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【 飯山小菅神社の火祭 その3 】 [長野県]

【 飯山小菅神社の火祭 その3 】 

小菅神社の講堂の前に置かれた、柱松への点火の行事は、午後3時からの予定でしたが、なかなか始まりません。 やがて時刻は午後4時です。 その日のうちに金沢へ帰るY博士は、電車の時間が気になります。

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柱松への点火が遅くなる理由は何か?

1. お神輿を担いで疲れた人が休息するため。  

    → 参加者は若者が多く、疲れた風には見えません。

2. 夕方の方が涼しい。  

    → 蒸し暑さはずっと続いています。暑い中、待たされる観客の

         事を考えると、むしろ早い方がよいです。

3. 火が点る行事なので暗くなってからの方が見栄えがする。

  → 7月中旬であれば、なかなか日は沈みません。

         午後3時でも午後4時でも同じことです。

4. 行事進行役がのんびりしていて、遅れを気にしない。

  → 多分、理由はこれでしょう。

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やがて、東の空に夏の入道雲が発達しだしました。

「 ありゃ、これはまずい。 積乱雲に発達して、夕立ともなれば火祭りはオシャカだ 」

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オヒョウの前の人が話します。

「 3年前は雨が降って、火が点かず大変だったのだよね。 

   今年は多分  大丈夫だろうが・・・ 」

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やがて、奇妙なお面と装束をまとった男性が現れ、中央の石の台に向かって進み始めました。 手には太鼓のようなものを持っており、どうやらそれを叩くと、火点け競争の開始の様です。

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2本の柱松には、それぞれ3人の若者がよじ登って、はりついています。講堂の前には、稚児を抱えた大人たちがいます。 太鼓の合図と同時に柱松に駆けつけ、稚児を3m以上の高さの柱松のてっぺんに担ぎ上げで、点火させる手はずです。 実際には、稚児に火打石が使えるはずもなく、青年が火をおこすのは、明らかですが・・・。

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2本の柱松の片方は豊年満作を願うもので、他方は平和と安寧を願うものです。妙高の場合のように2つの集落で競うというものではありません。

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ゆっくりと現れた仮面の男は、なかなか石の台に乗りません。私の隣の男性は 

「こりゃあ、あと10分はかかるぜ」とため息をつきます。参加者は、全員太鼓の合図を今か今かと待っているのですが、肝心の男はじらし続けます。

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石に片足だけ乗せて、また下ろし、乗るかと見せて、足をそらします。その軽妙な動作と肩透かしに観客はドッとわきます。さらに石の台に乗ってからも、太鼓を叩くようで叩きません。滑稽な動作で、バチを太鼓からわざとそらして、くうを叩きます。

そのたびに、観客は大笑いします。

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このお祭りでは、朝から期待した芸能がほとんど無かったのですが最後に、おどけた仕草のパフォーマンスが登場したわけです。しかし、しつこすぎます。最初は笑っていた観客もやがて笑わなくなり、仮面の男が、空振りを見せても、シーンとしてしまいました。既に石の上に乗り、太鼓を空振りするだけの仕草で5分が経過しており、人々は飽きています。明らかにイライラしている人もいます。

「僕たちはいいけれど、柱松にしがみついている若者がかわいそうだよ」という声も聞こえます。

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オヒョウも苛立っていました。 太鼓を叩く瞬間をとらえ、柱松に駆けつける場面を撮ろうとして、ビデオを撮っていたのですが、安物のデジカメの動画撮影は、一度に30秒しか持ちません。何度も空振りしたのは仮面の男だけでなくオヒョウもです。

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かつて、テレビもなく、娯楽も無かった時代、このお祭りの道化師のような振る舞いは、この地域の人には貴重な「笑いの元」だったに違いありません。しかし、テレビにお笑い番組があふれ、ギャグとコントに囲まれた生活を送る現代人に、この素朴なパフォーマンスは陳腐です。あまつさえ、お笑いのテンポはどんどん速くなっているのに、この冗長さは、時代に合いません。 待たされる観客と柱上の若者にとっては、犯罪的といえる感覚です。 

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後で仮面をとった顔を見ましたが、その男性は自分の演技で、観客が大笑いしたことに満足のようすでした。 しかし、人々が面白がったのは最初だけで、後半は嫌悪感すらいだいていたことに、この男は気付いていませんでした。

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ちょうど、オヒョウがデジカメの手元に下ろした瞬間に、男は太鼓をトンと叩き、稚児を抱えた男たちが柱松に殺到しました。既に白い紙に包んだ木箱に入れた、ホダ木は柱の上に届いており、火打石による着火競争が始まりました。

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ケッポケッポと石を叩く音は、かなり離れたオヒョウにも聞こえます。

(これは、決してライターやマッチは使わないよ・・という証拠かな)。やがて、片方に火が付き、勝負は決しました。今年は豊作だけれど、平和ではない・・とのご託宣です。

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三方から荒縄で引っ張って固定されていた柱は、火が点いた直後に引き倒されます。そして人々が集まり、枝を奪い合っています。どんなご利益があるのかは、聞き漏らしました。

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それが終わると、一斉に観客は帰路につきます。皆さん、さんざん待たされた鬱憤をはらすべく、すばやい動作で下の駐車場にむかいます。幸いにして、雲はまだ天空の多くをおおってはおらず、雨はまだ降っていません。 そして我々も直江津に向かうことにしました。 

以下 次号


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