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【 三々九度はシャンペンで 】 [ベトナム]


【 三々九度はシャンペンで 】

 

今日は、やけに結婚式が多いみたいだ・・。 16日、フーミィからホーチミン市へ向かうタクシーは国道51号線を飛ばします。その途中で何台もの結婚式の車とすれ違います。ピンクの造花とリボンで飾り立てたセダンは、一目で新郎新婦の為の自動車だと分かります。

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ベトナムにも大安吉日というのがあるのかな?

媒酌人は「本日はお日柄も良く・・」なんてスピーチをするのかな?ベトナム語で・・。

実は私も、ベトナム人の友達の披露宴に出席するためにホーチミン市に向かっているのです。

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その国に住む人達の心情に触れたければ、喜びの儀式と悲しみの儀式に出席するとよい・・というのが私の考えです。ベトナムの人を理解するためには、結婚式とお葬式に出席するのが適当だ・・と私は考えた訳です。残念ながら、今回はキリスト教の教会で行われる結婚式には出席できず、披露宴だけの出席となります。

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そもそも、ハレの日にベトナムの人はどんな晴れ着を着るのだろうか?

考えてみれば、この国に来てから私は作業服の人々しか見ていないような気がします。工場の作業服だけでなく、ホテルの人もレストランの人も制服です。そうでない人も普段の仕事用の服の人ばかりです。

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やはり、ベトナムの人の正装はアオザイなのかな? もし洋服だとすれば、この暑いホーチミンでどんな服を着るのかな?・・といろいろ興味があります。

やがてタクシーは、ホーチミンの都心にある公園近くの大きなレストランに到着しました。 披露宴は3階の大広間で行われます。

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会場に入ると、出席者には、ベトナム人だけでなく多くの外国人がいます。実に国際的です。大学で日本語と中国語と韓国語を学んだ新郎、同じく大学で日本語と英語を学び、それらを自在に操る新婦という組み合わせで、彼らの友達関係というか人脈は世界中のようです。

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会場では、ベトナム語に日本語、英語に中国語が加わり、さらに韓国語も聞こえます。ちょっと気後れしますが、「なあに、僕だってたくさんの言葉を話せるぞ。茨城弁に金沢弁に、標準語に、横浜弁だって理解するのだ・・」と、人混みの中に入っていきます。 出席者は、普通の洋服のドレスの人もいれば、きらびやかなアオザイをまとった女性もいます。新郎のおばあさんの着る服は、青地の絹に金の刺繍をした上品なものです。 

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困ったのは日本から駆けつけた新郎の友人の日本人達です。ベトナムは暑いから・・と上着なしの半袖シャツで現れたのですが、会場はガンガンに冷房を利かせています。それはそうでしょう。ベトナム人だって、正装のスーツを着こめば暑い訳で、室内の温度は、20度台の前半です。

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東南アジアは、ながく欧米の植民地でしたから、建物の空調の温度は西洋人に快適な温度に設定される事があるのです。 シンガポールのホテルも、外は炎天下でも、室内は英国の気温に合わせてありました。

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中国もベトナムも披露宴は、始まりと終了がはっきりしません。三々五々にテーブルに着いて、勝手に飲み食いを始めます。 終わりの方も、正式の合図はなく、コースの料理が出尽くしたな・・という頃合いを見計らって退席しますが、慣れないうちは、どうもしっくりきません。

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飲み物を飲み始めて暫くすると、新郎新婦が登場し、拍手が湧きます。その後は、日本の披露宴と似ています。三三九度の様に、お酒を飲み、ウェディングケーキにナイフを入れますが、三三九度は、ちょっとスタイルが違います。新郎新婦、そしてその両親の合計6人がステージにあがり、シャンペングラスで乾杯するのです。

ベトナムの女性は、普段お酒を飲みませんが、この時ばかりは例外です。

それに欧米風の考えを持つ新婦は、お酒も普通に飲むみたいです。

こころなしか、新婦の父親だけが元気が無いように見えますが、それは私の気のせいかな?

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その乾杯も日本とは少し違います。

日本だと飲む前に、杯を掲げて、発声するのですが、ベトナムの場合は、飲む瞬間あるいは、飲んだ直後に発声するのです。その声は「なんとかヨー」と言っているように聞こえます。 「なんとか」の部分には、その都度違う単語が入ります。

例えば、あなたの健康を祈ってとか、結婚を祝してとか、プロジェクトの成功を期して・・という具合に変化するので、私には聞き取れません。

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やがて、多くのテーブルで「✕✕ヨー」といって乾杯が始まります。

ステージでは芸能人の歌や楽器演奏が始まり、新郎の父親も飛び入りでカラオケで歌い始めます。ラ・ノビアとか、私にも分かる曲がありますが、ベトナムの歌になると全く分かりません。多分、ベトナムのおめでたい歌なのでしょう。

「皆さんご一緒に」と言われても、私はとても舞台に立つ勇気はありません。

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その間にお色直しをした新郎新婦は、各テーブルを回って挨拶です。私は料理を食べる事に余念がありません。

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「この中華料理のコースはとても美味しいですね。広東料理ですか?」と尋ねると、同じテーブルに座った、新郎の大学の後輩だというベトナム人男性が、

「これは典型的なベトナム料理です。ベトナム料理はタイ料理と似ていますからタイ料理と間違える人はたくさんいます。でも中華料理とは随分違いますよ」と流暢な日本語で説明してくれます。

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同じテーブルに着いた岡山からの日本人は、それを聞いて、笑いをこらえているのか、私から視線をそらしています。 そう言えば、暫くベトナムに暮らしているけれど、本格的なベトナム料理なんて食べていないなぁ。 ホウといううどんや、ニョクマムという発酵食品、細身の春巻きぐらいしか知りません。 本格的なベトナム料理は初めてです。 魚介類、特にエビやカニを美味しく料理し、そして甘味に多くのバリエーションがあるようです。

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自分が食べたごちそうの写真を見せびらかすのは、「笑うオヒョウ」の趣旨ではありませんが、今回はコースの一部を写真でお載せします。

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付け合せのパンはかつての宗主国 フランスのパンの味です。

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果物(ライチーのような味)をコップに入れてシロップと一緒に口にします。

その後、チョコレート・クッキーを頬張るデザートです。

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やがて宴は、終わりに近づき、日本からの出席者がポツリとささやきました。

「新郎も秀才だけど、新婦はそれに輪をかけた才色兼備だ。それにあの眼差しを見ると、気も強そうだ。こりゃきっと、Ngo Thai Danh君は尻に敷かれるぞ」

それについては、私も同感です。日本語の実力をみても、花嫁の方が上ですし、頭の回転も速そうです。 前回、会った時には、未来の夫をたてていましたが、ひょっとしたら結婚後の新家庭の主導権は奥さんが握るかも知れません。 それにもともとベトナムには、かかあ天下が多いそうですから・・。

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そして、私は別の事を考えていました。新郎新婦だけでなく、披露宴に出席した若い人々を私は眺めていたのです。 ベトナム全体をみるとまだまだ貧しいけれど、都会には裕福な若い人々が増えてきている。彼らには高い能力があり、ベトナムの経済を発展させていくに違いない。

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ちょうど、10年くらい前の中国のようだ。 中国はその後、めざましい経済発展を遂げたけれど、貧富の差はさらに拡大し、社会の歪は増大してしまった。 それどころか、中国はこれまで労働対象年齢となる若年層の人口が増え続けるという「労働人口のボーナス」を享受してきたけれど、今年をピークに労働人口は減少に転じる。多くの社会矛盾を解消できないまま、高度成長にはブレーキがかかるのだ。

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しかし、ベトナムの若年人口は増え続け「労働人口のボーナス」はなお当分享受できる。 国はまだ貧しく経済発展の余地は多くある。 この国のジニ係数がどれくらいか知らないけれど、中国ほどではないだろう。 貧富の差が増大しないようにコントロールし、かつ政治の腐敗・汚職を防止出来れば、この国の未来は明るいに違いない。できれば、またこの国に来てみたい・・・20年後くらいに。

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フーミィに帰るタクシーの中で、私はそんな事を考えました。

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新郎新婦の横に立っている、邪魔な大男が私です。


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