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【 中国の少子化問題  その2 】 [中国]

【 中国の少子化問題  その2 】

 

私の持論は、世の中の考え方とは逆です。我が子に幸せな人生を歩ませるには、とにかく幸せで楽しい子供時代を過ごさせることが重要です。大人になってから、自分の少年時代/少女時代には楽しい思い出がたくさんあったなぁ・・・と思い出せるような、そんな子供時代が必要なのです。

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子供の頃、遊んでばかりいても大丈夫か? 進学競争に負けやしないか?泳げない男の子やピアノも弾けない女の子では、将来困らないか? などとくだらない心配は要りません。お金もかかりません。

毎日、外で暗くなるまで、男の子なら三角ベースの草野球を楽しみ、女の子はゴム跳びでも石蹴りでもして遊べばいいのです。雨が降れば、自宅で遊ぶか、図書館で児童書でも漫画でも読めばいいのです。休みの日には、近くの里山に探検に出かければいいのです。夏休みの宿題なんか放っておきましょう。あんなものは大人の自己満足のためのものです。

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では、私がそれを主張するのはなぜか?

人は自分が楽しい子供時代を過ごせば、子供を産んで子供たちにも楽しい経験をさせようと思うからです。

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昔のブログにも紹介しましたが、小児科医で児童心理学者だった松田道雄博士は、その著書「私は二歳」の中で、人は幸福な子供時代を過ごすために生まれてきたのかも知れない・・と述べています。私は、子供時代が幸せなら、大人になってからも心豊かな人生を送れるのではないか?と考えます。 物質的に恵まれるかは分かりませんが、それは人生の良し悪しを決める本質ではありません。

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エッセイストで社会学者である木村治美氏はロンドン時代に、子育てについて面白いことを語っています。

「子育ての醍醐味は、自分の子供時代の楽しい記憶を、子供との暮らしを通して追体験できることである」

このエッセイを書いた頃の彼女の年齢については、良く知りませんが、中高年に達した人の、日々の思考のある部分は、若かった頃の思い出を反芻することで占められます。 楽しい思い出、懐かしい記憶が多くあるほど、幸福な日々を過ごせるのです。

残念ながら、それらの記憶はどんどん忘れ去られますが、日々成長していく我が子の生活を通して、それが追体験できれば、素晴らしいことです。

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子育ては苦痛ではなく、楽しみになります。 子育てが、人生に新たな幸福の日々をもたらしてくれる・・となれば、自然に子供を産む人は増えます。

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残念ながら、私が見た中国の子供も、韓国の子供も幸せそうではありませんでした。

中国の場合、都市の裕福な家庭では、子供は塾通いと受験勉強の日々です。農村部の貧しい家庭の子や民工の子供は、早くから労働者となります。

韓国の子供も受験勉強の日々です。受験に失敗すれば、人生の落伍者のように言われ、それまでの勉強の日々が無意味だったように言われます。

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これでは楽しい思い出もできません。 どうか、世の中の父親・母親は、子供を遊ばせ、そして、自分達も子供の遊びに加わって、自分の子供時代の楽しい記憶を反芻してください。それが最良の子育てだと思います。

 

もっとも、我が家の場合、二人の息子が成人するまで、その子育てをほとんど妻にまかせっきりだったオヒョウは、偉そうなことは何も言えないのですが・・。

 

幼きは、幼きどちのものがたり、葡萄のかげに月かたぶきぬ


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【 中国の少子化問題 】 [中国]

【 中国の少子化問題 】

 

中国の出生率が低いままです。有名な「一人っ子政策」を見直し、2人以上子供を産めるようになったのに、今度はなかなか子供を産む夫婦が増えないのです。

直近の出生率は、少子高齢化が問題になっている日本よりさらに低い値で、近い将来、日本以上の少子高齢化が進み、2030年以降は人口の急激な減少が始まるかもしれません。

https://forbesjapan.com/articles/detail/20511

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大きな国で人口が急激に減少するという事態は、ペストなどの疫病や大戦争を除けば、過去に例がありません。

そして、人口の急激な自然減は、単に国家規模の縮小という問題だけではありません。減少の過程で深刻な社会問題をもたらします。年齢別の人口構成を示す人口ピラミッドが逆三角形になりますが、これは社会福祉の破綻を意味します。

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中国の「一人っ子政策」の初期の段階では、一人の子供は6つの財布を持つと言われました。つまり両親、両祖父母が、かわいい孫や子供にお金を注ぎ込んだのです。一人っ子は大切にされ、甘やかされた子供たちは「小皇帝」と呼ばれました。

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しかし一転、その子達が大人の勤労世代になった頃、今度は一人で6人の老人の福祉負担を背負わねばならないのです。中国は儒教文化のもと、伝統的に老人を敬う国ですが、この状態が続けば、年金も破綻し、老人医療も高齢者福祉も頓挫します。中国の富裕層には様々な事情により、海外移住(というより脱出)を目指す人がいます。その脱出の理由の一つは早晩予想される、中国の老人福祉政策の破綻でしょう。

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私が中国の昆山にいたころ、週末に2人以上の子供を連れた家族が街を歩いていると、周囲の人が羨望の目で見ていたのを思い出します。訳を聞くと、2人以上の子供を連れた家族というのは台湾人だとのこと(昆山には台湾企業が多くありました)。台湾人は一人っ子政策の対象外で、何人でも子供を持てたのです。

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それをうらやむ中国人夫婦がいたことを覚えています。だから、中国政府が一人っ子政策を廃止した・・と聞いて、私は思いました。「これは良かった。これで男の子が欲しい夫婦も、女の子が欲しい夫婦もチャンスが増えるし、台湾人をうらやましく思う必要もない・・。出生率はあがり、生まれる子供の数は増えるだろう・・・」。

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しかし、現実は違いました。冒頭で言いましたように、一人っ子政策を止めてからも、子供の数は増えません。それはなぜか? 私は一つの理由は、中国が中途半端に豊かになってしまったからだと思います。

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20世紀の終わりの頃、先進国で出生率の低下が問題になり始めました。調べてみると、出生率が低いのは、日本、ドイツ、スェーデン、オーストリア、イタリアなどで、世の中では「第二次大戦の枢軸国だった国で出生率が低下している。これはなぜか?」という議論になったのですが、はっきりとした理由はわかりませんでした。

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今、考えると、先進国の豊かな生活をしている民族では、おおむね出生率が低下しています。人口増が続く米国だって白人だけをみれば、出生率は高くなく、高いのは黒人やヒスパニックです。フランスもアフリカ系の出生率が高くなっています。枢軸国も連合国も関係なかったのです。

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なぜ、豊かな国では出生率が低く、そうでない国や民族では出生率が高いのか?

理由は主に経済的な事情です。

前のブログにも書きましたが、貧しい家庭や社会では、子供はベネフィットです。子供が生まれれば働き手が増えることになり、家計は楽になるのです。子供は幼い内から、労働して収入を得ます。働けない子も妹や弟の子守はできます。そして親の負担を軽くするのです

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一方、豊かな家庭や社会では、子供はコストです。教育費はかかりますし、就労するまでの期間(つまり就学期間)は、貧しい家庭や社会より長くなり、親の負担は増加します。

貧しい社会では少しでも楽になるために子供を産みます。豊かな社会ではそうではありません。

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しかし貧しい社会では、子供は早くに就労しますが、教育を受けていないため、専門性の高い職業や、高い生産性をあげる仕事には就けません。つまり、高賃金の仕事にはありつけません。長い目で見れば生涯所得は少なく、低所得の生活が世代交代しても続きます。

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一方、豊かな社会では、女性の社会進出が進み、勤労世代の女性にとって母親や専業主婦以外のオプションも増加します。子育て以外にも自己実現や生き甲斐を見出せます。つまり子供を産まないというオプションも出てくるのです。

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子供はコストだ・・という考え方は、中国や韓国では特別な意味を持ちます。

かつて科挙のシステムを採用したこの2つの国では、難しい試験にパスし、エリートの学校を卒業することが立身出世の早道でした。家柄や出自によらず、試験さえ通れば、偉くなれるし、裕福で幸せになれる・・・(という幻想)の元、閉塞感の漂う庶民階級は子供の教育に熱を入れます。これは昔から現代まで、中国や韓国の、教育に注力できる人々(つまり中産階級)に共通した事情です。

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今後、中国の都市戸籍と農民戸籍の区別は見直されるでしょうが、現在、農民戸籍の人は裕福になれる機会が乏しい極めて厳しい閉塞感の中で暮らしています。その農民戸籍を脱出する数少ない方法が大学を卒業することなのです。社会は急速に豊かになっても、取り残される庶民は、子供に英才教育を施します。親の子供にかける期待は高まり、孟子の母親以来の伝統である教育ママが登場します。しかし、これは子供と両親にとって大変な心理的プレッシャーであり、金銭的な支出も伴います。現代の科挙は、コストを強いるのです。

塾や家庭教師、習い事で子供も大変ですが、親も大変です。

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韓国もおおむね同じです。若年失業率が常に高いこの国では、下手をすれば「大学は出たけれど」仕事にありつけません。あるいは兵役を終えて娑婆に出ても職がありません。一部のエリート大学を卒業しなければ、未来は開けないのです。勢い、受験戦争は激化し、本人と家族の負担は大きくなります。入学試験の時は家族全員で心配し、不合格だったら家族全員で落胆します。自分の時の記憶から、受験戦争の心理的な負担はもうこりごりだという人は子供を産みません。或いは一人だけしか産みません。

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豊かな社会では、子供はコストだと言いましたが、実は本当に豊になりきっていない中途半端な社会で暮らす、特に上昇志向の強い人々にとって、子供は最も大きな負担になるのです。

中国や韓国で暮らす庶民も、子供の世代は今よりも豊かで幸せであって欲しいと願います。その結果、少子化は進みます。

 

ではどうすればいいのか?

 

それについては、私には持論がありますが、次回 申し上げます。


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