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【 プアーホワイトとは 】 [アメリカ]

【 プアーホワイトとは 】

なぜ、トランプ候補のような人物が大統領候補として人気を得るのか、分からない人が多くいます。私もその一人です。

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彼は良識ある人なら口にするのをためらう発言 つまり人種的な偏見(bigot)や憎悪(hate)、暴言を普通に口にします。ある意味でタブーに敢然と挑戦している候補者です。しかも、それを分かりやすい平易かつ下品な英語で、語ります。

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そしてその不躾で率直な発言を歓迎する人が多いのも事実です。

かつてリーダースダイジェストの小噺にあった、「素晴らしいものとは、法律で禁止されているか、不道徳であるか、食べると体に悪い」という内容の内、彼は一つを実行し、 本音を言いたくても言えない人々の溜飲を下げているのです。しかし、支持者達の気持ちを代弁して、支持者達に爽快感を与えるだけの大統領候補者でいいのか? それは究極のポピュリズムではないのか?

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アメリカ人の考えにも、日本人と同様、本音と建前があります。そして、いつも本音を言うことがいいこととは限りません。本音を語ることをためらわせるのも一つの文化と言えます。本音を言って何が悪い・・と開き直る人は、文化の破壊者です。

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そして、彼の英語は、よく言えば分かりやすい平易な英語、悪く言えば幼稚な英語です。日本人の私にはその方が、都合がいいのですが、これはどうしてか?と思っていたら、それを解説するレポートがありました。

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160527-OYT8T50012.html?from=ytop_os1_txt

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何も幼稚な言葉を用いるのはトランプ氏だけでなく、ヒラリー・クリントンなどの他の候補者も同じだというのです。 しかし、国務長官時代のヒラリー・クリントン氏の発言を聞いていると、決して幼稚な英語とは思えません。高い知性を備えた女性候補者が、敢えて有権者と同じレベルに立って訴えるために、幼稚な英語を用いているというのが実態でしょう。 それは当然なのかも知れませんが、そこにアメリカの問題があります。政府が高い能力を備えたリーダーやテクノクラートを揃えている一方で、あまり教育を受けられなかった多くの有権者がキャスティングボードを握っているという矛盾です。

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では、トランプ氏を支持している層とは、どういう人なのでしょうか? 彼の支持者は、全国、各階層に広がりつつあるようですが、一番はっきりしているのは、プアーホワイトと呼ばれる、どちらかというと南部の、そしてどちらかというと都市部ではなく農村に多く住む、まじめで質素に暮らす、お金持ちではない白人達です。

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では彼らはどういう人々なのか?

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私は最初にプアーホワイトと聞いた時、「大草原の小さな家」に暮らす、インガルス一家のことを考えました。 敬虔なキリスト教徒で、素朴に暮らす農民のイメージでした。

そして1980年代、バブル時代の日本企業は、北米への進出を盛んに進めましたが、彼らが現地に工場を建てる時の、キーワードもプアーホワイトでした。

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米国の場合、シカゴからペンシルバニアにかけての五大湖の地域は、工業地帯として早くから開けました。所得水準も高く、工場に勤務する人達の権利意識も高く、新しく進出する企業には敷居の高い地域でした。

デトロイトを中心とする全米自動車労組(UAW)や、全米鉄鋼労組(USW)は強力な力を持ち、組合員の生活の向上に実績を挙げていました。

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一方、その恩恵を受けられない貧しい人達が、主に南部の地域に暮らしていました。 日系の自動車会社は、UAWの影響を受けない、そして低賃金で真面目に働く、プアーホワイトの労働力を目当てに、南部に工場を建てました。 日系企業だけではありません。米国で成功しつつあった電炉ミニミルは全米鉄鋼労組(USW)の支配を受けない南部で新しい製鉄所を建設し、それぞれ成功しています。

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しかし、純朴でまじめな人達が、いつまでもそのままか?というとそうではありません。

貧富の格差が増大する米国で、貧しいままでとりのこされている実態、そして移民や海外の企業に奪われていく雇用、それらを感じた時、プアーホワイトの人達に、不公平感や不満が募ります。 トランプ候補はそれらの、一種のルサンチマンを上手に取り込んでいるのです。不平不満を持つ人達の怒りをそらすには、外部に敵を求めるのが好都合です。 彼の場合、メキシコやイスラム教徒、そして日本や韓国、中国を悪者にして、国民の怒りの向け先にしようとします。

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幼稚な言葉で、見当違いの主張を繰り返すこの男は、実は非常に頭がいいのかも知れません。

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では、プアーホワイト以外の人達はどうなのか? 米国の労働者階級の白人が皆、トランプ候補を支持する訳ではありません。

一般論では議論しにくいのですが、もともと労働者階級はどちらかというと民主党支持でした。527日付のAMM (American Metal Market)紙によれば、全米鉄鋼労組(USW)は、ヒラリー・クリントン氏を支持することに決めたそうです。

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そもそも保護貿易を主張し、国内雇用を守るために、輸入を規制せよ!という主張は民主党の主張でした。 しかし、今は共和党の異端児、トランプ候補がちゃっかり、そのスローガンを頂いています。 共和党候補が敢えてこういう主張をするということは、米国内で、安価な輸入品の流入や不法移民に対する危機意識が従来にも増して強くなったということでしょう。

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問題はトランプ氏が無思慮で、無知であることです。彼はひょっとしたら、日本・韓国・中国の違いを理解していないのではないか?そう思うことがあります。もっとも日本人だってアルジェリアとナイジェリアの区別ができる人はそう多くはありませんが・・。問題は、アメリカの大統領になろうかという人物がそれでいいのか?ということです。これは大きな問題です。

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アメリカ国民が世界の情勢や地政学に無知な人をあえて選ぶとは思いたくないのですが、彼を支持する人々も、また無知であれば、この問題に気付かないかも知れません。

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20世紀の歴史を見れば、経済が低迷した時期、国民が絶望したり、不平不満が溜まった時、過激でストレートで単純なスピーチをする政治家が、有権者に歓迎されます。あのアドルフ・ヒットラーがそうであったように。

だからトランプが当選するか否かよりも、彼が多くのアメリカ人に支持される事が意味する、米国の現状を憂慮すべきです。

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でもね、過激で単純で下品なスピーチをする政治家がのさばる・・という点では、日本も同様です(プアーホワイトはいないけれど)。 アメリカ以前に、日本の現状を憂うるべきかも知れません。

でもまあ、そんなことは、トランプ候補を引き合いに出す前から分かっていたことですが。


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