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【 DDH184 その3 】 [広島]

【 DDH184 その3 】

 

ヘリコプター搭載型護衛艦「かが」の見学では、最初に甲板下の大きな格納庫に入り、そこから、せり上がり式の大型エレベーターに乗って、甲板に上がります。太い4本の鋼索を油圧モーターが巻き取り、広い床が持ち上がると、見学者は驚きの声を上げます。誰だか知りませんが、中年の男性がサンダーバードのテーマ音楽を口ずさんだりします。

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「しかし、この広さではV22オスプレーの昇降には使えませんね?」と案内役の士官に尋ねると、彼はニコリとして「これはヘリコプターや重機用です。 オスプレーだけでなく、F35Bにも使えません」 

私は、「それにエレベーターが甲板の中央部にあるのは、まずいのでは? 火災を起こした航空機をすばやく海中に投棄するには、舷側にエレベーターがある方がいいと思います」と、生意気にも、ミッドウェイ海戦の記録を持ち出して、意見を言うと、彼は「そうです。実は大型のエレベーターは右側後方の舷側にあり、オスプレーやF35Bも使えます。後でご覧になるといいですが、今日は公開していないので、近寄ることはできません」

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私は、「するとF35Bを乗せる為に、後は、甲板を耐熱仕様にすることと、邪魔になるCIWSファランクスを移設するぐらいですか?でもエレベーターから見えた甲板下の構造を見るとカタパルトを設置する余裕はなさそうですね」

士官は「カタパルトの予定については聞いていませんが、確かにF35Bの運用は、小規模な改造で対応できます」

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そこで私は説明役の士官と別れたのですが、不思議に思える点は残ります。

本格的な空母にするには、収容できる機体の数を増やす必要がありますが、空間が足りません。それに離発艦を頻繁に行うには、エレベーターが1基では足りません。

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やはり、固定翼機が離発艦可能な艦というだけで、空母として運用するには非力すぎるのでは? でも本格的な正規空母を持っているのは、現時点では米国だけですし、日本に正規空母が必要とも思えません。

しかし、そこで思い出すのは英国とアルゼンチンが戦ったフォークランド紛争です。

1980年代、南大西洋の孤島であるフォークランド諸島(マルビナス諸島)の領有権を争って、両国が戦争をした訳ですが、結果は英国の一方的な勝利でした。

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もともと英国が占有していましたが、それを不当とするアルゼンチン軍が、同島を急襲して、一度は占領に成功したのですが、やがて駆けつけた英国軍によって奪還され、アルゼンチン軍は降伏したのです。

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英海軍には、小型で老朽化した空母2隻がありました。空母「インビンシブル」と「ハーミス」です。情けないほど貧弱な2隻ですが、その2隻と他の輸送艦にVTOL戦闘機シーハリヤーを積んで、おっとり刀で、フォークランドに向かったのです。

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アルゼンチンにも航空機を搭載し離発艦できる艦があることはあったのですが、機械の故障で動かなかったり、外洋を遊弋する英海軍の原子力潜水艦が怖くて、出撃できなかったのです。 実際、巡洋艦「ヘネラルベルグラーノ」は英潜水艦「コンカラー」によって撃沈されています。

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ハリヤー/シーハリヤーはVTOL(垂直離着陸)できることだけが取り柄で、速度も遅いし、燃費も航続距離も劣る戦闘機ですが、作戦空域の至近の位置から発艦できる点が有利です。

付近の艦艇からの情報の支援も得られます。

アルゼンチン軍のシュペールエタンダールやミラージュは、本国から長距離を飛行してやっと作戦空域に到達する訳で、作戦空域に滞在できる時間はごく短時間です。

地上からの支援も得られません。パイロットの疲労も無視できません。

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結果はほぼ一方的に英国のシーハリヤーの勝利でした。そしてその結果が、戦争の帰趨に影響したのは間違いありません。

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同じことは太平洋戦争でもありました。 日本海軍はミッドウェイ海戦、珊瑚海海戦、レイテ沖海戦などで、どんどん空母を失い、その結果、本来艦載機であるゼロ戦は地上の基地から出撃するようになりました。 幸か不幸か、ゼロ戦には長大な航続距離があり、遠隔地への攻撃を可能にしたのですが、パイロットの疲労や航法技術の問題もあり、犠牲は増える一方でした。 ゼロ戦が勝てなくなった理由は他にもありますが、やはり、艦載機は空母から出撃する方が効率的で強いのです。

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話を現代に戻します。

今、中国は尖閣諸島だけでなく、八重山群島の奪取も視野に入れて軍事作戦を準備しています。そして驚いたことにその作戦を口外して憚りません。

一方、専守防衛を前提とする海上自衛隊は一旦占領された後の離島奪還作戦を考えるしかありません。その際に、フォークランド諸島の奪回に成功した英国海軍のオンボロ空母「インビンシブル」と「ハーミス」の役割を考えます。

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DDH「かが」と「いずも」は、小型ですが、「インビンシブル」や「ハーミス」よりは強力な空母です。F35Bはシーハリヤーの後継機であり、海上自衛隊がいつかは欲しいと思っていた航空機です。 「かが」と「いずも」とF35Bの組み合わせは、「インビンシブル」「ハーミス」とシーハリヤーの組み合わせの、21世紀版です。

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当初、日本は新型戦闘機として航空自衛隊用のF35Aだけを考えていたとされます。そして既にF35Aは導入されつつあります。 F35Bについては、当初、予定に無かったのに、トランプ大統領が安倍首相を「米国製兵器をもっと購入しろ」と恫喝して、急遽調達が決まった・・とされます。

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しかし、それはどうでしょうか? 多分、国内外を欺くための、嘘というかパフォーマンスでしょう。自衛隊が離島奪還作戦を本格的に考え出したのは、尖閣諸島付近での中国偽装漁船の衝突事件あたりからです。そして(F35Bを念頭に置いた)「いずも」や「かが」の建造計画も早くから決まっていました。

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「本当はずっと前から、海上自衛隊はF35Bの運用を考えていたのではないですか?」そう質問しようとして振り返りましたが、先ほどの自衛官は、既に風のように消え去り、甲板の上には見当たりませんでした。


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