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【 ホンダジェットについて思うこと その4 どこの誰に売るか? 】 [航空]

【 ホンダジェットについて思うこと その4 どこの誰に売るか? 】

 

製造業にいると、どんなにいい製品を作っても売れなくて悩むことがあります。ビジネスジェット機のようなニッチな市場で仕事をしようとするならなおさらでしょう。 前述した三菱のMU-300のような例もあります。

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自分たちではどうしようもない、巡り合わせもあります。米国の場合、9.11の同時多発テロが起こると、ビジネスジェットの需要が増えました。乗り合いの飛行機と違い、テロに遭う可能性が低いからです。 ITバブルが起こると、濡れ手で粟の大金を掴んだにわか成金がビジネスジェットを買います。節税対策にもなるのでしょうか?

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一方、リーマンショックで不景気になると、誰もジェット機など買いません。経営が行き詰った米国の三大自動車メーカー(ビッグ3)の経営幹部がワシントンの公聴会に出向いた時、それぞれがビジネスジェットに乗ってデトロイトからワシントンに来た事が分かり、非難されました。その次の回は、自社のエコカーを運転してワシントンに出向いたとのこと。そうなると、経営状態の悪い会社の幹部は、ビジネスジェットに乗れません。需要は冷え込みます。

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それはともかく、潜在的な需要はまだあるものの、米国で売れるビジネスジェットの数には限りがあります。米国でマイカーならぬマイ飛行機を持つ人あるいは中小企業は、まずプロペラ機を持ち、次の段階でジェット機に乗り換える場合が多いそうです。

三菱はMU-2からの乗り換えを狙ってMU-300を出しましたし、ビーチクラフト社はプロペラ機しか持っていなかったため、ジェット機に乗り換えるお客をみすみす逃してきました。だからジェット機が欲しかったのです。

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サイテーションを手に入れる前のセスナ社もそうでしたし、ムーニー社なども同様です。

だから、いまプロペラ機に乗っている人や会社を数えれば、将来売れるジェット機の数もある程度予測できます。そして米国では、ビジネスジェット機の市場はそれほどの急成長は見込めません。

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一方、日経新聞によれば、ハネウェルインターナショナルの予測は、向こう10年間に、世界で売れるビジネスジェット機は9200機(2700億ドル)だそうで、これは今よりもかなり多い数字です。これは北米や産油国以外の需要・・つまり中国での需要を当て込んでいるからと思われます。

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それならホンダジェットも米国で生産し米国で売る事だけを考えずに、中国で売る事も考えるべきでしょう。先行するライバル各社(セスナやエンブラエル)も、中国での実績はなく、条件は同じです。ヨーイドンで同じ条件で商売できます。

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中国の場合、経済成長で成金が増えて、自家用機を希望する人が増えています。その背景には、広い国土と、公共交通機関の未整備があります。もちろん高速鉄道網は随分伸びましたし、高速道路網も充実してきました。でも対人口比ではまだまだ足りません。旧正月の帰省の際、交通機関の切符を入手するのは、いまだに大変なのです。そして、中国には富と権力を品物で顕示したいという成金趣味があります。

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そういう事なら、自家用機が売れる見込みもある訳ですが、この国固有の事情があり、そう簡単ではありません。実は空域の多くを軍隊が管理しており、管制はすべて軍用機優先で行われているのです。民間機は軍用機が飛ばない時間帯を選んで飛行しますが、渋滞して飛行計画には慢性的な遅れが生じています。北京では首都空港に加えて第二空港を建設する予定ですが、空域が混雑している現在の状態が解消しない限り、空港を増やしても問題は残り、渋滞と遅れは続きます。 そんななかでジェネアビと呼ばれるビジネスジェットが入り込む余地はすくないのですが・・・。

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しかし中国政府も現在の状況は良くないと考えているようで、近い将来、空域を空軍から民間に大幅に開放する・・という予測があります。そのタイミングがホンダジェットにとってチャンスです。 急がないと、中国の景気が大幅に後退して、航空機の購買意欲が減少するかも知れません。あるいはジェット機を買う余裕のある富裕層は国外に脱出してしまうかも知れません。 あるいは、中国の地元企業に真似をされて、主翼の上にエンジンを載せた飛行機を作られ 「中国には4000年も前から主翼にジェットエンジンを載せた飛行機があった。中国のものが正統でホンダジェットは模倣だ」などと言い張られてしまうかも知れません。

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航空機を売る場合、メンテナンス網の構築が重要です。 故障した場合、遠隔地でも交換部品をすぐに届けられる態勢が重要です。また点検・修理できる技術者を各拠点空港に配置することも必要です。修理待ちあるいは部品交換待ちで高価な飛行機を遊ばせておくことは許されません。顧客の不便と機会損失はなんとしても避ける必要があります。 

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そうなると、中国の主要空港全部にサービス拠点を作る必要がありますが、ホンダはセスナ社やエンブラエル社と比べて、有利な点があります。それは既に確立している、自動車販売網のネットワークを活用できるということです。広州本田汽車とのコラボで

飛行機部品の供給ネットワークが築けるのです(エンジニアの方は簡単ではありませんが)。これは、セスナには真似のできないことです。

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中国で飛ばすためにも中国の型式証明が必要ですが、問題はありません。日本の型式証明がそうであるように、米国のFAAで取得していれば、比較的に簡単に取得できるはずです。

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中国人の経営者が、「祖父はホンダのカブに憧れていた。父は頑張って広州本田のアコードを手に入れた。そして僕はホンダジェットに乗っている・・」と感慨に浸る時代がその内やってきます。

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ああ、余計な事ですが、中国向けだからといって、ホンダジェットの客室のトイレをおろそかにしてはいけませんよ。中国のトイレが開放的で、個室でなかったのは、遠い昔です。経済発展と生活の向上で中国のトイレ事情は急速によくなっています。

だから、中国向けのホンダジェットには、TOTOのウォシュレットを備え付けた方がよいでしょう。 日経新聞には書いてないけれど。


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