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【 結晶世界 その3 】 [鉄鋼]

【 結晶世界 その3 】 

金属組織がどういう結晶であろうと普段の生活に関係ありませんし、球体をどうやったら最密に充填できるか・・という問題もパズルに過ぎない・・・と考える事もできます。でも、現実には結晶構造は、古くて新しい問題であり、我々の生活にも深く関わります。

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今話題になっているのはマッカイ結晶という構造だそうです。ダイヤモンド型の炭素原子を圧し潰したら、この結晶に成り得る事が数学的には知られていますが、今のところ現実には存在しない結晶構造だそうです。

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この結晶が重要なのは、充填密度が高いからです。太陽電池の材料に向いているのです。スカスカの結晶だと太陽電池にした場合、波長によっては、光線が電池を透過したり反射してしまい、効率が低下するのだそうです。原子の密度を高くすれば、エネルギーを吸収する波長域が広がります。つまり太陽光線を受けた時の、電気エネルギーへの変換効率が高まります。

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CO2排出量の問題や、石油価格の高騰の問題を別にしても、太陽電池が今後更に普及する事は確実です。そして現在のシリコン型の太陽電池の変換効率に限界がある事も事実です。きっと将来の花形は、炭素のマッカイ結晶を利用した太陽電池でしょう。 透明で屈折率が極めて高いダイヤモンドから不透明で真っ黒なマッカイ結晶を作るのです。もっともオヒョウにはダイヤモンドを押し潰して変形させる方法が思い当たりません。 もっと正確に言えば、オヒョウはダイヤモンドと縁の無い世界に暮らしています。

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多分、未来の研究者はフラーレン(C60)かカーボンナノチューブ、またはカーボンナノホーンから作るのだと思いますが、自信はありません。

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そして、現実の社会を見た時、すべての物質を結晶質と非晶質(アモルファス)に分けて考える事ができます。ガラスは非晶質、水晶は結晶、かき氷は結晶、ソフトクリームは非晶質、羊羹は非晶質で、氷砂糖は結晶・・・そして生物も分類の対象です。

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オヒョウが、学部の一年だった頃、ウィルスは生物か否かという変な議論をした事があります。ウィルスは、子孫を作って世代交代する事、新陳代謝する事など、生物の要件をある程度満たしています。しかし、生物学の遠藤教授がそこで言われました。「ウィルスは結晶化するのだぞ、いいかね。結晶になる生物などあるかね?」

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確かに粘菌の一種などは結晶みたいになりますが、本当に結晶になるのは(生物では)ウィルスだけです。結晶であるという事は、エネルギーレベルが低く、時間軸に対して独立・・・・平たく言えば、じっと静止していて不変の状態だという事です。 動かないもの、生命活動をしないものを生物と言えるか? それは石ころと同じではないか?先生はそう問いかけられたのです。

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生きとし生けるものも、結晶となるのか?この問いに対して、SF小説(というよりファンタジー小説)で答えた人がいます。 作家のJG・バラードで小説の名前は「結晶世界」。ちょうどウィルスが生命か否かの議論を、オヒョウたちが教室でしていた頃に書かれた小説です。

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オヒョウがこれを読んだのは、随分昔で、詳細は忘れました。確かアフリカの奥地で、すべての物が透明な結晶になっていくという話です。樹木も動物もが透明な水晶みたいな存在になっていくのです。人々は恐れおののきますが、どうすることもできません。 しかし、主人公たちはやがて美しい光の中で全てが停止した静寂の世界をすばらしいものと感じるようになり、いつしか自分が結晶化する事を受け入れていくという話でした。

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オヒョウは、その数年後に、志賀高原横手山のスキー場に行き、一面霧氷と樹氷におおわれた世界を見て感動しました。バラードの「結晶世界」みたいだと、傍らにいた友人に語りかけたのですが、彼女は「フーン」と言って、なんら興味を示しませんでしたが・・・。

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世の中の全ての現象をエントロピーを増大させる行為と、エントロピーを減少させる行為に分類できるように、すべてのものは結晶質と非晶質に分類できるかも知れません。 物体だけではありません。制服を着た人々が行進するような全体主義の国は結晶質、人々がかってきままに暮らせる国は非晶質。流れ作業の中で、人々が機械的に働く工場は結晶質、人々が自由な雰囲気の中で創造的な仕事をする工場は非晶質。

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そう考えていくと、オヒョウはつくづく結晶質の世界にはなじまない人間だと分かります。 まあダイヤモンドよりガラス玉の方が向いていると自分でもわかっていましたが。


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