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【 フリーゲージトレインの挫折 その3 】 [鉄道]

【 フリーゲージトレインの挫折 その3 】

 

遠隔地を結びつける事が鉄道の使命なのに、あえてゲージを変えて不便にするなんて愚かさの極みだと思うのですが、世の中にはさまざまなゲージの鉄道があります。

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有名なシベリア鉄道やスペインの鉄道の話は既にしましたが、それらは国防上の理由で敢えてゲージを変えたとされています。しかし、島国日本の中で、何種類ものゲージがあるのは愚かさ以外の何物でもありません。

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その問題を解決する手段の一つがフリーゲージトレイン(FGT)でした。 JR西日本は九州新幹線長崎ルートのFGTについては冷淡でしたが、じきに自分の問題として向き合うことになります。 北陸新幹線の敦賀以西の区間については、ルートは決まりましたが、運行方式には未確定の部分が残ります。暫定的あるいは恒久的にFGTを活用するという選択肢もあったのですが、今のままでは難しいところです。

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佐賀県や新潟県で見られた地域エゴというか、分担金不払いの問題は、今後も起きるでしょうし、北陸新幹線の残りの区間(敦賀=大阪)を、全線フル規格で同時に完成させるのも難しいでしょう。 そしてリレー方式もなるべく避けたいのです。FGTという選択肢をつぶしたことをJR西日本が後悔する日が来そうです。

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様々なゲージが混じっているという点では日本の首都圏の鉄道が最悪です。(関西も似たようなものですが)。その首都圏でも、もっともひどいのが、都営地下鉄です。標準軌の浅草線や、狭軌の三田線などに加え、京王電鉄と相互乗り入れするために、中間軌(鉄道馬車や都電の線路)の新宿線や、リニア駆動式の大江戸線まで持っています(大江戸線は線路幅としては標準軌を採用)。

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その首都圏で、FGT採用の可能性がうわさされています。それは狭軌である東急と標準軌である京浜急行の相互乗り入れで、京急蒲田駅とJR(東急)蒲田駅をつなぐという計画です。

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京浜急行の羽田空港線は同社のドル箱路線です。かつて京成電鉄が成田空港に路線を延ばした時に、長く赤字で苦しんだのとは大違いです。その京浜急行の一人勝ちを眺める東急は、悔しいに違いありません。東急グループは航空事業に早くから取り組んだ会社です。日本航空に吸収される前の日本エアシステム(東亜国内航空)は東急グループに属していました。

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狭軌の鉄道を持つ東急グループもぜひ羽田空港のターミナル駅に乗り入れたい訳ですが、それには東急/JRの蒲田駅と京浜急行の蒲田駅を結ぶ線路(つまり蒲蒲線)と、京急の標準軌の線路を使ってターミナルに乗り入れる工夫が必要なのです。

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そこで蒲蒲線にゲージ切り替え区間を設け、FGTを走らせようというアイデアが登場し、一部の鉄道ファンの間で盛り上がっています。しかし、これがうまくいくかは不明です。

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現在、利益を独占している京浜急行が簡単に応じるかは分かりません。そもそも、京浜急行とJRや東急は、鉄道車両設計の思想が全く異なります。両社が協力して技術開発するかは不明です。

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FGT以外にも方法はいくつかあります。

・成田空港方式:もともと複線用の空間に、京成電鉄(標準軌)とJR(狭軌)が1本ずつ乗り入れ、それぞれ単線で運用する方式。

・青函トンネル方式:3本レールを並べ、標準軌も狭軌も走行できる方式。

・近鉄方式:どさくさに紛れて、既存の狭軌の区間を標準軌に改軌する方式。東急多摩川線を標準軌にします。

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羽田空港は、今後さらに利用者が増えますが、連絡する鉄道が京浜急行とモノレールしかありません。近い将来、輸送力不足が顕在化します。ここは頑張って何とかJRか東急に乗り入れて欲しいものです。

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鉄道ファンの間では蒲蒲線への期待が大きく、開業に向けてのイメージソングを考えている人もいるそうです。なんでもカルチャークラブのボウイジョージが歌うカメレオンの歌だそうですが・・・・。

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日本以外でもFGTの需要は、いろいろあります。既に実用化しているスペイン以外では、旧東欧諸国や中国などです。中国は一帯一路プロジェクトで欧州との交通のパイプを太くしたいと考えていますが、その場合、標準軌の鉄道とロシアの鉄道(広軌)をスムーズにつなぐ必要があります。

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そして意外な国は北朝鮮です。かつて金正日がロシアをたびたび訪問した時は、国境で特別列車の台車を交換しロシアの鉄道に入っていましたが、ある情報では、最近、北朝鮮国内に、ロシアの鉄道(広軌)の線路が伸びているそうです。これは金正恩が、中国離れし、ロシアに接近している証拠だと思いますが、北朝鮮国内でのゲージ変換の必要が発生します。

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たかが、線路の幅の違いという小さな技術的問題ですが、それを通じて世界情勢が読み取れます。旧ソ連崩壊後、オーストリアや東欧諸国では標準軌への改軌が進み、ロシアの広軌が走る世界は急速に狭くなりました。一方で北朝鮮では広がっています。

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ゲージはバラバラのままですが、政治体制の違いを超えて、物流はますます盛んになります。古くて新しい技術FGTは、ますます重要になります。佐賀の新幹線での失敗を乗り越えて、FGT開発を日本は続けるべきだと思います。


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