【 泣いて馬謖を斬る というほどでもない その2 】 [雑学]
【 泣いて馬謖を斬る というほどでもない その2 】
今、世の中のTV視聴者は、泣きながらの殊勝な記者会見の影響で、宮迫と亮を許す意見が多数のようです。私も涙に弱い方なので、彼らの会見に嘘はないだろうと思いますし、少し同情します。
一方で、芸人に闇営業を勝手にされて、反社会勢力と関係を持たれて、メンツを潰され、挙句に悪者にされてしまう吉本興行も悪玉とするのはかわいそうです。
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では、問題はどこにあるのか
もちろん、詐欺グループや反社会勢力が悪いのは当然ですが、ビートたけしが鋭い指摘をしています。
そもそも闇営業をしなければ生活できない吉本興業の契約はどうなんだろうね?
確かに正論であり、今の芸能界の仕組みに根本問題がありそうです。
しかし、経済の原則も考える必要があります。
人々は面白くもない修行中の芸人の芸にはお金など払いません。目に見える品物と違い、お笑い芸は、一流でなければまったく無価値なのです。漫才もプロスポーツも、エンターテインメントの世界は超一流のプレーヤーだけが、儲けを山分けし、2流以下は貧乏でも仕方ないのです。
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将来を期待して2軍の選手を養うのも企業経営の見識と言えますが、吉本興業の場合、所属する(自称)お笑いタレントはなんと6000人。一方、年間売上高は、500億円台。一人当たりの売上高でみると、1000万円にも届きません。売れっ子タレントに破格の報酬を払うとなると、残りのお金で駆け出しの芸人達に俸給生活者としての生活を保障することなどできません。そもそもハングリー精神の乏しいサラリーマン芸人など、一流の芸人になれるでしょうか?
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そしてビートたけしはもっと恐ろしいことを言っています。
・こうやってTVカメラの前で、真顔で涙を流したお笑い芸人の芸をこれから誰が笑ってくれるかね?
実は、それが大事なポイントです。宮迫も亮も引退するつもりはなく、これからもお笑いで生きていきたいようですが、それは無理なのではないか? 彼らの罪を世間が許しても、お笑い芸人には別の基準があります。 お笑いタレントは一度真面目になるともう元へは戻れないのです。
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昭和の話で恐縮ですが、一世を風靡したお笑いタレントでトニー谷という人物がいました。算盤を楽器替わりに鳴らし、独特のザンス言葉を話した漫談家で名司会者でした。その彼が、ある事件を境に、ブラウン管(古い表現です)から消えました。
その事件とは、彼の子供が誘拐された事件です。彼は全国放送のTVカメラの前で涙を流し犯人に向かって「子供を返してくれ」と訴えました。幸いにして、彼の息子はケガもなく、彼の元に帰りましたが、その日を境に、お笑い芸人としてのトニー谷は終わりました。
彼はハワイに移住し、静かに余生を送ったとのことです。
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涙を流して生き残ったお笑い芸人もいます。落語家だった桂小金治ですが、彼はワイドショーの司会者になり、泣きの小金治とか怒りの小金治と言われてお茶の間(これも古い表現です)の人気者になりましたが、落語家としては終わりました。
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親が死のうが、子供が誘拐されようが、失恋しようが、舞台の上やTVカメラの前では、笑って朗らかにしていなくてはならない残酷な商売がお笑い芸人です。
しかし、生きていれば、悲しみや辛さをTVカメラの前にさらさざるを得ない時もあります。ひとつの巡り合わせとして、そうせざるを得ない立場になったら、潔く涙を流し、そして潔くお笑いの世界を去りましょう。まだ若いのだから、新しい道にも進めます。。
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自分にはお笑いタレントしかできない・・などと甘えたことを言わずに新しい道を切り開いてもいいのです。世の中のサラリーマンには、そうして新しい世界に飛び込んでいく人が多くいます。
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私が宮迫や亮だったら、吉本の社長にこう言います。
・ご迷惑をおかけし申し訳ありません。責任を取って辞めます。吉本には反社会勢力と関係を持ったら引退する不文律があるので、それに従い、別の道に進みます。しかし、私たち2名以外の若手芸人については、処分を勘弁してください。
いずれ、詐欺被害者や世間の皆様にもお詫びする機会があれば・・と思いますが、今会見すれば、言い訳や弁解になりかねないので、引退後、時期をみて行います。会社にはこれ以上のご迷惑はおかけしません。
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もし、潔くそう語って、会社を離れられる人物なら、きっと別の世界でやり直せます。今回の件は小さな躓きだったと、後で笑えるでしょう。
しかし、吉本が提案した処分撤回に喜んで飛びつき、再びお笑い芸人に戻ろうとしても、こちらは多分うまくいかないでしょう。おそらく2流のままで終わるでしょう。
お笑い芸人が、公の場で泣いてしまうというのは、そういうことだと私は思います。
以上
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