【 シトラス・アイランド その1 】 [広島]
【 シトラス・アイランド その1 】
瀬戸内海の島々は、豊かな海産物の産地であると同時に柑橘類の宝庫です。以前、ご紹介した山口県の周防大島も、さまざまな柑橘類が取れる島ですが、広島県の大芝島も柑橘類の宝庫です。
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先日、引越し会社との契約を終えて、午後に少し時間ができました。ふと考えてみると、広島県内でも行ったことのない場所がたくさんあります。そう気付いた瞬間、焦りのような感覚にとらわれ、私は車で出発しました。出かけたのは広島県内の島々でまだ行ったことのない・・・大芝島です。
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海沿いの国道を走っていると、安芸津の集落の先に大芝島が見え、そこへ行く吊り橋も見えます。前に川崎のご隠居とドライブした時、「大芝島に行こうか」とも考えたのですが、ネットで調べてみると「何にも無い島だね」と分かり、とりやめたことがあります。
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しかし、この島には実にいろいろな柑橘類の果実があります。その柑橘類を全部眺めるだけでも価値があります。もともとは、温州ミカンと夏ミカン、レモンなど、限られた種類だけだったのが、何時の間にか増えています。多くは人工的に改良された品種でしょうが、ひょっとしたら、開花時期が重なる隣接地の別の柑橘類の花粉を受粉して交雑してできた新種もあるかも知れません。
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大芝島に入ると、すぐに道端のミカンの無人販売所が目に入ります。ミカン、はるみ、シラヌイ(デコポン)、はっさく、チャンドラポメロ、イヨカン、レーコン、ポンカン、大津、と並んでいます。はっさくやイヨカンは有名ですが、レーコンや大津、チャンドラ・・なんて種類は知りませんでした。教えられなければ、柑橘類の果実だとは思わないでしょう。
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ところで、昔、中国にいた頃、上海のリニアモーターカーを前に、中国人の友人から、「現代中国は全ての分野で日本に追いつき、追い越している。日本にできて中国にできないものは無い」と言われました。 でも農産物の無人販売所だけは、中国にまねはできないだろうなぁ・・・・、と今でも思います。
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話を元に戻します。柑橘類の種類が増えたのは、市場の激しい競争があるからです。柑橘系の栽培は他の果樹栽培に比べ、手間とお金がかかります。少しでも市場価値が高く、高く売れるものを開発・販売して元を取らなくてはなりません。 長閑そうな島にも厳しい競争がある・・・といったことを考えながら、朝市の会場に着きました。
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残念ながら朝市は土曜日の午前中だけで、私が行った時間は開いていません。会場の裏はカキ小屋になっていて焼きガキを食べられますが、それも今は食べる予定はありません。朝市の会場に車を停めると、二宮金次郎の像の向こう側に、ハート形の島として人気がある小芝島が見えます。
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小芝島を説明する看板がなぜか大芝島の海岸にあります。
「ヘエー、小芝島ではその昔、狼煙をあげていたのか・・・」と考えます。狼煙をあげるには小高い丘のある島が好都合で、その頂きで火を焚く訳です。
しかし、一方、瀬戸内の海岸で火を焚くとなると、藻塩を焼きたくなります。製塩業は瀬戸内海沿岸の伝統産業です。 実際、広島県でも、方々に藻塩を焼く製塩業があったようで、私の住まいの近所にも塩焼(しやき)という地名があります。そして、藻塩を焼くとなると、標高の低い海岸の方が好都合で、丘の頂きでの焚火は不都合です。
狼煙と藻塩焼きは、実はなかなか両立しません。
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小芝島では、官命によって狼煙をあげた訳で、その時は製塩作業の方は断念したのだろうな・・などと思いながら、目と鼻の先の小島を眺めます。百人一首の
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ
の舞台は淡路島ですが、文化的には、安芸の島にも共通するかも知れません。
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ふっと後ろを見ると、「晩柑祭り 3月4・5日」とあります。
晩柑とは何だろうか? ひょっとして新しいミカンの一種なのかな?と思いますが、そんな果物をお店で見たことがありません。
調べてみたら、晩柑は、特定の種類を指すものではなく、温州ミカンに対して遅れて実るハッサクやイヨカンなどの果物全体を指すみたいです。
へえ・・そうなのか と思うと同時に、おいしそうだな、どんな香りなのかな?と・・とチラッと思います。
以下 次号
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