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【 時速350kmの持つ意味 その3 】 [鉄道]

【 時速350kmの持つ意味 その3 】

 

中国上海の浦東空港と都心龍陽路を結ぶリニアモーターカーは、ドイツのトランスラピッドを実用化したものです。その建設工事で、購買担当者が勝手に電線ケーブルの仕様を変更して安物のケーブルに置き換えました。やがてそのケーブルは燃えだし、ドイツ人技術者は怒りまくり、元の仕様のケーブルに戻させるという出来事がありました。リニアが開業する直前の頃の話です。

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しかし、実は購買担当者が勝手に規格や仕様を見直し、安価品に切り替えるというのは、中国ではごく当たり前のことなのです。その差額は自分の懐に入れる訳で、そうやって副収入を得るというのは購買担当者の才覚のように言われます。つまり悪いことではなく、要領の良さとして、プラスに評価するのです。

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この悪しき習慣は中国人のモラルの低さを示すと同時に、中国製の全てのものの信頼性を下げる理由になっています。無論、高速鉄道を建設する場合にその悪しき習慣は駆逐されたはずですが、未来のことは分かりません。

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ある事業が始まって一定期間が経つと、必ずランニングコストの低減を求められるのが世の常です。これは日本も同じです。特に営業赤字が累積する事業ではそうです。

中国の場合、国有鉄道の累積赤字または有利子負債は邦貨換算で80兆円と言われていますが、実はずっと多いと思われます。

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中国の鉄道は、かつての日本の国鉄と同じように、建設は政治が判断し、建設費も国が負担する仕組みで、運行する事業会社は営業損益だけに責任を負います。営業損益だけで累積数十兆円(有利子負債額とイコールではありませんが)であれば、建設費の分も載せると、百兆円をはるかに超えると思われます。これはいかに経済大国の中国といえども、許容できる金額ではありません。

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中国は高度成長の過程で、全ての予算が膨らんでいます。高速鉄道、高速道路、空港といった目立つ交通インフラ、高層ビル群、海軍、空軍の武器・兵器、宇宙開発といった国威発揚に役立つ目立つ分野に加えて、AI研究投資、アフリカ諸国へのODA等も、日本をライバル視したこともあり、増える一方です。

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GDPや税収の伸びが鈍化した後も、これらの予算は増える一方で抑制が効きません。

左派系のマスコミは、日本こそが先進国中で最も借金が多い財政破綻国家だと言いますが、中国はその上を行く借金大国のはずです。中国政府はその数字を明らかにしませんし、日本のマスコミはそれを報道しませんが・・。

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しかし、中国は日本以上の速度で少子高齢化が進み、近い将来、経済の縮小期に入ります。その段階で、膨大な高速鉄道の赤字を放置できるとは思えません。

人口が希薄な西域の砂漠地帯に、誰も乗らない超特急を走らせ続ける道楽は、中国といえども無理です。

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日本では、東海道新幹線が開業した昭和39年に、国鉄が赤字に転落しました。その後、赤字は雪だるまのように膨らみ続けましたが、一方で政治による赤字新線の建設が続きました。 そして有利子債務が累積で2兆円に達した時点で、分割民営化が断行されました。

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しかし、中国では、政治的理由から赤字の国営企業の分割民営化は難しいのです。鉄道に限らず国営企業の非効率と赤字は、中国の宿阿と言うべき問題なのですが、遅々として改革は進みません。それに分割となると、中央集権化によって地方閥を潰そうとする習近平政権にはできない相談です。

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そうなると、中国の鉄道は赤字を膨らませながら突っ走るしかありません。そこで無言の圧力として現場にかかるのはコストダウンの要求です。 より安価なボーガスパーツへの切り替え、保全作業の手抜き等の誘惑にかられます。 その一方で高速化を進める訳で、高速鉄道の安全が担保されるか・・・私には疑問です。

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高速化による老朽化加速・延伸による赤字の増大

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交換部品の安価品への切り替え、作業の手抜き。

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事故の多発

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信用失墜

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旅客離れ

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赤字の増大

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という悪循環が火の車のように回りながら転がり落ちていきます。宇治拾遺物語では、地獄からの迎えである恐ろしい存在として「火の車」が登場しますが、高速鉄道の延伸と高速化に伴う中国鉄道の「火の車」は、中国経済にとってまさに恐ろしい存在です。

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でも、中国人ならこう言います。

「なあに、中国では、高速鉄道や劉志軍のずっと前から鉄道は『火車』だよ」


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