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【 いい度胸だ 】 [雑学]

【 いい度胸だ 】 

殺伐としたニュースが多いのはいつものことですが、時々「オヤッ?」と思ったり、「ニヤッ」とするニュースを見つけます。

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先日、報道された日本情報処理学会が、日本将棋連盟に挑戦状を送り、将棋連盟がそれを受けた・・という話は、ちょっと愉快なニュースです。http://www.ipsj.or.jp/03somu/shogi/index.html日本の計算機学会や情報処理学会は、長い間ゲームのアルゴリズム研究に冷淡でした。所詮遊びごとではないか・・という考えです。そのため、コンピューター将棋やコンピューター囲碁の研究は、外国のコンピューターチェスの研究に比べ、大幅に遅れていました。

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もっとも、これには異論があり、囲碁や日本の将棋は、チェスや中国象棋に比べて、格段に難しく複雑なゲームなので、初期の計算機では歯が立たなかったという事情もあります。

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20年以上前になりますが、大型計算機のメーカーが作成した将棋のプログラムと、米長が余興で対局した事があります。実はプロの棋士で最初にコンピューターと対戦したのは米長だったのです。

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序盤は、大型コンピューターが定跡どおりの手を指し、名人戦なみの対局だったのですが、中盤に突然、コンピューターが停止し「自分は優勢だが、これ以上続けるには膨大な時間とコストがかかるので、ここで投了します」と言って、勝負を終了してしまいました。

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おそらく、可能性のある全ての指し手をシラミ潰しにする原始的なアルゴリズムだったので、持ち駒ができて選択肢が格段に増えた段階で、計算を終了せざるを得なかったのだと思います。

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その後、コンピューター将棋は飛躍的に進歩しました。それは大型計算機やスーパーコンピュータではなく、パソコンで動くソフトウェアです。大会社の研究員や大学の研究者よりも、市井のソフトハウスや、将棋好きのプログラマーが中心になって開発したアルゴリズムのおかげです。そしてついに2007年には、羽生と並ぶ将棋界の第一人者である渡辺竜王が、将棋のフリーソフトボナンザに、危うく負かされそうになりました。

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それを見て、将棋連盟会長の米長邦雄は、連盟の許可無しにプロの棋士とコンピューターが対局するのを禁止しました。 コンピューター対プロ棋士という新たなイベントがお金儲けのチャンスになるから管理すべきだという考えと、コンピューターにプロ棋士が負けたら、将棋連盟の権威が失墜し、仕事が無くなる恐れがあるという二つの理由によるものと思われます。

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その時点で既にチェスの世界では、人間はコンピューターにかなわなくなっていましたが、それでチェス人気が衰えたり、トッププレイヤーの収入が下がったりした様子はありません。

(チェスの世界では日本の様に新聞社が主宰する棋戦があったり、連盟から対局料が払われる仕組みはありません)。

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今回、情報処理学会が挑戦状を出し、それに対して日本将棋連盟が、「いい度胸だ。受けて立つ」と返事したのは、将棋連盟が「コンピューター対人間の対局」についての事前検討を完了し、新しいビジネスモデルとして成立すると判断したからでしょう。

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それを面白おかしい文章の果たし状の形にして、公開したのは米長流の茶目っ気です。しかし・・・、初戦の対局相手が女流棋士の清水市代二冠では本当に果たし状を受けた事になりません。

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実はオヒョウは清水市代のファンで、彼女の凛とした姿勢と知的な風貌が大好きです (将棋の内容についてはよく分かりませんが)。彼女がまだ高校の制服で対局していた頃に「将棋世界」誌の写真で見て以来のファンです。そして、対局のかたわら、子供たちに将棋を教え、菜園を耕す日々を送る彼女の生き方にも賛同します。 しかし彼女は女流棋士ではトップと言えますが、本当のプロである男性棋士と比べると、その棋力は劣ります。

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そして、コンピューターとの対戦なら、同じ女流でも中井広恵の方が向いているかも知れません。コンピューター相手ではありませんが、インターネットやLANを介した試合では、中井が強いからです。

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想像するに、将棋盤の向こうに対局相手がいる場合と、いない場合では微妙に棋力が変化するようです。既に女流棋界の第一人者としての貫禄がある清水は、それだけで対戦相手を萎縮させ、心理戦で有利になれます。ちょうど、大山康晴が相手を威圧して、本来の棋力を出させなかったのと同じです。しかしコンピューターはその種のプレッシャーとは無縁です。だとすれば、インターネット対戦に強い中井や、若くて心理戦に無縁な里見香奈の方が向いているかも知れません。

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冷静に考えて、渡辺竜王を苦しめたボナンザと対局した場合、清水に勝ち目はほとんどないでしょう。しかも、コンピューター将棋は確実に毎年強くなっています。仮にソフトがそのままでも、CPUの計算速度、能力は、毎年改善されていて、同じ持ち時間なら最新のコンピューターは、渡辺が対局した頃のそれよりはるかに強くなっています。

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ではなぜ、米長は女流棋士を最初の対局相手に選んだのか?多分、負けても、プロの男性棋士が負けた訳ではないから、連盟とプロ棋士は傷付かないという打算があったものと思います。

そしてコンピューターが勝った場合、段階的に、女流 → フリークラス → C2組と対戦相手を上げ、最後に羽生や渡辺竜王というトップ棋士を対局させるという形にして、何度も見せ場を設けるという興行師的な思惑があったものと思います。

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米長は「いい度胸だ。まずは女流棋士と勝負しろ」と言いますが、本当は、名人・王将クラスでもコンピューターにかなわないだろうと予想しているはずです。彼は内心ビクビクしているでしょうが表には出しません。かつては、さわやか流とか泥沼流と言われた米長ですが、その計算は非常にしたたかです。そして将棋ファンの関心はクライマックスの羽生VSコンピューター、或いは渡辺VSコンピューターに集まるはずです。

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オヒョウの棋力はアマの初段にも及ばす、コンピューターをクアッドの新型にしてからは、将棋でも囲碁でもコンピューターに勝てなくなりました。オヒョウは論評できる立場にないのですが、でも興味はあります。もちろんオヒョウが応援するのは、清水市代女史ですが、多分負けるだろうなぁ。勝てばいいけれど。


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夏炉冬扇

お早うございます。
勝負事は「人と人」がやはり面白いかと…
by 夏炉冬扇 (2010-04-14 07:05) 

釣られクマ

>想像するに、将棋盤の向こうに対局相手がいる場合と、いない場合では微妙に棋力が変化するようです。
対局成績でそういう傾向みたいなものがでるのも意外ですね。
楽しく読ませていただきました。
by 釣られクマ (2010-04-14 11:41) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

オヒョウは全く同感です。勝負事も勿論、ゲームや遊びは、みな他人と一緒にやらなきゃ意味が無いと思います。
しかし、最近はひとりで、ゲーム機で遊んでいる子供が多いですね。
ああ、大人もか・・。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-04-14 18:18) 

笑うオヒョウ

釣られ熊様 コメントありがとうございます。

どういう訳か、勝負師の間にも相性というのがあるのでしょうね。
客観的にみて、それほどの実力差と思えないのに、対戦成績が一方的に偏っている例があります。 相撲取りの世界もそうですが、囲碁将棋の対戦成績もそうみたいです。 相手が強いと言う暗示にかかってしまうのか、萎縮してしまうのか・・・インターネットを介した対局では、そういう事はないのかな・・?と思いますが、私はいまだ試しておりません。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-04-14 18:22) 

笑うオヒョウ

済みません。 記載内容に誤りがあった可能性があります。
渡辺明竜王が、コンピュータープログラム ボナンザと対局したのを2005年と記憶していましたが、彼のブログには2007年とあるそうです。

私の錯覚と思われ、お詫びして訂正致します。
by 笑うオヒョウ (2010-04-16 15:13) 

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