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【 オバマの英断 】 [アメリカ]

【 オバマの英断 】

米国のオバマ大統領が、被爆地広島を訪問することが確定し、各方面で反響を呼んでいます。ニューヨークタイムスとワシントンポストも関連記事を出しています。

http://www.nytimes.com/2016/05/11/world/asia/hiroshima-atomic-bomb.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&clickSource=story-heading&module=first-column-region&region=top-news&WT.nav=top-news&_r=0

https://www.washingtonpost.com/graphics/world/hiroshima-nagasaki-illustrated/?hpid=hp_no-name_graphic-story-a%3Ahomepage%2Fstory

米国の在郷軍人会は、大統領の広島訪問に基本的に反対です。

原爆の悲惨さが再確認されることで、彼らが太平洋戦争で行った活動の正当性が揺らいだり否定されるのを恐れているのです。彼らは、大統領の広島訪問が謝罪と受け取られるのを心配しています。

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極端な意見では、大統領が広島に行くのなら、日本の首相は真珠湾を訪問して哀悼の意を表すべきだ・・というトンチンカンな意見もでているそうです。「お互い様だ」という事でしょうか。

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太平洋戦争での米国の被害は殆ど軍人だけに留まっています(例外もありますが)。無辜の非戦闘員が犠牲になった原爆の災禍と比較・相殺できる被害は、米国には無いのです。だから、彼らの心の傷になっている真珠湾攻撃を引き合いに出すしかないのでしょう。

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さびしい限りですが、世界には、哀悼よりも謝罪を、謝意よりも賠償を重視し、それを要求する人がたくさんいます。日米ともに並んで、戦争の犠牲者に哀悼を捧げる行為を、米国から日本への謝罪と解釈するのはナンセンスですが、そう思う人も現実にはいます。

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悲劇があれば、必ず責めを負うべき加害者と謝罪を求める被害者がいる・・というのは本当なのか? オバマも安倍晋三も戦後生まれです。もはや戦争の加害者も被害者もなく、等しく、過去を悼み、将来を考えるべき時期ではないのか?

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菊池寛の作品の題名にある、「恩讐のかなたに」という言葉を英訳しようとして、適当な訳が見つからず、ちょっと考えました。なぜ適切な訳が無いのか?相互に許しあう・・というのは、欧米に普遍的な美徳のはずなのですが、現実にはあまりないのか?米国の大統領の広島訪問は、「恩讐のかなた」に実現したことなのに。

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全く、奇妙なことに、オバマ大統領の広島訪問について、中国と韓国のマスコミが懸念を表明しています。この2つの国(北朝鮮も合わせれば3カ国)は、20世紀の前半の戦争の被害者であったことをひたすら強調し、半世紀以上、それを拠りどころとして、なんとか国をまとめている奇妙な集団です。一方、20世紀の後半まで戦争で痛めつけられたベトナムは、自分達が戦争の被害者であることをことさらに声高に叫ぶのは、自分達の主義に反するとしています。全く好対照です。

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基本的にはオバマ大統領の広島訪問は、中国・韓国には無関係なことなのですが、彼らにとって、日本は常に加害者でなくてはならず、日本が被害者であることが堪えられないのでしょう。但し、実際には、日本国民として被爆し犠牲になった韓国・朝鮮人はたくさんおられます。

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日本の被爆者団体はおしなべて歓迎の意向です。これは重要なことで、米国大統領の被爆地訪問は、核兵器の悲惨さを世界に訴えている日本の諸団体が本物であるか否かを占う試金石でもあるのです。これはどういうことかと言えば、反核兵器団体の中には、反核を隠れ蓑に、反米・反日を訴えることを主目的とする団体が多くいました。

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実際に核兵器を使用したのが米国だけですから、反核は米国非難には好都合だったのです。かつての原水禁(社会党系)、原水協(共産党系)は、その点が露骨でした。集会では人類の悲劇である原爆の災禍を訴えるはずなのに、赤旗が並び、反米イデオロギーを訴える場となっていました。当然ダブルスタンダードが発生し、共産党系の人は、「ソ連の水爆はきれいな水爆、米国の水爆は汚い水爆」といって憚りませんでした。

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真に核兵器を憎むのではなく、反米活動の道具として原爆投下を利用していた人達には、オバマ大統領の広島訪問は実に都合が悪いはずです。だから、彼らは大統領訪問に反対するだろう・・と思っていたら、あては外れました。 オバマ大統領の広島訪問に反対する声は聞こえません。もうイデオロギー論争の時代ではなくなったようです。何であれ、原爆の犠牲者を悼む人は歓迎されるべき存在です。

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では、米国の大統領が広島を訪問するまでに70年以上もかかったのはなぜか?ということを考えます。 これは冷戦の存在が大きいと私は思います。20世紀後半の冷戦時代、両陣営はありあまる核兵器による報復攻撃を拠りどころにして恐怖の均衡を保ってきました。その状況下では、核兵器を否定できず、両陣営の指導者は、なかなか核兵器の悲惨さを訴えることができなかったのです。

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やがて核兵器のデタントが始まり、ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦は終わりました。現在、米ロは核弾頭を継続的に減らしています。国連で核保有国として認められている5カ国の中で、現在もせっせと核弾頭の数を増やしているのは中国だけです。更に言えば、国是として核兵器の数を増やしているのは、中国と北朝鮮だけです。 言葉を換えれば、冷戦を引きずっているのは、この2カ国だけであり、極東の一部地域だけで冷戦が残っているのです。 核兵器を常に肯定するこの2カ国には、人々の広島での追悼の意味が分からないはずです。

原爆の悲惨さを訴える一方で、中国や北朝鮮を礼賛していた人達は、この状況にどうコメントするのでしょうか?

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やっと冷戦を卒業したアメリカですが、オバマも大統領をあと8ヶ月で卒業です。彼の任期中、いろいろな課題がありましたが、進捗のあったもの、無かったもの、様々です。国民皆保険の医療制度やTPPでは、いろいろ苦労しながらも前進しましたが、シリア問題では無能とそしられ、涙を流して訴えた銃規制は全く進展がありません。

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核兵器問題については、オバマ大統領は、就任後まもない時期に、「核兵器を使用した唯一の国の責任」に言及して、ノーベル平和賞を受賞しました。しかし、その後の行動に移すのに、7年かかったのです。広島に卒業旅行に行くことで7年越しの宿題がやっと少し進むことになります。

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おっと忘れてはいけません。広島に行くのなら、長崎にも行かなくては、平仄が合いません。今回は無理でも次回の訪日の時に必ず出かけて欲しいものです。

もうひとつ、オバマが大統領に就任した時、お祭り騒ぎでお祝いしたあの町、福井県小浜市をお忘れなく。

小浜市の人々も、7年間、オバマ大統領の訪問を待っています。きっと歓待するはずです。


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