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【 神戸製鋼について思うこと その5 】 [鉄鋼]

【 神戸製鋼について思うこと その5 】

 

以前、大手鉄鋼メーカーの社長と会長を経験されたOさんにお会いしたことがあります。その方の持論では、「日本の高炉メーカーは多すぎる。経産省もそう考えているし、近い将来、鉄鋼メーカーの経営統合はさらに進むだろう。手始めに、日新製鋼は新日鉄住金の子会社になるだろうし、最終的には新日鉄住金とJFEが合併し、他の国で実現している、11社の時代が来るだろう」とのことです。その直後に日新製鋼は新日鉄住金の子会社になり、社長には柳川さんが就任しました。

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オヒョウが、欧州に駐在した1990年代の後半は、欧州で鉄鋼メーカーの合併が急速に進んだ時期です。 かつてティッセン、ヘッシュ、マンネスマン、クルップ他、多数の有力企業が存在したドイツでさえ、瞬く間に大手鉄鋼メーカーはティッセン・クルップの1社に統合されました。

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それでも国際企業に発展した、アルセロール・ミッタルやタタグループに比べれば小規模です。当時、1000万トンクラブと言われ、年間の粗鋼生産量が1000万トンの規模でなければ生き残れないと言われましたが、今は3000万トンクラブの時代です。

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Oさんがおっしゃる通りだと思った訳ですが、では孤高の存在でとどまる神戸製鋼はどうするのだろうか?と私は思いました。

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神戸製鋼は新日鉄や住金(当時)と株式の持ち合いをして、一応新日鉄グループに属し、両者とは緩い付き合いをしていましたが、それなりに独自性を維持していました。

同社には建設機械や非鉄の事業部があり、鉄鋼業界の好況不況の波の影響を受けにくかったことや、規模が小さいために経営統合してしまうと埋没する恐れがあったからと言われています。

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製品構成としては、好不調の波が激しいシームレスパイプは持たず、安定的需要がある自動車薄板や厚板の割合も小さいのです。一方で線材条鋼では独自の地位にあり、自動車薄板でも他の追随を許さない特殊な超ハイテン材を製造します。

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日産にカルロスゴーンが来て、鋼材の調達先を絞り込もうとした時、この超ハイテンがあったため、神戸製鋼を切ることができませんでした。

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Oさんは神戸製鋼については説明されませんでしたが、「企業の経営統合は、何等かのきっかけがあれば、急速に進む」と言われました。 JFEの誕生も新日鉄住金の誕生も、日産のゴーンショックがきっかけとも言えますし、今回の神戸製鋼の不祥事は、同社が独立して生き残ることを断念させるきっかけになるかも知れません。

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唐突ですが、いしかわじゅんの漫画に「そうよ、みんなきっかけを待っているのよ!」と若い女性が叫ぶ場面があり、その意味が分かりませんでした。しかし、暮らしていると、確かにきっかけさえあれば・・・という場面によくでくわします。

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今回の不祥事が同社の損益にどのような影響を与えるかは不明です。足元は鉄鋼事業も建機事業も非鉄事業も好調で、経営は順調です。タカタのような巨額の損失や債務超過という事態は考えにくいところです。倒産の可能性はまずありません。しかし取引先から巨額の賠償を求められる可能性はあり、顧客も相当失うでしょう。

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最も懸念されるのは米国政府の判断で、彼らは悪意が認められる行為に対しては懲罰的な巨額の課徴金を科しますが、それはしばしば企業の存続を危うくします。

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信用収縮という言葉は、普通は金融上の言葉として用いられますが、神戸製鋼の場合は、技術・品質面での信用収縮が急速に進行しています。

同社では取締役・役員級も不正を知り、これを黙認していたことが判明していますから、経営陣の退任は免れません。 経営陣を総入れ替えとなると、他の製鉄会社と合併する方が早そうです。

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そうなると、企業の生体解剖が始まります。大手企業が経営破綻すると、その中の優良な事業部門を、ライバル企業などが引き取って存続させますが、元の会社はバラバラになります。それをオヒョウは、「企業の生体解剖」と呼びます。例えば、新潟鉄工やサンヨーがそうでした。シャープもそうですし、東芝も解剖台の上に既に上がっています。

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神戸製鋼の生体解剖が始まるかどうかは分かりませんが、始まった場合の展開はそれなりに予想できます。

 

それについては次号で申し上げます。


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