらフィクションだったようです。また彼が放ったやさしい球というのも、単に清水選手のミスだったという説もあるそうです。しかし、彼はにっこり笑って語らなかったそうです。負けた方が称賛された・・という点では、松井秀喜の星稜と明徳義塾の甲子園での試合に似ていますが、内容は全く逆です。

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清水選手のプレーを、100年後の今の日本人ならどう言うでしょうか? 日大アメフト部の内田監督や明徳義塾野球部の馬淵監督なら「勝たなきゃ意味ないよ。ばっかじゃないの」とでも言うのでしょうか?

でも、私がスポーツ選手なら、そんな監督たちに、指導されたくはないな・・と思います。


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【 何のためにスポーツをするか? その1 】 [雑学]

【 何のためにスポーツをするか? その1 】

 

世のスポーツ選手がスポーツをする理由は様々です。プロ選手はお金を貰って生活するためですし、アマチュアの中には、健康維持を目的にする人もいます。気分転換やストレス解消を目的にプレーする人もいます。仕事を引退した後の生き甲斐だと言う人もいますし、友達や仲間を作るための手段とする人もいます。

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青少年の場合は、心身を鍛えることが最大の目的とされます。特に学校でのスポーツは、体育とは言いますが、体だけでなく、精神の鍛錬、人格の陶冶が大きな目的とされます。

そして、一部の中学校や高校では、部活に参加することが半ば強制され、学校によっては、しばしば知育・徳育よりも体育が優先されます。

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人は、「健全なる精神は健全なる身体に宿る」と言い、体を鍛えることで優れた人格が得られると語ります。しかしこれは多分、嘘でしょう。現実には、身体は極めて丈夫で健康的なのに、精神は至って不健康という人物が多くいます。本音を言えば、「健全なる精神が健全なる肉体に宿って欲しい」という一種の願望ではないか?と私は思います。

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実際には、この青少年のスポーツには、多くの問題があります。コーチや監督を頂点とする絶対服従の理不尽な上下関係、シゴキというか、ひたすら身体をいじめることで成長するという非科学的で怪しげな精神論。そしてフェアプレーの精神を逸脱した勝利至上主義の横行・・・。もし、青少年に道徳を説くだけの資質も覚悟も無い大人が、指導者になり、いたずらに勝利至上主義に走ると、どうなるか?

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先日、たまたま、日大のアメリカンフットボール部の悪質な反則の場面がインターネットに流れ、日大全体を揺るがす大問題に発展しました。余談ですが、旧来のマスコミは「インターネットの情報など、所詮、便所の落書き」と言っていましたが、この事件が全国ニュースになったのはインターネットの動画のお陰です。

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ここで問題となったのは、日大の監督が、犯罪とも言うべき暴力行為を選手に命じたことや、選手起用を決定する監督に対し、選手は何も言えない弱い立場であること、それを利用して理不尽な圧力を選手にかけていたこと・・・・などですが、程度こそ異なるものの、類似した例は各種の学生スポーツに見られます。

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監督は常に絶対的な権限を持ち、選手は自ら考えて判断することを許されず、盲目的に監督コーチの指示に従わざるを得ない・・という状況が、しばしば問題を惹起します。

以前、ラグビー選手をラガーと呼ぶべきか、ラガーメンと呼ぶべきかを弊ブログに書きましたが、自ら考えて判断し能動的に動く選手はラガーであり、何も考えずコーチの指示に従うだけの将棋の駒のような選手はラガーメンでしょう。ちなみに将棋の駒を英語ではChessmenと呼びます。日本の団体スポーツは、将棋の駒だらけです。

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今、甲子園で熱戦が繰り広げられている高校野球もそうです。

チームによっては、打者は一球ごとに不安そうにベンチの方を振り向き、監督のサインや表情を伺います。自分自身で考えて、エンドランでもバントでも、好球必打でも良いから判断すればいいのに、自分では決められないようです。もし日大の内田何某のような監督がいて、投手にビーンボールを投げろ、あるいはスパイクを野手に向けて滑り込めと走者に指示したら、彼らは唯々諾々と従うのでしょうか?

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犯罪でなくても、スポーツマンシップに反する行為を、監督の命で行うこともあります。

今、高校のバレーボールの試合では、相手のミスの場合でも、得点したら喜び囃し立てる風景が当たり前です。ある時、相手のミスを喜ぶとは、スポーツマンシップにもとるではないか?とある人(名野球選手だった豊田泰光)が質問したら、選手は「コーチから相手のミスでも喜べと指示された」と回答したとのこと。選手には、潔さとかスポーツマンシップを考える余裕や智慧はなく、コーチの発言が全てなのです。

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その問題が最も端的に表れたのは、1992年の夏の甲子園、2回戦の金沢星稜高校と明徳義塾高校の試合です。有名なエピソードですから皆さんご存知でしょうが、この試合で星稜高校の松井秀喜選手は5打席とも敬遠され、星稜高校は敗退しました。大会開始の際の選手宣誓では、スポーツマンシップに則り正々堂々と戦う事を誓ったはずですが、明徳は少し違いました。この事件は、25年以上経った今も語り継がれ、新聞にも登場します。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/special/CO033691/20180806-OYT8T50036.html?from=ytop_os1

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5打席全ての敬遠は、明徳の馬淵史郎監督の指示であり、バッテリーの判断ではありません。馬淵監督は、日本中の観客の前で、自チームの投手は実力が足りないから松井を倒せないと宣言した訳で、無能と宣告された投手は屈辱的な敬遠の指示を忠実に実行しました。しかし、一応、故意四球をカムフラージュするために捕手を座らせたままの敬遠という姑息な方法を取りました。

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今年の百回大会の始球式に登場した松井秀喜は、5打席敬遠の話を昔のエピソードとして笑顔で朗らかに語ります。星稜の山下監督との師弟関係は今も続き、松井は生涯の師として尊敬しています。

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一方、この試合で精神的にボロボロになった明徳義塾は、次の試合で惨敗して甲子園をさりました。敬遠策のお陰で、甲子園で1試合分だけ勝ち残ることはできましたが、全体としては惨めな思い出だけが残ったはずです。5打席敬遠のボールを投げた河野投手のその後は杳として分かりません。

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試合後、馬淵監督は「選手に責任は無い、責任は全部俺が取る」と言いましたが、彼は責任を全く取りませんでした。ひとつのポーズとして学校にいったん辞表をだしましたが、すぐに撤回し、アマ野球界で順調に出世を重ね、拓大の監督から拓大の理事になっています。どうでもいいけど、私大の理事というのは不思議な存在です。学問の府であるのに、スポーツ畑出身で、知性も教養も品格も感じさせない御仁が幅を利かせて威張っています。あるいは某医科大学のように、寄付金欲しさに入学試験を歪める金の亡者もいます。

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また、馬淵監督は、「敬遠はルールに認められた正当な作戦であり、何ら恥じることはない。敬遠しなければ負けたはずで、それでは相手が喜ぶだけだ。一方、星稜は一人だけプロ選手が混じっていた」と語り、作戦の正当性を主張し、むしろ星稜側に非があるような口調で語りました。

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脱線するけれど、明徳義塾と名乗るからには、生徒に義を説く学校ではないのかい?それがスポーツマンシップを軽んじる発言をしてどうする?

世の中に、「何とか義塾」と言う名前の私学は多いけれど、義とは何か?を語らない学校なら、それは義塾ではない。単に慶応義塾の名前を真似ただけの学校だと思います。

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私は、監督の命のもとに敬遠せざるをえず、深く傷ついた明徳の投手に今も同情します。

すると、必ず奇妙な反論がでます。

「敬遠はルールに認められた正当な作戦。それを行って何が悪い?禁止されていないのなら、何ら恥じることはないし、非難されるいわれはない。むしろルールで禁止されない方法を上手に利用するのは巧妙だし馬淵監督の発言は正しい」

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この点については、次号で管見を申し上げます。


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