【 執務空間 その3 在宅勤務と書斎 】 [鉄鋼]
【 執務空間 その3 在宅勤務と書斎 】
政府は、「働き方改革」を訴え、Work Life Balanceの見直しを訴えていますが、本当に政府が真剣に取り組んでいるのか、ちょっと疑問です。「働き方改革担当」の担当大臣に誰をあてるかでそれを占えますが、加藤勝信氏ではちょっと軽いというか、力不足です。やっていることと言えば、残業時間を減らして自分の生活に使う時間を増やせ・・と言うばかりで、具体的な方策については、企業に丸投げです。
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本来なら、もっとふやせるはずの在宅勤務を奨励し、無駄な通勤時間を減らしたり、自宅での子育てを可能にしたり、お年寄りの介護に充てる時間を確保するように働きかけるべきです。
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待機児童対策(不思議な言葉です。対象は児童=小学生ではなく、園児=保育園児、幼稚園児のはずですが・・)だって、保育園の建設や保育士の増員だけでなく、親が自宅にいられる時間を確保する事も大切なはずです。
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簡単な事ではありませんが、在宅勤務が可能になれば、介護離職というつらい選択もある程度防げるかも知れません。
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朝の交通機関の通勤ラッシュも軽減できます。在宅では会社の業務に集中できないから生産性が下がったり、家事もするから正味の勤務時間が減るし、更には残業が減るので、収入が減るという意見もありましょうが、対策は可能です。企業側は、通勤手当を削減でき、事務所の維持費も削減できますから、その分を社員の給与に回すことが可能でしょう。
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在宅勤務の奨励で見えてくるのはいいことばかりです。会社の狭い机から解放されます。 一方、社会の消費構造も大きく変化するでしょう。
ビジネススーツや革靴、ネクタイは売れなくなるかも知れません。在宅勤務のTV会議で、上半身だけがカメラに写る場合、テーブルの下はパジャマでもよいのです。
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都心の飲食店のお客も減ります。 ラッシュアワーの通勤客で稼いでいる鉄道会社にも大打撃ですし、駅前商店街の売れ行きも減るかも知れません。でもお客が集中するピーク時間帯がなくなり、ゆったりとした買い物が可能になるでしょう。
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そして在宅勤務が増えれば、住宅の質と構造も変化します。
従来の戸建て住宅は、使い易いキッチンや、バスルームを売り物にしていました。夫よりも家の中で過ごす時間が長く、キッチンを仕事場とする主婦の発言力が強く、主婦の歓心を買うことが住宅メーカーにとって重要だったからです。
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これからは違います。在宅勤務で自宅を仕事場とする夫は、書斎を要求します。使い易く、居心地がよく、TVスタジオとしても使える書斎が必要となるのです。 在宅勤務でTV会議をするとなると、自分の後ろの風景も映ります。ちょっと立派な本棚に専門書や教養書を並べて、TV映りを良くする工夫も必要です。(最近はインスタ映えと言うそうですが)。
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では以前の住宅の書斎はどうだったのか?住宅を設計する際、夫の書斎(というか勉強部屋)は、優先順位を一番下にされます。 実際、働き盛りの夫は、普段はあまり家にいないので立派な書斎は宝の持ち腐れだからです。
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一方、定年などのリタイヤを機に、マイホームを新しく持つ人もいます。こちらは一家の主として社会的地位もそれなりにありますし、子供部屋も必要ありませんから、書斎を要求できる立場になります。そこで、書斎を作り、立派な机と椅子を入れます。
でも今度はそこで行う仕事がありません。 のんびりと本を読むか、Facebookに投稿するぐらいしかありません。
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Oヘンリーの短編小説ではありませんが、必要な時にはなく、不必要になってから手に入る・・・というのが、男の城である書斎でした。でもこれからは書斎が本当の仕事場として意味を持ち、重視される時代が来ます。
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繰り返しになりますが、在宅勤務も捨てたものではありません。
しかし、それらは、都会の事務所に勤務する非メーカーのホワイトカラーの場合です。メーカーの場合はどうなのか? 最初に紹介した製鉄会社の場合はどうなのか?
それについては次号で報告いたします。
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