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【 なぜテニュアトラックを活用しないのか その2 】 [政治]

【 なぜテニュアトラックを活用しないのか その2 】

 

テニュアトラックとは、博士号取得後5年以内の若手研究者を対象に、5年間、研究の機会と俸給を与え、期間終了時に、その成果を評価し、無期雇用の大学教員のポストを与えるシステムです。大事なことは、成果の評価を可能な限り、公明正大に行うことです。

詳しくは下記をご覧ください。

http://www.jst.go.jp/tenure/sympo.html

この制度を採用している大学には、日本を代表する有名大学もありますが、その人数枠は少なく、どちらかというと、知名度は低いけれど知る人ぞ知る優れた研究をしている玄人好みの大学が多く参加しています。

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現在、複数あって、その条件・内容が統一されていないポスドクの制度や、大学毎に異なる教員採用の手続きを統一して、数多くの博士に平等に機会を与え、日本の大学教員の質を高めるには、テニュアトラックは最も適したシステムだと、私は思います。

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大学教員だけではありません。前回、紹介しました理化学研究所をはじめ、独立行政法人となった多くの国立の研究所もテニュアトラックを採用すべきだと思います。そうすれば、理研の松本理事長などが、いちいち任期制研究員のことで悩まなくてもよいのです。

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大学教員や研究所の研究員の質が揃えば、大学間、大学と研究所間の人事交流もしやすくなります。もしテニュアトラックの審査を通らなければ、早めに研究員の道をあきらめ、方針転換することが可能です。ちょうど将棋連盟の奨励会を突破できなかった人が、別の分野に進むようなものです。

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テニュアトラックで実績を積んだ研究者がどんどん大学に入ってくれば、それまで無期雇用のポストにいた教官が席を失うという問題が発生します。ではどうすればよいのか?

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ここで考えるのは、研究業務と教育・指導業務の分離と、人材の割り当てです。

前回、申し上げましたが、米国の大学は研究型と教育型に分かれ、特に全米にある州立大学は主に教育に力点を置いています。日本の大学は、一つの大学が研究と教育の両方を行い、両者は車の両輪になっています。

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自然科学の場合、研究者が最も脂がのっていて、バリバリ研究できるのは、20代後半から30代後半ぐらいまでだそうです。30代の初めにテニュアトラックを通過し、新進気鋭の研究者として、研究に従事したあと、40代の半ば以降は、教育に専念するという道があります。ひとつの大学の中で、そういう役割分担ができれば、人事の停滞や閉塞感は解消できます。勿論、先生方には反論もありましょう。生涯現役の研究者でいたい・・・という方も多いでしょうが、そこはどう考えるかです。

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プロのスポーツ選手やプロの棋士は、自分で引退時期を決める場合と、あるシステムに従って引退する場合の2種類がありますが、引退後に後進の指導者や監督として成功する人も多くいます。将棋連盟のプロ棋士がフリークラスになったり引退しても、街の将棋道場でアマを教えることは可能ですし、そちらで才能を発揮する人もいます。それと同じように、研究者が教育者に転じるコースも整備すればいいのです。

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博士号を取得した人達は、単なるインテリではありません。知的生産業務に於いて、優れた能力を持つと証明されたエリートであり、そして彼らの教育には多くの国費が注がれている訳です。彼らを有効活用しなければ、国家の損失です。特にこれからの日本の成長は、創造型の産業が支えることになり、科学技術の革新が不可欠です。もはや独自技術なしで、単に大量生産でコストをさげて勝負する工業製品では、アジア諸国に適いません。そういう時代ではないのです。だから、街と大学に溢れる博士たちを活かす方法を考える必要があると思うのです。 その最初のシステムはテニュアトラックだと私は思います。


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