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【 中国の白いネコと黒いネコ その1 】 [中国]

【 中国の白いネコと黒いネコ その1 】 

中国広東省佛山市のホンダの工場で労働争議が相次ぎ、完成車の組立がストップする事態に追い込まれています。 ストライキは複数の部品メーカーで順番に発生しています。

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一部マスコミは、同じ会社にいる中国人社員と日本人社員間の、50倍とも言われる待遇格差に、従業員が反発していると報じています。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100605-00000009-scn-cnhttp://netallica.yahoo.co.jp/news/126037 

しかし、よく見ると、問題はそんなに単純ではなさそうです。

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50倍という数字を説明するには、確かに先進国から派遣された海外駐在員と、現地で採用された現業社員の賃金体系の違いで考えるしかありません。それをうまく説明できるかは現地の経営者の手腕ですが、簡単ではありません。 しかし、問題はそれだけではなさそうです。

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1. 完成車工場と、部品工場の待遇格差をどう考えるか?

同じ会社の社員なら、同じ賃金体系で公平に扱うべきという考えがありますが、会社が違えば話は別です。日本では一般的に、子会社や関係会社(部品メーカー)の給料は、親会社(完成車メーカー)のそれに対して、少なくなります。 ホンダ本体とホンダの部品メーカーとで待遇格差があるのは日本では、仕方ない事ですが、それを中国人従業員が納得していない可能性があります。

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2. ホンダの賃金水準が、現地の他の企業のそれと比べてどうか?

日系企業が現地社員を雇う時は、一般に、その土地での平均給与に対して高からず、低からずという辺りを、給与額として設定します。しかしこれが難しいのです。

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高過ぎても、地域の調和を乱し、賃金相場のインフレを招きます。それに、日系企業は厚遇が当たり前だとナメられる可能性もあります。一方、低すぎては、優秀な人は集まりませんし、きてもすぐに他の勤務先に転職されてしまいます。 うちの会社はケチだとなると、社員のやる気も出ません。

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問題は、急成長の過程で賃金相場が急速に変化する場合です。日系企業が工業団地に進出した時は、平均的な給与を提示したのに、後から進出した欧米系、あるいは台湾系、韓国系が人材確保の為に高い賃金設定で人を集めれば、いつの間にか日系企業が一番低賃金になったりします。そうなると人が去っていくか、ストライキになります。

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中国の人は4000年の昔から、雇われた時の待遇に敏感です。少しでも不満があると、プライドが傷つくのか、簡単に転職します。以前、別のブログに書きましたが、孟嘗君の故事に「長鋏よ帰らんか」という有名な逸話があります。待遇に不満があれば、何時でも辞めていいんだよ・・と刀に語りかける話です。

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3. 社員の会社に対するロイヤリティ(忠誠心)はどうか?

中国広東省佛山市にはホンダに続いてフォルクスワーゲンが新工場を建設する事が発表されました。 日本企業の待遇に不満なら、明日からフォルクスワーゲンに転職したっていいのです。http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20100610/230833/ 

中国人社員は会社へのロイヤリティが低く、ライバル会社がその地域に進出する時は、特に転職の可能性が高まります。 逆にそれに乗じて待遇改善を要求する場合もあります。

だから日系企業の現地法人の労務担当者は、常に注意深く、情報を仕入れて対応する必要があります。

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騒動が発生するのは自動車だけではありません。 また日系企業だけでもありません。台湾系企業の方が問題は深刻です。

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従業員が自殺したり、労働争議が起こっている富士康(FOXCON)の場合は、より問題が深刻です。同社は昆山にも大規模なパソコン組立工場を持っており、オヒョウもその前をよく通りましたが、そこで働く労働者の賃金水準は低いままです。 月給14千円程度では、自分達が組み立てる家庭用パソコンを買うこともできません。

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以前のブログでも、申しましたが、自分が生産する商品を自分が贖えない不合理を、オヒョウはカスピ海のチョウザメ漁型ビジネスと言います。そのような状態は長続きせず、いずれ問題化します。

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一部の報道では、富士康のオーナー(台湾)は資産5000億円を誇り、これは一人の従業員の所得の280万年分だという事です。

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オーナーが台湾人の場合、日本人より遥かに厳しい経営をします。オヒョウの知るある企業では、毎年、従業員の1割が自動的に解雇されます。特に問題が無くても、成績の下位10%が解雇されるのです。これが従業員に対して、大変なストレスである事は想像に難くありません。 幹部職員や管理職だけでなく一般作業員にもこのルールは適用される訳ですから、社員はたまりません。

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厳しい勝負の世界である、日本の将棋のA級順位戦でも、毎年10人中2名が陥落しますが、下のB級でそのまま仕事ができます。 Jリーグだって1部を陥落しても2部があります。プロ野球に至っては、最下位でも陥落しません。 それらと比べて、ただの工場従業員にも解雇制度が適用される台湾企業は苛烈です。

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それが可能になるのは、社員をクビにしても、就職希望者がたくさんいるから問題ない・・という中国の社会事情があります。新聞では、富士康を、なぜか自殺者がよくでる工場として、心霊スポットのような紹介をしていましたが、事情を知る者にはむべなるかなという事です。

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中国での、経営者と労働者の格差はかつてないほど大きくなっています。かつて鄧小平は、経済的に伸び悩んでいた中国に改革開放経済を導入しました。 共産主義革命は富の平等な配分を、旨としましたが、鄧小平は「まず豊かになれる者から豊かになればよい。(一時的に格差はできるが)貧しい者にも、やがて(神の見えざる手によって)恩恵が来るから、皆が豊かになる」と説明しました。 共産主義者の言葉とも思えませんが、彼は平等を追求するだけでは、富は生み出されず、誰も豊かになれない・・と考えた様です。

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彼が念頭に置いたのは、間違いなく日本の高度成長です。日本では、民間企業がそれぞれに富を求めても、結果的に所得の差は縮まり、貧富の差が小さい社会が実現したではないか・・と。

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実際には、現代の中国の高度成長は、日本の昭和時代の高度成長とは似て非なるものです。 鄧小平の考えた通り、改革開放経済で経済成長は加速しましたが、貧富の差は増大するばかりです。どうしてこうなったのか・・? 理由は多くありますが、次号で少し詳しく検討します。                                  


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