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【 モンゴルのウィンドファームとスマートグリッドと日本 その1 】 [雑学]

【 モンゴルのウィンドファームとスマートグリッドと日本 その1 】

 

孫正義氏が、モンゴルから電線を引いて電力を日本に供給するプロジェクトをまじめに考えているようです。

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00399340

最近、米国の電話会社Sprintの処分に困り、ドイッチェテレコムの子会社と合併させようとしたり、疑問符が付く経営判断が続いていますが、これも、少し理解に苦しむプロジェクトです。

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なんでも商社の冷鉄源(つまりスクラップ)担当だった人の意見を取り入れてプロジェクトを開始するようですが、私に言わせれば、何を今更・・と言いたくなります。

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このアイデアとは、モンゴルの広大な平原に20万ヘクタールの土地を確保し、大型の風力発電の鉄塔を並べて、合計700KWトの発電所を建設するというものです。さらに、そこで発電した電力を、送電線を通して日本まで運び、消費者に供給しようという計画です。

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このプロジェクトを、私の拙い知識で判断するなら、技術的には可能。だが地政学的・政治的には論外で不可・・・となります。以下にその考え方を書きます。

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モンゴルは土地代が安く(そもそも社会主義国で、遊牧の民が暮らす国ですから、地価というものがあるのか?)、100年分の使用権を購入するとしてもそう高くはないでしょう。草原で安定した風が吹く場所なら、風力発電には好適でしょう。風力発電は、昼夜を問わず発電しますし、安定した風が得られるかが鍵ですが、それに成功すれば、かなり理想的な発電手段です。(低周波騒音とか、渡り鳥の衝突などの問題はありますが、モンゴルでは問題になりません)。

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ソフトバンクエナジーはモンゴルに合弁会社を設立し、既にモンゴル国内での消費を前提にして、5KWの風力発電を開始しており、そこでノウハウを蓄積した後、日本向けの700KWプロジェクトに着手するのだと思います。

https://www.kankyo-business.jp/news/015800.php

では問題は、モンゴルで発電した電力をどうやって、日本に運ぶか・・・です。

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外国で発電した電力を、電線を介してそのまま日本に運ぶのがいいのか、それとも電気の缶詰と呼ばれるアルミやマグネシウム、チタンといった金属で運ぶのがいいのか?あるいは電池で運ぶのがいいのか? ここは議論が分かれるところです。それについては別稿で考えますが、とりあえずは送電することを考えます。

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普通の送電線を用い、従来の方式で2点間の送電を考えた場合、距離が長くロスが多すぎて話になりません。日本に着いた頃に、どれだけ歩留まりがあるのか?心配です。 新開発の超電導の送電線を活用する方法はありますが、大電流・高電圧(275000V)での超電導送電線の実績は、日本でも数Kmしかありません。 本当にものになるのか?孫氏らが考えたのはスマートグリッドの活用でしょう。今回は特別にスーパースマートグリッドという言い方をしています。 スーパー? スーパーが付くと、何か変わるのでしょうか?

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スマートグリッドという電力網は、発電所への設備投資を最小限にとどめる仕組みで、米国で実用化されていますが、かつてはしばしば、この理論が破綻して大規模停電に見舞われていたのはご承知の通りです。 でもアメリカの広大な大陸を、文字通り網の目状にカバーする電力供給システムにスマートグリッドは向いています。そして送電ロスを最小化する方法でもあります。

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スマートグリッドでは、発電拠点と消費地が離れていても、その電流がそのまま届くのではなく、ネットワーク全体で電力を融通しあうので、距離によるロスを最小限にできると考えられます。日本とモンゴルの間には、中国、北朝鮮、韓国があり、それぞれに送電ネットワークがあり、それを有効活用できれば、ロスが減らせるはずですが、でも地形的にグリッド化が本当に有効かどうか不明です。

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そして中国や北朝鮮、韓国の既存の送電線は当然ながら超電導ではなく、おそらくは旧式の低電圧用のものでしょう。それに、失礼ながら盗電の可能性も高いのです。

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しかし、国境の壁を廃し、新たに送電網を築き、要所要所に超電導の送電線を作れば、それらの問題は全て解決し、高性能なグリッドができます。特に朝鮮半島と日本の間の海底送電ケーブルは、超電導にすべきでしょう。 その場合の問題はコストと政治力です。

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送電方法は直流高電圧となります。交流の場合、長大な送電線は、アースとセットで一つの巨大なコンデンサーを構成します。つまりインピーダンスができる訳で、それが送電ロスとなります。 電流は送電線を流れるが、エネルギーは、その周辺の空間をポインティングベクトルとして流れる・・と考えれば、よく理解できます。 だから直流送電の方が適しています。その直流ですが、昔は、直流で高電圧を作ることはできませんでした。でも今は可能です。 大昔、エジソンが提案し、そして論争で敗北した直流の時代が近づいています。

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大規模風力発電がモンゴルに適していることや、スーパー・スマートグリッドと直流送電や超電導送電技術の発展を考えると、孫氏の野望は決して非現実的ではありません。技術的には可能でしょう。費用面に懸念すべき点はありますが、本質的な問題にはならないでしょう。

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でも本当の問題は、全く別の次元にあります。具体的にはエネルギーの安全保障問題です。

エネルギー供給を外国に頼ることがいかに危険かについて、外国の実例を挙げて、議論しますが、それについては、次号で述べます。


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