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【 モンゴルのウィンドファームとスマートグリッドと日本 その2 】 [雑学]

【 モンゴルのウィンドファームとスマートグリッドと日本 その2 】

 

前回、孫氏のモンゴルからの送電線敷設のプロジェクトを、中国=北朝鮮=韓国ルートと勝手に解釈しましたが、それは誤りだったかも知れません。

インターネット上には、モンゴル=シベリア・ロシア=サハリン(樺太)経由での電力輸送を前提に議論されています。孫正義氏もロシアのプーチン大統領の友達になろうと必死です。確かに朝鮮半島を経由しない方が政治的問題はなさそうです。

でもシベリア、サハリン、北海道の間に電力の大消費地やグリッド化の対象となる人口稠密地域はありません。スーパー・スマートグリッドの効果が出せるのか不明です。

それはともかく、思い出すのは大昔の漫画です。

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朝日新聞に連載した4コマ漫画のフジ三太郎で、昭和40年代の作品に、こんな作品があります。著作権の関係で原紙はだせませんが、ロシア(当時はソ連)を大きなシロクマにみたて、その尻尾が樺太(サハリン)で、その下に北海道が繋がっている絵を出して、主人公の三太郎が「気に食わん」とつぶやいている図です。日本がソ連の尻尾の先っぼにぶら下がっている構図が良くないというもので、当時ソ連を礼賛することに余念がなかった朝日新聞の漫画とは思えない内容でした。

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これは、当時の社会党などが提案した、シベリアから電力を輸入して日本の電力不足を解消しようというアイデアについての漫画です。当時、日本は高度成長下で電力需要が増大し、一方シベリアでは安価な水力発電の電力が余っていたのです。旧ソ連は50Hzでしたからそのまま、東日本で使用できます。 直流の高電圧送電も超電導も無かった時代ですが、同じことを考えていた人がいるようです。

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しかし、その案は実現しませんでした。間宮海峡や宗谷海峡の海底に大電流の送電線を通す技術の問題もあったでしょうが、最大の問題は東西冷戦のさなか、東側から電力供給を受けるということが非現実的とされたのです。

では電力の売買が盛んな大陸諸国の場合、エネルギーを他国に頼って問題ないのでしょうか?

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すぐに思い出すのは、天然ガスのほとんどを、ロシアに頼っている西欧諸国の立場です。

数年前にクリミア半島の領有権をめぐって、ロシアとウクライナが激しく対立し、戦争になった時、ドイツをはじめとした西欧諸国はすべてウクライナを支持する側に立ちました。しかし、ロシアから天然ガスの供給のストップをチラつかされると、すぐにトーンダウンし、何も言わなくなりました。正義よりも天然ガスなのです。私にとっては、ロシアもウクライナももともとソ連であり、領有権争いでどちらが正しいのか分かりません。ウクライナも相当怪しげな国で、ソ連崩壊の時にいろいろなものをチョロまかしました。ロシアはウクライナに相場より非常に安い価格で天然ガスを供給していましたが、さらにその天然ガスを盗んでいたようです。そしてそのパイプラインの先にはドイツなどがあって、ガス供給の面で首根っこを押さえつけられていたのです。

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日本がもし、ロシア経由で電力を輸入することになれば、同じようにロシアに対して何も言えなくなります。日本の左派勢力や孫正義氏にはその方がいいかも知れませんが、ドイツの失敗を見ていた私には、馬鹿げた提案としか言えません。

風力発電設備や高電圧超電導送電線網に、日本が巨額の投資をして、そしてそれをロシアに取られてしまうこともありうるのです。

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そもそも、国際間の電力自由化とは何なのか? カナダと米国の例は参考になりません。私が考えるのは、欧州の例です。ドイツはフランスから大量の電力を輸入しています。

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デンマーク、スェーデン、フィンランド、ノルウェーの北欧4か国はノルドプールという電力の融通システムを築き、うまく運用しています。1990年代に、デンマークのユトランド半島とスカンジナビア半島が、橋で結ばれてから、このシステムは有効に機能しています。 一方、欧州でも英国の電力は自給自足です。だからEU離脱という選択ができたのです。

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エネルギー問題を甘くみてはいけません。EUの前はEC、その前はEECでしたが、その組織は第二次大戦後の欧州で化石燃料を有効かつ平等に供給するための存在でした。その中心国であるドイツは、原子力を嫌い、CO2排出を嫌っていますが、その結果、フランスの原子力発電の電力を大量に買い、そしてロシアから天然ガスを買い、笑いものになっています。

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北欧のノルドプールについても、原子力発電に対する各国の姿勢が異なることや、発電コストの差が問題になっています。決して容易なことではないのです。

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孫正義氏が、「これはモンゴルの風力発電で作ったクリーンな電力です」とPRしても、シベリアで、ロシアの原発で発電された電力にすり替わっているかも知れません。電気に色や香りはありませんから。

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モンゴルだって、ソフトバンクの風力発電所をいつ国有化宣言するか分かったものではありません。そして日本向けの電力価格を一挙に何倍にも引き上げるかも知れません。

そんな馬鹿な・・と思いますが、かつて私達が経験した石油ショックがそうでした。

エネルギー生産国の顔色を常に伺う時代が来るのです。

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さしあたっては、日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるった事件について、対応を慎重にすることでしょうね。モンゴルの人々のご機嫌を損ねては大変です。そのあたり、孫正義氏に抜かりはないでしょうが、相撲協会はちょっと心配です。


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