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【 北海道のブラックアウト その1 】 [雑学]

【 北海道のブラックアウト その1 】

 

いささか旧聞ですが、朝、5時台のTVのニュースで、北海道の地震を伝えていました。寝ぼけ眼で考えます。そういえば、その昔も朝起きたら大地震のニュースをしていたことがあったなと思いだします。あれは阪神淡路大震災の時でした。

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「今度は北海道・・・か。胆振が震源地というが、十勝にいる長男の辺りは大丈夫かな?」

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メールで地震の被害について尋ねると、すぐに返信が来て、「揺れの被害はなかったけれど、停電が続いているので困っている」とのこと。停電中ならスマホの充電も難しかろう。あまりメールのやり取りもしない方がいいだろう・・と思い、「生きていればOK」と7年前のメールを再送して通信を終えました。大した地震ではなかったのかな?

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実際には、この地震では震度7の地域もあり、多くの人命や財産が失われ、社会インフラも大打撃を受けたことが、後でだんだん分かってきました。その中で大きな問題として浮上したのは、停電からの復旧が遅れたことと、インターネットや携帯電話の回線がなかなか元に戻らなかった事です。

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北海道は、大地震が多い土地です。十勝沖地震だけでも数十年おきに発生し、大きな被害をもたらします。しかし、前回(2003)までの十勝沖地震では停電問題はそれほど深刻ではなく、通信途絶も大きな問題ではなかったと思います。(当時はスマホなどありませんでしたが)。

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そこで今回は、停電と通信途絶の両方から、今回の大震災を考えてみたいと思います。まず停電問題です。

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一つの発電所のトラブルが、他の発電所のトラブルを招き、連鎖的に発電所が停止し、その結果広範囲にわたって停電が発生する事態をブラックアウトというのだそうです。

米国では、複数の発電所の連鎖的トラブルで、広範囲な停電が発生していましたが、それをブラックアウトと呼ぶとは知りませんでした。夜間なら照明が消えるから確かにブラックアウトだけれど、昼間でもブラックアウトなのかな?とくだらないことを考えます。

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アメリカでブラックアウトが発生するのは、電力需要に対して発電能力がギリギリで余裕がないからです。製造業では、在庫を持たず、必要最小限の設備で必要量だけを生産するリーン生産方式が最も低コストとされます。代表的なものはトヨタの看板方式です。電力会社の場合も、新しく発電所を建設するとなると莫大なコストがかかるので、既にある発電所をフル稼働させて需要を賄う方が合理的で安価です。しかしフルに発電しても足りないという場合も生じます。その場合は、近隣の発電所から臨機応変に電力を融通してもらって対応します。そのネットワークこそがスマートグリッドで、電力コストの低減に役立っています。AIを使って、電力需要予測を精確に行い、そして発電所のネットワークをどう運用すれば最適かを判断する訳です。しかし余裕がない・・という実態は変わりません。しばしば破綻をきたします。

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つまりリーンなシステムはロバスト(堅牢)ではない訳で、ひとつ発電所が停止すれば、電圧と周波数を維持できなくなって連鎖的に発電所が停止し、ネットワーク全体がダウンするのです。この典型的な例はカリフォルニア電力危機事件です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8D%B1%E6%A9%9F

(この事件では単純ではなく、エンロンの電力価格吊り上げや架空売り上げなどのスキャンダルも原因です)

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今回の北海道の大停電は、だいぶ事情が違います。道内の消費電力の半分近くを賄っていた、苫東厚真の火力発電所が、緊急停止したことが直接原因で、連鎖反応的な発電所トラブルによるブラックアウトとは微妙に違いますが、発電余力が無かったという点は共通です。

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https://toyokeizai.net/articles/-/236938

そもそも論ですが、北海道電力に余力が無いというのは意外でした。本州と北海道の間には北本連系という、電力を融通しあうシステムがあります。これは東日本大震災以降の原発停止で電力不足の懸念がある本州に、余力のある北海道側が、電力供給するのが目的でした。海底送電線ケーブルを使い、たしかその能力は60KWでした。しかし、今回は苫東厚真の停止で、本州側から電力を融通しようとした訳で、全く逆でした。そしてその電力供給に失敗したのです。

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ご存知の方には当たり前の話ですが、大電流を長距離送電する場合は、直流送電の方が有利です。長い送電線とアースが一つの巨大なコンデンサーを構成するため、交流だとインピーダンスのロスが生じるからです。だから、北本連系では直流送電を行います。しかし、発電所側も需要家側も交流ですから、入り口と出口でサイリスターによる交直変換が必要となります。今回の大地震では、北海道側でサイリスターを駆動する電力が停電で失われたため、使えなかったのです。電力不足に対応するための融通装置なのに、停電すると使えなかったのです。何だか停電で緊急炉心冷却装置が動かず、メルトダウンした原発に似ています。

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今回は間に合わなかったのですが、北本連系には、能力増強の予定があります。青函トンネルを使ってさらに30KWの容量を追加するのです。しかし私に言わせれば肝心のサイリスターやインバーターの電源が無ければ無意味ではないか?ということです。

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せっかく、北本連系を強化するなら、もっと先進的な試みをすべきです。青函トンネル本坑ではなく、現在使われていない先進導坑を全面的に使い、最新の超電導ケーブルを使って、電力ロス無しの大電流送電を実現すべきです。もちろん、超低温を維持するための冷却装置は必要ですが、技術的には確立しています。突発停電に対処するには、超電導コイルに電気を蓄えるSMESを使用すればOKです。なぜ、電中研や各電力会社はそれに挑戦しないのか?

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しかし、北本連系はともかく、根本的な問題は、発電能力の絶対的な不足です。

 

それについては次号で管見を述べます。


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