【 洛陽の紙価 】 [雑学]
今、世界のIT業界を見ると、あっと驚くような新しい製品を生み出しているのは、もっぱらGoogleとAPPLEだとオヒョウは思います。Googleは世界中の書籍の著作権を手に入れ、電子出版するプロジェクトを着々と進めていますし、APPLEは、ipad(ネーミングは感心しませんが)で、紙の印刷物の代わりに液晶画面を使うというコンセプトの商品を開発しました。
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実際にipadを手にしていないオヒョウが批評するのは不適切かも知れませんが、おそらくipadには、今後改善すべき余地がそれなりにあると思います。 本当の紙の印刷物の代替にするなら、折り曲げられるか(可撓性)? 畳んでしまえるか? 明るい屋外で鮮明に読めるか? 電池切れに対応できるか? 雨や水分に対してどうか? 重たくないか・・・等のポイントも大事になります。 でも最初から完全なものを求めるのは愚かです。
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仮に完成度が低くても、APPLEがキャンペーンを張れば、必ずブームになり、世界に新しい流れができると思います。スティーブ・ジョブスのカリスマ性のなせる技です。
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そして、もう一つの流れがあります。米国の新聞社は軒並みWEB版に注力しており、有料コンテンツの比率を上げると同時に、無料の記事と有料の記事の区分けを明確にし始めています。これはオヒョウのように無料の海外WEB版を読む者にとっては、辛いところですが、もともと新聞宅配制度が日本ほど完備していない米国では早くから予想された事です。
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いずれ日本も追随するでしょうが、日本には固有の問題があります。大手新聞各社には、全国に分布する販売店システムの利権の問題、印刷業者との癒着・利権、紙パルプ業界との関係があり、それらを解消する必要があります。
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かつて、新聞は環境問題や公害問題を鋭く糾弾する一方、印刷時に発生する鉛公害の問題には口をつぐんでいました。輪転機から鉛が追放されたのは、問題提起から随分時間が経ってからです。
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新聞紙は古紙回収システムが確立しており、リサイクルシステムの優等生ですが、それでも毎年大量の森林を伐採して紙パルプにしています。環境問題、とりわけCO2問題を追究するくせに、自分は販売部数を増やしたい(つまり紙を多く消費したい)という矛盾があります。日本の新聞はそれに言及しませんが、米国では一足早く、WEB版の活用でその矛盾を解消するのです。
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Google、APPLE、新聞各社の動きに共通するのは、ペーパーレス化の動きです。ハードウェアとソフトウェアの両方で、着々と進行しています。これが全世界で一つの波となれば、何が起こるか?
1.紙パルプ用の森林資源は保全されます。
2.紙パルプ業界の株価が下がります。
3.新聞配達員は失業します。
4.多くの書店がつぶれ、生き残るのは、電子メディアに対応した商品を多く扱う店だけになります。
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かつて、新美南吉の「おじいさんのランプ」では、最後に主人公は本屋になります。時代の進歩に取り残されて無くなる商売ではなく、時代の進歩と無関係の商品、むしろ文明の進歩を加速させる情報を商う商売として本屋を選んだのですが、その本屋にも限界があります。既に、地方都市の零細な書店はどんどん淘汰されつつあるのです。
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本来、書店が扱うのは情報という目に見えない商品ですが、実際には紙でできた品物を扱う事で商売がなりたったのです。純粋な情報だけを必要とするなら、インターネットでダウンロードすればいい訳で、店舗や在庫、店員は不要になります。
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かつて、ベストセラーを出す事を、中国では「洛陽の紙価を高める」と言いました。これは文筆業を営む人には最大級の讃辞であろう・・とオヒョウは思います。 これから人々はどう言うのでしょうか?「村上春樹の新作のお陰で、出版社のサーバーがダウンしたよ」という事で、アクセス数で議論する様になるのでしょうか?
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そう考えていたところに、機械商社の人が新製品を売り込みに来ました。NC旋盤のプログラムをインプットしている、フロッピーディスクが、近い将来、無くなるので、USBメモリーに切り替える為のアダプターの売り込みです。 OA機器と同じように、工作機械のプログラムのメディアもどんどん世代交代するのです。
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でも、これでいいのかな?
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紙で書いた資料が古い・・・ということで、メディア(媒体)は磁気媒体(テープやフロッピー)になり、更に光磁気媒体(MOやMD)になり、それらが消滅して、光学的媒体(CD、DVD、BD)の時代になり、さらに今はハードディスクやフラッシュメモリーが、記憶媒体の主流になっています。 同時にOSやフォーマット形式もどんどん切り替わっていて、もはや20年前のワープロの資料を読む事もできません。読めるのはプリントアウトした紙の資料だけです。
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より高密度、高性能になるのは結構ですが、この寿命の短さは問題です。長期間、記録を残したい場合、どのメディアを使えばいいのか・・・・?
以前、ネット上に、こんな質問がありました。
「50年間、会社の資料を残す必要が生じた、どんな媒体を用いるべきか?」
対する回答は
「長期間の保存に耐えた実績という点では粘土板に刻むのが一番」
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確かにipadも結構ですが、電子媒体では、タイムカプセルに入れるのは不安です。 これから電子媒体と紙の使い分けはどうなっていくのでしょうか?
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かつて、ニーチェは「カミは死んだ」と語りました。今から50年後に「ツァラストラかく語りき」がどんな媒体で売られているかオヒョウには見当もつきません。
ひょっとしてメモリーにインプットされていて、本文も変更されているかも知れません。
こんばんは。
新美南吉大好きです。
いつも泣けます。
by 夏炉冬扇 (2010-01-31 19:02)
私は長期保存用には、未だに紙や写真、アナログの媒体、で保存。
CDとかDVDはダメになることも多いとか。
紙がなくなることはないと思いますが、
ほんの少しだけ見れば済む、というようなものは電子媒体が向いている、
と思います。
by おじゃまま (2010-01-31 23:48)
夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。
私は、新美南吉、浜田広介、小川未明など、昔の児童文学作家が大好きです。 以前、CURURUのブログで書いた事がありますが、そのうち、もう一度雑文に書こうかと思っております。
またのコメントをお願い致します。
by 笑うオヒョウ (2010-02-01 01:22)
おじゃまま様 コメントありがとうございます。
最近の電子メディアの寿命の短さは、いずれ問題になると思います。
CD、DVDも、プレスしたものも、感光して焼いたものも、意外に短寿命らしく、将来、重要な記録を読み出せなくなって、困る可能性がありますね。
SSDに用いるフラッシュメモリーも書き換え回数に限界があるらしく、いつか突然故障するかも知れない・・・という事です。 やれ困りました。
オヒョウは、古くなって色褪せた写真をデジタル化してCDに入れておりますが、そっちの方が先にダメになるかも・・。
まあ、若かった頃の写真を大事にとっておくのも、未練がましいのですが。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-02-01 01:28)