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【 地球温暖化対策基本法 批判 その1 】 [政治]

【 地球温暖化対策基本法 批判 その1 】

民主党政権が発足した時、多くの官僚は元気をなくし、中には屠所の羊のような人もいたようです。 なにせ、官僚を悪とし、官僚支配を打破するというスローガンの政党ですからしかたありません。でもその中で元気がよくなった官僚も一部にいました。環境省の人達です。彼らの主張はどうしても、経産省や他の官庁と対立してしまいます。 そしてその結果、力の弱さを実感する、敗北の歴史が環境省の歴史でした。

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しかし鳩山首相は環境を大切にするのがモットーですから、環境省の立場と主張をよく理解してくれるはずです。実際、COP15では、CO2削減目標に野心的な目標を宣言しました。この首相の宣言を後ろ盾にすれば、環境省は従来以上に活動しやすくなるはずです。彼らには千載一遇のチャンスです。

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そして環境省の考えを盛り込んだ地球温暖化対策基本法が成立しました。しかし、そこには大きな問題点があります。

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1.COP15で日本が表明した削減目標は、他の主要排出国も参加し責任を負う枠組みを前提とするものでしたが、それがないのに国内法が先に成立しました。 予想はしましたが、政府は、他の主要排出国の動向とは関係なく、日本独自の削減案を実行する覚悟です。

2.CO2削減が、エネルギー供給側の問題点だけに偏っています。経済学に、サプライサイドの経済学と需要家側の経済学があるように、省エネ・省資源や、CO2排出規制についても、エネルギー供給側とエネルギー消費側の両方の視点があります。どちらか片方に偏っては本質を見失います。 今回の基本法はそのバランスを欠いています。

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2.の内容をもう少し具体的にわかりやすく書きますと、例えば電気料金をどうするか・・・・という問題があります。サプライサイド(なんだかレーガノミクスみたいですが)の問題に着目すると、CO2を減らす為には再生可能エネルギーの比率を増やすべきです。太陽光発電や風力発電は密度が低く、かつ不安定だから、どうしても高コストになります。 その結果電力料金は高くなります。今度の基本法では、家庭の太陽光発電で生じた電力を、電力会社が高いコストで買取りますが、その負担は電気代に上乗せされます。

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その結果、どうなるか・・といえば、電力は相対的に高価なエネルギーになります。 その結果、非効率な化石燃料燃焼型のエネルギーの比率が増します。

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オヒョウが子供の頃、電気暖房は贅沢でした。電気料金が高かったからです。 冬の暖房は石油ストーブ、そして局所暖房である電気コタツなどでした。 厨房での調理・加熱、風呂は全てガスでした。

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今、オヒョウが暮らすアパートでは、暖房はエアコンと赤外線ヒーター、厨房の調理は、電子レンジとIHヒーター、それにニクロム線式の電気コンロで、ガス調理器も石油ストーブも使いません。 ガスを使うのは、風呂と給湯だけです。 

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ここで、電力料金が高くなれば、せっかく進んでいるオール電化の流れにブレーキを掛ける事になります。 時代に逆行する事になるのです。

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一度内燃機関で発電機を回して発電すると考えると、直接化石燃料を使う場合に比べて、電気を使う事は非効率のようですが、実際には原子力や水力発電もあるので、CO2発生は少なくなります。

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需要家サイドで考えた場合、CO2発生を減らす有力な手段は電化なのですが、電力料金を上げる”サプライサイド”の政策はそれに反します。

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さらに電力コストの増大は、間接的に省エネとCO2排出抑制を妨害します。 一例を挙げれば、アルミと鋼の比較です。かつて自動車材料として、鋼とアルミ合金が競い合った事があります。

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アルミ合金は比強度が高く、車体を軽量化でき、走行性能や燃費が良くなりますが、反面、プレス加工が難しい、溶接が難しい、種類が多くリサイクルが困難・・・等の理由があってなかなか普及しませんでした。そして、アルミを使用する上での最大のネックは、電気の缶詰と呼ばれる素材の価格の高さです。あらゆる金属の中で最も安価な鋼にはかなわなかったのです。

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結局アルミ合金は、アウディA8やホンダNSXといった高級車のボディや一部のスポーツカーのボンネットといった外板に使われた他は、エンジンの鋳物に使われたくらいです。

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しかし、自動車の燃費競争が更に激しくなり、車体の軽量化が求められれば、再び軽合金が見直される時代がきます。それなのに電気代が高くなっては、アルミの採用が抑制されます。つまり、消費者側での省エネやCO2排出削減が阻害されます。

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勿論、アルミ精錬は電力料金の安い外国で行われる・・とか、軽合金でなくても、プラスチック化で軽量化できるとか、ハイテン鋼でもそこそこ軽いとか、いろいろな議論はあるのですが、電力料金の引き上げは、ある面ではCO2を増やす・・というのは事実です。

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そしてもう一つ、新しい基本法には欠陥があります。それについては次号で申し上げます。


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広島ピアノ

ルメイに関するコメント、有難う御座います。
憤りを感じることばかりですが、なんとか私たち一般の人間だけでも、まともな良心は持ち続けたいところです。
by 広島ピアノ (2010-03-16 11:02) 

カーボンオフセット

 それにしても日立金属の高性能冷間工具鋼SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。先月の、日刊工業新聞社の「プレス技術」で読みましたが、微量の油を塗ったセミドライ状態で、摩擦させると先端技術のDLCのような自己潤滑性(摩擦係数が下がる)が出るなんて。耐摩耗性もたかいのでコーティング費用分コストパフォーマンスがよく、耐荷重能も相当応力で2500MPaと高強度でベアリング・金型などのいろんな機械の転動・摩擦・摺動部品などの機械要素に使えそうだ。まさにノーベル賞級の発明だ。
by カーボンオフセット (2013-02-25 16:25) 

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