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【 ハリー・トルーマンをどう考えるか 】 [アメリカ]

【 ハリー・トルーマンをどう考えるか 】

先日広島ピアノさんのブログを読んでいて、ひとりの男性の事を考えました。

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アメリカには、リンカーンや、ケネディのように、政党や世代を超えて人気のある政治家・大統領がいます。それとは別に、派手ではないけれど、誰からも悪く言われない、誰からも尊敬されている政治家もいます。

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政治家を意味する英単語はPoliticianですが、これは手練手管を駆使する策士という意味が強く尊敬の対象たりえません。 一方尊敬される政治家を意味する言葉は、Statesmanです。 これは人格高潔なリーダーという意味合いが強くなります。

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誰からも尊敬されるStatesmanのひとりは、ハリー・トルーマンではないか?とオヒョウは考えます。勿論、オヒョウは多くのアメリカ人にインタビューした訳ではなく、英会話学校の先生など少数の人から聞いただけですが・・・。

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彼は富・財産や権力・名誉に恬淡とした人物で、清貧の人生を送った政治家とされています。 彼の人物像について、オヒョウがつべこべ語るより、西川渉氏/山野豊氏のホームページをご覧頂いた方が的確です。http://www17.ocn.ne.jp/~wn380yy/seihin.html 

トルーマンは再選が確実視された2期目の大統領選挙にあえて出馬せず、アイゼンハワーに大統領の座を譲っています。 同じように前任者の死去によってトップに立ち、さらに再選が確実なのに、自民党総裁選に出馬しなかった鈴木善幸に似ていますが、実態は違います。トルーマンは多くの仕事をしたのに、鈴木善幸は何もしませんでした。

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しかし、トルーマンを高潔で善意の人、清貧の士とするのにオヒョウは猛烈な抵抗を感じます。

「 彼は、日本に原爆を落としたではないか。それも2発も。日本を降伏させるためには、1発でも十分過ぎたのに 」

彼はポツダム会談から帰る大西洋上の軍艦の上で、広島の原爆投下成功の報告を受けて喜び、食堂の柱をフォークで叩いて、食事中の士官を集め「諸君、これで戦争に勝てる」と大喜びしたのだそうです。

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私には人類初の原爆投下命令を下したトルーマンを立派な人とはとても認められないのですが・・・・、しかしアメリカ人に訊くと全く違った意見です。

「 オヒョウさん、彼は原爆投下を止めさせた人物ですよ。朝鮮戦争が泥沼状態になった時、マッカーサーはトルーマンに原爆使用を願い出たが、トルーマンは断固としてそれを許さなかった。彼は広島・長崎の惨状を聞いて原爆使用についての考えを変えたのでしょう 」

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トルーマンは太平洋戦争終結までは、原爆投下に何ら呵責を感じなかったようです。その後、考えを改めたのなら、それは結構な事ですが、私から見れば遅すぎます。 しかし、広島・長崎の事は別にして、トルーマンが核兵器の使用をためらう男だったとの前提で考えます。

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トルーマン以降、核兵器に関するアメリカの良心のガイドラインは、彼の考え方に沿っています。 つまり、

・太平洋戦争終結のための、2発の原爆投下は必然の手段であった。正統な行為であり、非難にはあたらない。

・しかし、太平洋戦争の後は核兵器を使用していないし、これからも使用をためらい続けるのが、アメリカの良心だ。しかし、必要な時には使用する。

( 彼らの良心とはかなり安っぽいものなのですね )。

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戦後、何度か、トルーマンは日本の新聞にも寄稿し、上記の主張を繰り返しています。

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トルーマンのガイドラインは、ずっと続いていましたが、この考えを一歩踏み出し、最初に核兵器を使用した国の責任について言及したのはオバマ大統領です。彼も過去の原爆投下についての謝罪はしていませんが、その責任の重さには言及したのです。そこまでに60年がかかっています。

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しかし、オヒョウはそこで別の事を考えます。もしマッカーサーの主張が通り、朝鮮戦争でアメリカ軍が原爆を使用したならどうなったでしょう。当時、東側の核兵器は未発達だったので、おそらく戦争はアメリカ/韓国の勝利になったでしょう。しかし、東西の境界線が38度線から鴨緑江に移動しただけで、東西対立の抜本的解消にはならなかったでしょう。

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それでも北朝鮮が敗北して金日成体制が存在しなければ、北朝鮮に暮らす2000万人を超える人々は、自由主義社会の中で暮らす事ができました。 北朝鮮という政府(あるいは王朝)が無ければ、彼らは飢える事もなく、今よりどんなにか幸せで人間的な生活ができていたに違いありません。

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北朝鮮の人々は、原爆の惨禍と引換に、自由で人間的な暮らしを手に入れる事ができた・・とは言っても、これは外部の人間がとやかく言う事でもありません。それにこれは難しい問題です。実のところ、オヒョウは原爆の惨禍も北朝鮮の悲惨で非人間的な暮らしも知らないのですから。

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トルーマン以降、アメリカは核兵器を使えないモラトリアムが続いています。そのためか、多くの戦争で泥沼状態に陥り、明確な勝利を得ていません。アメリカの青年は、今でも戦場で多くの血を流し、毎年の莫大な戦費は、戦後一貫してアメリカの経済力を弱体化させています。

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核兵器さえ使えれば、アメリカの戦争はもっと楽なのに・・・という悪魔の囁きもあるかも知れません。しかし、ここは我慢してもらう必要があります。 ベトナム、アフガン、イラクと続く、アメリカの泥沼はトルーマンの罪滅ぼしの延長と考えるのが妥当だと、オヒョウは考えます。アメリカ人は同意しないでしょうが。


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コメント 7

白熊パパ

核の抑止力の意味と事実を東西冷戦中、冷戦崩壊後を考察して
歴然たる有効な手段と自分は認識してます。
また唯一の原爆投下被害国である我が国こそ戦術核レベルの
核兵器保持が許されのだと確信しております。
リベラルという偽善を背負ったアメリカからの独立を
まずは日本がなすべきことですが・・・。
by 白熊パパ (2010-03-19 02:27) 

笑うオヒョウ

核の戦争抑止力については、私も認めます、大戦争がおこらないのは核抑止力のおかげtも言えます。
しかし、小規模な戦争やテロはなくなりません。そして核保有国の横暴に対して、非保有国は、あまりにも弱いです。 以前、ロシアがエリツィンの時代に、北方領土問題を強く、日本が主張した時、「我々は核保有国だ。なめてはいけない」と恫喝に近い返答をした事があります。 実は中国人もそれに近い発想があり、非核保有国の領土をかすめ取ったところで、彼らには何もできまい・・と考えているフシがあります。彼らには日本の唱える非核化は全く通じません。 では日本が例えば戦術核を持つべきか・・という点は議論がありますね。 このあたり、私も書き続けようと思います。
by 笑うオヒョウ (2010-03-19 02:58) 

おじゃまま

戦争、核爆弾、圧政、内戦…。
日々の暮らしの中ではまったく関係ないことながら、
折に触れてトゲのようにチクチクと…。
「あれさえしなければ…」と思っても、周りがもう動き出していて
収拾がつかず、もがけばもがくほど沈んでしまう泥沼みたいな…。
普通の日常生活なら、笑いあえば済むことでも、国同士となると…。
by おじゃまま (2010-03-19 17:06) 

夏炉冬扇

こんばんは。
今日も新鮮に、興味深く拝読しました。
もう土日です。
by 夏炉冬扇 (2010-03-19 22:16) 

笑うオヒョウ

白熊パパ様、おじゃまま様、夏炉冬扇様、
コメントをありがとうございます。
アメリカにも中国にも個人的につきあうと尊敬に値する人格者がたくさんいて、彼らとつきあうだけで、人生が豊かになる思いがしたりします。それなのに、国家間の話になると、どうして愚かになり、欲望をほしいままにして、醜いふるまいをするのか・・、私には分かりません。必ずしも核兵器の問題に限った事ではないと思います。 このあたり、私の頭の中を整理して、自分の言葉で駄文を述べてみたいと思います。 次のコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-03-19 23:59) 

牛肉麺

お久しぶりです。今日も大変勉強させていただきました。
戦争も、兵器も、まして核兵器がもちろん人類に百害あって、一利なしです。それでも、戦争がなくならないのはなぜでしょう。
核兵器の被害者と戦争の被害者もまたイコールしていないです。
唯一核兵器の被害者という日本の立場は、逆に自惚れになっていないか心配です。
最近核より有効な手段も表れ、アメリカのああいう映画を見れば人類の明日を杞憂せずに得られないですね。
それでも、戦争はなくならないのは、やはり人類の本性ではないでしょうか。
by 牛肉麺 (2010-03-25 15:04) 

笑うオヒョウ

牛肉麺様 コメントありがとうございます。

私が高校時代に漢文を学んだ時、先生が詩経にある反戦の歌を紹介され「世界最古の歌集にも反戦歌はある。数千年の間、人々は反戦を歌い、戦争を忌まわしく思っているのに、いまだに戦争はなくならない。 これは人間の一つの業(ごう)と言うべきか?」と言われました。

諦観に立ちたくない私は、その意見に少し反発しましたが、今になってみると、それが正しかったのかも・・・と思います。 我々が一方的な被害者ではなく、加害者でもあることは、重要な事実であると思います。 外国人と話す度に、私自信の理解が足りない事を思い知らされます。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-25 17:28) 

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