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【 夕焼けの色に違いはないか? 】 [雑学]

【 夕焼けの色に違いはないか? 】 

ずっと昔、祖父から聞いた飛騨高山の話です。ある日突然、青空の色が変わり、くすんだ感じになったそうです。そして夕焼けの色が変わり、今までに無かった赤茶けた色彩になったとか。 その現象はその後何年も続いたのですが、最初の数カ月は原因が分からず、人々は「どうしたのだろう?不思議な事もあるものだ・・」とお互いに話したそうです。

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やがて遅れたニュースが山間の小都市にも届きました。 1883年インドネシアのクラカタウ島の火山が噴火・爆発し、島の大半が吹き飛ぶという事件があったのです。夕焼け色の変化は、その時上空にあがったエアロゾルの影響だったのです。 でも多くの人は、赤道直下の蘭印の火山の噴火がどうして飛騨の空の色を変えるのか、理解できなかったそうです。

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クラカタウ島の付近は大災害になっていました。対岸のスマトラ島には大津波が押し寄せ、多くの犠牲者を出しました。日本には「島原大変肥後迷惑」という言葉があります。これは寛政4(1792)に、雲仙普賢岳が大噴火し、対岸の熊本が大きな被害を受けた事を示す言葉ですが、類似した大災害がインドネシアで発生したのです。

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余談ですが、製鉄会社にいた頃、世界中の製鉄所のマップを作った事があります。インドネシアにクラカタウ製鉄という小規模な製鉄所があるのを見て不思議に思いました。 あの島は吹き飛んだのではないのか?その後、中国で勤務した頃の上司、Oさんから、クラカタウというのは、その地域の名前で、単一の島だけを指すのではない・・と教わりましたが。

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しかし、夕焼けの色の変化は、一つの不気味な予兆に過ぎなかったのです。 火山の大規模噴火によって成層圏に上がったエアロゾルは、太陽光線を遮り、地表の気温を下げます。その結果、世界的に気温が下がり、農作物の収穫量に影響がでました。日本でも1884年の東北地方の冷害の原因であったとされます(ウィキペディア情報)。

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不思議な夕焼けの色は人々の不安感をあおり、ムンクが代表作「叫び」を描くきっかけになったという説もあります。

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しかし、調べてみると、オヤッ?と思います。 他の資料にあたってみると、1884年の日本は特に凶作ではありません。江戸時代以降、日本では冷害による大凶作や飢饉が何度も発生していますが、火山の噴火と対応するものは、その半分くらいです。 残りの半分は火山の噴火とは対応しません。

http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20100423/103679/?P=1

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そして、逆に大火山の噴火があっても、冷害や凶作にならなかった年もあります。 これはどう解釈すればいいのか?

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地球規模での気候変動には、さまざまな要因があり、まさに複雑系の典型です。 気温変動の主な因子をあげれば、

1. 太陽活動の変化      (太陽黒点の増減)。

2. 地球温暖化ガスの増減  (今、注目しているものです)。

3. 地表の反射率の変化(雪や氷で覆われている面積の増減)。

4. 緩衝となる海水量の増減 (極地の氷の増減と裏腹です)。

5. 大気中の太陽光反射粒子の増減 (火山性エアロゾル)。

などがあります。少なくとも、上記の5つの要素を考慮すべきですが、どれも単純ではありません。 その中で、5.の火山噴火と大気温度の変化は、比較的に相関が明瞭です。 それでも火山噴火で、気温が下がる場合と下がらない場合があるのです。 これをどう解釈すべきか?

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以下、根拠レスのオヒョウの推測ですが・・・、

1. 火山噴火のエアロゾルに硫酸塩や珪酸塩が多い場合は、太陽光の透過率が低下し、気温が下がる。(一般に特の夏季の気温が低下するとされます)。

2. 火山噴火のエアロゾルに硝酸塩が多い場合は、温室効果化ガスが増えて、気温は上昇する。

3. 噴火によって有機物が燃焼すれば、CO2が大量発生し、気温は上昇する。

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硝酸塩は、高温の空中で亜酸化窒素を合成する可能性があります。これはCO2300倍の温室効果を持っており、2.の場合は、結果として地球が温暖化する可能性があります。

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エアロゾルは、成層圏まで上昇すると、なかなか落ちてきませんが、粒子の大きさ、密度によって落下速度も異なります。だから噴火の後、時間をおいて、気候が寒冷化したり温暖化したりする可能性があります。

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今回のアイスランドの火山噴火では、相当量の火山灰が北半球の上空に広がりました。 多くの火山灰は短期間に地上に落下します。しかし、同時に噴出したエアロゾルは、上空に2,3年残るかも知れません。

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それらの量と組成をモニターし、気温変動との相関をとれば、面白い結果が出るかも知れません。今回の噴火で気温が上がるか下がるか、予測出来ないので、本ブログも要領を得ない文章になりますが、人々が気候変動に深い関心を持つようになれば、ひとつの成果と言えます。その結果、地球温暖化が、一部のニュースキャスターが考える程単純なものでない事がわかれば、それだけでも大発見です。

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でも、もし気象学の研究活動が事業仕分けされてしまったら・・・、その時は、夕焼けの色を確認しましょう。夕焼けの色が昔と違うようならアイスランドのエアロゾルが上空にあるという事です。 それが気候に影響を与えるかどうか見守ればいいのです。

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くどいですが、夕焼けの色が変わって、気温が上がるか、下がるか・・・は分かりませんが。


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おじゃまま

面白く読ませていただきました。
by おじゃまま (2010-04-27 16:49) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

しばらく、特殊な専門に偏った雑文が続きますがお許しください。
興味をもたれる内容のもののみ、拾い読みでもしていただければ
幸いです。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-04-28 17:00) 

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