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【 B-737 AEW&C 】 [航空]

【 B-737 AEW&C 】

 

ちょうど北朝鮮が核実験をする前々日、私は韓国から戻ってきました。釜山の金海空港を日本へ向けて飛び立とうとした時、誘導路の前に割り込むようにして奇妙な飛行機が現れ、平行する隣の滑走路から飛び立ちました。

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飛行機の大きさ、オヒョウが乗るボーイング737と同じですが、胴体の上にトサカというかチョン髷というか、奇妙な板状のものを載せています。

「ああ、これがB-737 AEW&C(ピースアイ)機なのか」と気付きました。噂には聞いていましたが、実物を見るのは初めてです。

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AEWCは早期警戒管制機と訳されますが、空飛ぶレーダー兼作戦司令室です。米国のRC-135E-3及び日本のE-767は機体の上に、大きな円盤状のレーダーを据えていますが、オーストラリアや韓国の空軍が持つE-737の場合は、円盤状のレーダーではなく、MESAと呼ばれるレーダーの大きな板状のアンテナを載せています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0737_AEW%26C

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この奇妙な飛行機が飛び立つのを見て、ちょっと嫌な予感がしました。「これはどういうことなのか?」。韓国滞在中、韓国のTVは、北朝鮮が相次いでミサイルを発射したニュース、杭州のG20のニュース、そしてHANJINという韓国の大手海運会社の経営破綻のニュースで持ちきりでした。だから弾道ミサイルの発射の監視に飛び立ったのか?と思ったのですが、少し変です。

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北朝鮮が発射する弾道ミサイルには、陸上型(固定式と移動式があります)と、潜水艦発射型の2種類がありますが、今、注目されているのは潜水艦発射型です。もし次の発射に備えて、潜水艦を監視するなら、B-737 AEW&Cではなく、対潜哨戒機であるP-3Cの方が適しています。それにハイテクの現代とはいえ、洋上を飛んで探索するなら、日没が迫った時刻よりも明るい日中の方が適しているのは間違いありません。

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これは、潜水艦発射型の弾道ミサイル発射の兆候を探るための飛行ではないな・・・?

早期警戒管制機が得意とするのは、空中を飛ぶ物体と、地上の施設、そして海上にある水上艦艇の探索です。基本的に地上のレーダーでも海上のイージス艦でも同じ探索ができますが、高い上空を飛ぶ方が、遠くまで探索できます。当たり前ですが、地球は丸く、より高い位置からの方が、遠くまで見渡せるのです。

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B-737 AEW&Cでは、高度9000m600Km先の施設や物体を把握できるはずです。

それなら北朝鮮に領空に入らなくても、かなり内陸の地域までレーダーで探索することができます。 つまり、韓国のB-737 AEW&C機は、潜水艦発射ミサイルを追いかけていたのではなく、陸上の何かを探っていたのかも知れません。 それはミサイルではなく核実験だったのかも・・・。

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北朝鮮の核実験は、秘密裏に行われるのが普通ですが、周辺諸国にはバレバレです。 だから、米国などは、WC-135と呼ばれる核実験調査専門の偵察機が事前に本国から沖縄の嘉手納基地がグアムに飛来して待ち構えています。 今回の核実験でWC-135が極東に飛来していたかは不明ですが、日本は上空の大気の塵を収集できるT-4型練習機がすぐに離陸しています。どうやら北朝鮮の核実験は事前に予想されていたみたいです。 

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SIGINTと呼ばれる情報収集には、大別してELINT(レーダーなどでの電波情報収集)、COMINT(音声会話やデータ通信傍受)の2種類があり、それぞれ、専門の航空機を用います。 特にELINT機と呼ばれる情報収集機は奇妙な形のアンテナを付けた奇抜な恰好の飛行機が多く、滑走路にどんな格好の飛行機がいるか・・・で、今どんな事態になっているか、分かるのです。 前述の繰り返しになりますが、もし嘉手納基地やグアムの基地にWC-135がいれば、それだけで北朝鮮が核実験をするか、あるいはした事が分かるのです。

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今の日本は専守防衛が前提ですから、自衛隊が持つ、敵を攻撃するための武器はあまり充実していません。その分、逆に情報収集や哨戒機能については装備が充実しています。米国も日本の自衛隊にはインテリジェンス機能(つまり情報収集機能)を期待しています。地理的にみて極東にある日本と韓国が情報を取る上で有利であり、それを米軍が活用するという構図です。

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その是非はともかく、日本は斥候としては優秀なようです。その能力は公開されませんから、うかがい知る事はできませんが、例えば、樺太沖で大韓航空機が旧ソ連の戦闘機に撃墜された際のパイロットの交信が非常に鮮明に録音され、何が起こっているかを瞬時に判断し、米国とその情報を共有していたというのは驚きです。公開されたのは通信傍受だけですが、それに加えてレーダーによる追跡も正確に行われていたようです。 日本の自衛隊は、旧ソ連軍のベレンコ中尉がミグ25に乗って北海道に飛来した一件以来、情報収集能力を大幅に向上させています。

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大規模な戦争の場合、情報戦は重要です。敵の通信を傍受し、敵の暗号を解読し、攻撃に備えたり、裏をかくことができれば圧倒的に有利になります。 第二次大戦では情報戦に勝利した方が勝っています。 でもそれは戦時下の話です。

情報収集能力が役に立つのは、実際に戦争を行っている最中、もしくは開戦が予想される段階です。平時に於いて、しかも戦争を放棄した我が国では、情報収集能力は宝の持ち腐れかもしれません。

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実際、核実験やミサイル発射が予め分かったからといって何の役に立つのか?

現に、どんなに偵察能力に優れていても、どんなに優秀なスパイ衛星を使っていても、北朝鮮がミサイルを発射して日本のEEZに着弾させたり、核実験をすることを止めることはできません。 拉致被害者を取り戻すこともできません。 全く無力です。

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日本の自衛隊のインテリジェンス能力は、米軍には重宝されるけれど、隣国の暴挙を止められないのです。

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それを考えていると、唐突ですが、映画「男はつらいよ」に出てくる、インテリ男と寅さんの喧嘩を思い出します。

インテリの方は何でも知っていますし、弁はたちます。口論で無学な寅さんを言い負かすことはできますが、腕力をふるう訳にはいきません。 結局寅さんを屈服させることはできないのです。寅さんは「てめぇ、さしずめインテリだな?」と言って、口論を拒絶してしまうのです。インテリのある種の弱さを揶揄するというのは、映画「男はつらいよ」シリーズのひとつの重要なテーマでした。

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日本は、北朝鮮を屈服させたり、北朝鮮に圧力を加え、影響力を及ぼそうなどと考えている訳ではありません。 ただ、拉致被害者を帰せ、そして日本にミサイルを飛ばしたり、核の恫喝をするのを止めろ・・と要求しているだけです。具体的には国連決議を順守しろと言っているだけです。 至極、正当な要求をしているだけです。

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しかし、話し合いと経済制裁などの非軍事的圧力だけでは、その正当な要求も無視されるだけです。 何かいい知恵はないものか?

そうです。外交の重要問題を解決するのは知識(インテリジェンス=intelligence)ではなく、知恵(インテレクチュアリティ=intellectuality)なのです。 

高価で奇妙な形をした飛行機よりも、一人の知恵のある政治家がいれば、多くの問題が前進し、解決するのですが、今の日本にはそれがいません。 ついでに言えば韓国にもいません。


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