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【 飛ぶかMRJ再び その3 】 [航空]

【 飛ぶかMRJ再び その3 】

 

名機と呼ばれ、多くの機体が売れ、そして長期間愛用される飛行機には共通点があります。それは機体設計の余裕です。 設計の冗長性と言ってもいいかも知れません。

例えば、軍用機のB-52は名機の一つです。爆撃機という殺人のための機械であることは遺憾ですが、航空機としては優れています。1950年代に登場したこの大型爆撃機は、もっと後に登場した爆撃機(B-58やF-117)が早々と全機引退するなか、今も生き延びています。エンジンを載せ替え、アビオニクスと呼ばれる、飛ぶためのシステムを新型に更新し、生き残っています。アメリカには、冗談でなく親子三代にわたってB-52のパイロットだったという家族がいるそうです。もうじき、ひ孫がB-52に搭乗するかも知れません。

同じようにC-130ハーキュリーズという輸送機も大変な長寿命です。 旅客機で言えば、ボーイングB-737B-747、ダグラスDC-8の長寿命です。戦前のDC-3も長寿命の名機の典型です。

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それらの機体が長く使われる理由の一つは、設計に余裕があることです。その余裕のお陰で、いろいろな改造ができ、幅広い用途に使え、主要部品を新型に変えるだけで、バリバリの現役を続けられます。

また、小規模な設計変更だけで、多くの派生型を生み出せるのも特徴です。DC-8は、長胴型にして乗客定員を増やしましたし、B-747ジャンボや、B-737 A-320は、自由自在(と言うと言い過ぎですが)胴の長さを変えて、乗客定員を変え、そして航続距離も変えています。

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最近、三菱航空機は定員70人の小型化したMRJを開発すると言っていますが、もっと早く着手すべきでした。今回の発表も、米国のコミューター路線に飛ばすために、重量を軽くするための対策と思われます。 そんな弥縫策を 今頃議論してどうなるのか?

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MRJが高性能を狙い過ぎたために、限界に近い設計となり、余裕が無いことは素人目にもわかります。 限界設計はゼロ戦以来の伝統なのか? とりわけ狭すぎる貨物室は大きな問題です。 米国のビジネスマンが日帰り出張に使うのなら、機内持ち込みのアタッシェケース一つでよく、座席の上の荷物棚だけでOKです。 しかし、アジアを飛ぶLCCに使うなら、容量が全く足りません。アジアで国際線に乗る人々は、皆さん大きな荷物を運びます。行商でもやるのか、あるいは夜逃げでもしてきたのか?と思うほどです。

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もしアジアのLCCMRJを採用すれば、貨物室の容量不足がすぐに顕在化するはずです。

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一見、無駄に思えても冗長性を持たせることで、機械やシステムが堅牢になり、使いやすくなり、寿命が長くなる・・というのは飛行機だけではありません。 建築家ル・コルビュジェは「建築は住むための機械である」と言っていますが、機械として眺めれば、家屋のゆとりは本当に必要です。

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私はロンドン時代、郊外の古い家に暮らしていました。1900年代に出来た家で、V2号の爆撃を逃れた家ですが、快適に住むことができました。それはユーティリティ空間がふんだんにあったからです。暖炉の使用が禁止され、セントラルヒーティングになっても、配管を通す空間には困りません。インターネット回線を引くための空間も十分あります。昔の家は余裕があったから、100年経っても居住に堪えるのです。 冷暖房装置を付け、トイレを新しくし、窓をアルミサッシュにする事で、十分に使えます。 最近、日本で流行りの古民家も、ゆとりのある空間、冗長な設計が重宝されているのです。

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飛行機に話題を戻しますが、飛行機もロングセラーになるための条件は同じです。自由自在に改良できるゆとりが大事です。そして発売当初は不人気でも、やがて評価される機体を目指すというのもありです。ある意味で設計者冥利とも言えます。実は堅牢な飛行機設計で有名な土井武夫技師が設計したYS-11がそうでした。頑丈で故障が少なく、使い込んでいくうちに評価が上がったのですが、その前に早々と生産中止になってしまいました。

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三菱重工/三菱航空機の経営者が、30年先を見据えて、腹をくくってMRJを世に出すかどうか・・・問題の本質はそこです。

でもそれ以前に、三菱重工は、東大の船舶と航空の出身者が、覇権争いをしているようではだめですね。エンブラエルの経営者に笑われますよ。それとホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格CEOにも笑われますよ。


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【 飛ぶかMRJ再び その2 】 [航空]

【 飛ぶかMRJ再び その2 】

 

前回も申しましたが、新規に参入して顧客を得るには、他社との差別化、あるいは他社が模倣できない何かが必要です。 

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ホンダジェットは、MRJとは飛行機の大きさも顧客も全く違うので、比較にはならないのですが・・・ホンダジェットの売れ行きは好調で、MRJと対照的です。広いキャビン、低燃費、最高速度等、ライバルを凌駕する点は幾つもあったのですが、最大の特徴は主翼の上にエンジンを乗せた独特の形状が目立ちます。

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MRJにも、本当は一目見て三菱製だと分かる何かが必要です。しかし、日本では知らぬ人のいない三菱重工ですが、海外で航空機メーカーとしての知名度は低く、三菱製だと分かっても、「だからどうなの?」となってしまいます。 

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では売れ行き不振のMRJをどうするか?

取りあえずは、米国型式証明取得のための、仕事を急ぎますが、併行して、大幅に改良したMRJ改の開発を進める必要があります。 飛行機は新型機の型式証明を取得するのは難しいのですが、既存の機種の派生型という扱いなら、比較的短時間で取得できる可能性があります。

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改造する方向は、一言で言えば2極分化です。 一つは、増加タンクを吊ってでも積載燃料を増やし、航続距離を延ばすタイプです。河野外相が世界中を飛び回るのに使える飛行機を・・・というなら航続距離11000Km以上で、パリ=東京間をノンストップで飛ぶ飛行機が必要です。 その代わり、重量は大きくなりますから、必要な滑走路は長くなります。でも大都市の主要空港だけを考えるなら、滑走路長の問題はなくなります。

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今世界の小型旅客機やビジネスジェットで航続距離1Km以上の飛行機は限られます。 乗客定員は少ないけれど、大型ジェット機と同じように、東京=ニューヨークをノンストップで飛びますよ・・という飛行機なら、必ず一定の需要はあります。

滑走路の長さと航続距離がトレードオフというのなら、逆に短距離で離着陸を追及する方法もあります。

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今、日本では定期便が飛ぶ空港の多くは、滑走路を1200m以上に延ばすことでジェット機対応が終わっていますが、まだ取り残された飛行場は幾つもあります。

新潟県の佐渡空港、福井県の福井空港、東京の調布飛行場などですが、それらの地域は新幹線の恩恵も乏しい地域です。

「国内線だし長距離飛ぶ必要はない。その代わり、近くにある小型の飛行場を利用させて欲しい。それもジェット機で・・・」という声も必ずあるはずです。 三菱航空機には三井物産、三菱商事、住友商事といった大手総合商社が軒並み出資しています。マーケッティングの権化とも言うべきトヨタも出資しています。しかし、彼らが本当に地道な市場調査を行ったのか? 私には疑問です。

 

以下 次号


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