【 遙かな尾瀬 その2 】 [新潟県]
【 遙かな尾瀬 その2 】
Mさんが到着する新潟空港はちょっと不思議な空港です。 日本海側の地方都市空港ですが、滑走路は複数あります(1本は佐渡島へ飛ぶアイランダー用の短距離滑走路)。 そして環日本海交流というのか、早くから大陸(特に共産圏)からの飛行機が飛来しています。その昔、エア・コリョという北朝鮮の旅客機が飛来していた時期もあります。
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国内線を見ると、さらに面白い事に気付きます。日本の多くのローカル空港は、東京(羽田)をハブとしたスポークの路線を持ちます。しかし新潟空港には東京行きの便がありません。(中越地震の後、暫く東京行きが飛びましたが)。
その代わりに韓国のソウル(仁川)や上海(浦東)行きの国際線があります。つまり北東アジア地域のハブ空港へ連絡するスポーク路線を持ちます。
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これは言うまでもなく、上越新幹線が便利なので、航空機の路線が成立しないからです。日本では、北東アジアの中心となるハブ空港が無い事、仁川や浦東にその座を取られている事を由々しき問題として考える人がいます。特に一部のマスコミや国土交通大臣など・・・。
彼等は成田と羽田の主導権争いや、長大な滑走路やターミナルビルが足りない事が原因であるとしていますが、実はそれらは瑣末な問題です。航空・鉄道・道路など全ての交通機関を総括した上での、交通行政に関する基本方針が政府にない事が問題なのです。
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新幹線などの地上交通機関の充実で、地方空港から東京への航空路線が成り立たないようにしたのは、政府であり、そのために、存在理由を失った日本海側のローカル空港は、外国のハブと連絡する事で国際線のスポークとして生き残りをかけているのです。その結果、仁川や浦東のハブ空港としての地位を確たるものにしているのです。
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羽田と成田の摩擦を面白おかしく扱ったり、仁川や浦東と比較して危機感を煽るマスコミの報道は、空港整備予算を確保するための演出だったのかも知れません。しかし実際は、羽田空港をハブたらしめていない原因は新幹線や高速道路なのです。
なに、新潟だけではありません。新幹線網が整備されれば、東京行きの国内線を失い、中国、韓国に連絡したがる空港は他にもでてきます。新幹線は関係ありませんが、松本だって静岡だって、その内、中国・韓国線に生き残りをかけるでしょう。茨城空港も同じです。
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新潟空港の場合、ライバルの小松空港より有利な面があります。小松空港は航空自衛隊小松基地と同居しており、共産圏(具体的には中国)の旅客機を受け入れるには、制約があります。 しかし新潟にはそれがありません。環日本海のいろいろな国から飛行機が来ます。
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ウラジオストクからの客はロシア語をしゃべり、上海へ帰る人達は中国語を話し、韓国からの観光客は韓国語を話す、ちょっと不思議なロビーが新潟空港にはあります。
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そして、新潟空港が生き残っているもうひとつの理由は、日本海側には新幹線が無い事です。だから、新潟=大阪便は今でもドル箱です。新潟=福岡、新潟=広島、新潟=札幌便も健在です。 ついにギブアップするのは、新潟=名古屋便だけです。
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その大阪(伊丹)=新潟便に乗って、Mさんはやって来るのですが、彼にはこだわりがあります。
・ボンバルディアのダッシュ8(プロペラ機)は不愉快だから乗らない。
(同じボンバルディアでも、ジェット機のCRJは構いません)。
・老朽化したMDのジェット機にも乗りたくない。
・JALよりANAがいい。
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これはMさんが長年、航空機産業で仕事をしてきた事や、ご家族の事情などから、特別な思いがあった上でのこだわりです。しかし、不思議な事に最近、Mさんの好みに合わせる様に、マスコミはボンバルディアのダッシュ8を叩いています。 高知空港での胴体着陸以降、ボンバルディアのプロペラ機は欠陥機だと言わんばかりですし、経営破綻したJALについても非難轟々です。
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実は経営内容を見る限り、ANAも決していい訳ではなく、営業損益は赤字です。但し、昨年はホテルを売却したりして、表面化しないようにしているだけです。 でもそれはともかく、世の中のマスコミはMさんの好みを肯定するように報道しています。
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しかし、それだけ注文が多いと、大阪から新潟へ飛ぶ飛行機も選ばないといけません。 結局、Mさんは10:40着のANAの飛行機で到着しました。飛行機はボーイングのB737-700です。
そして、我々はポンコツ車に乗り、はるか地平線近くの南の山脈を目指して走り出しました。
以下 次号
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