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【 冊封の匂い 】 [中国]

【 冊封の匂い 】 

中国の習近平国家副主席が来日する際、天皇陛下に謁見する事をゴリ押しし、特例として認める事になったそうです。中国と韓国に対し、ひたすら融和的な民主党の意向を反映させたものでしょうが、気になる点があります。 

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それは宮内庁が唱える1ヶ月前ルールの事ではなく、双方の身分の事です。 天皇陛下は憲法上の立場は象徴ですが、外国からは日本の元首とみなされています。一方、中国の方は胡錦濤国家主席が元首です。 習近平はその下の地位ですから、対等な会見はありえず、拝謁または謁見となりますが、全てのマスコミは会見という対等の立場を前提とした表現です。

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対等の立場でなく、拝謁であるなら中国がゴリ押しする事はできないはずですが、中国はそれを可能にします。それは、中国が元首でも首相でもない小沢幹事長を厚遇し、胡錦濤と対等であるかの様に扱い、観光旅行と選ぶ所の無い600人もの大デレゲーションと握手することで、

「こちらは、これだけの事をしてあげたのだから、中国の若手を天皇と会見させろ」と言われると、もはや断れません。 中国の術中にはまりました。

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ではなぜ、中国は習近平を天皇陛下に会見させたいのでしょうか?オヒョウの考えるのは、以下の理屈です。

・習近平は、副主席の時点で天皇と対等の会見をした。

・その後、習近平が国家主席に就任すれば、もはや対等ではなく日本の天皇は、中国の国家主席の下位に位置する・・・。

つまり東アジア共同体において、日本は中国の下位に位置する。

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まさか・・と思いますが、中国は日本に対してのみ、中華思想を強いています。 例えば欧米の全ての国には、中国の事をチャイナ、シノ、キノといった発音で呼ばせていますが、日本に対してのみ、同じ意味のシナと呼ぶことを許さず、中国と呼べと、かの国は強いています。

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中国は、外交に於いて、序列を非常に重視する国です。国家主席が外国の首脳と握手する際、決して国家主席が歩く場面をTVは映しません。必ず、外国の首脳が、国家主席に歩み寄り、握手を求める形にさせるのです。 朝貢外交時代の名残でしょうか? そして、外国を訪問する際は、最上級の待遇を求めます。

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米国では、外国のVIPがホワイトハウスを訪問する際、一つの慣例があります。大統領自らがワシントンの空港(アンドリュース空軍基地または、ダレス空港、ナショナル空港)で出迎える場合があるのですが、その対象は3人だけで、具体的には英国のエリザベス女王、ローマ教皇、そして日本の天皇です。 

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胡錦濤が米国を訪問した際、この待遇を要求しましたが、時の大統領ブッシュ(息子)によって、にべもなく断られました。メンツを潰された中国は、ワシントンに直接入るのではなく、シアトルに入り、国内移動の形でワシントンD.C.に入るという苦肉の策のプランをたてました。

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シアトルでは非公式にビル・ゲイツの大邸宅での晩餐会に出席し、その後、ホワイトハウスに移動したのです。ビル・ゲイツは、中国での海賊版ソフトの横行で、マイクロソフトが莫大な損害を受けている事から胡錦濤に何度も接触し、対策を要請しています。だから旧知の友として胡錦濤を迎えたのですが、これは不思議な事です。

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米国に出張した方はご存知ですが、東アジアから北米を旅行する際、まず東海岸に入ってから西に移動し、西海岸から帰るのが時差ぼけ対策としては適当です。ワシントンD.C.からワシントン州に入るのは合理的ですが、その逆にワシントン州からワシントンD.C.に入るのは、あまり適切ではありません。 中国は無理したのです。

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胡錦濤の米国訪問は、(間違えて)台湾の国歌を吹奏されたり、屋外の演説中に、人権活動家に長時間邪魔されるなど、さんざんの嫌がらせを受け、その後、彼は米国を公式訪問していません。(勿論、中国国内では、米国訪問は大成功だったと報道されましたが)。

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ことほど左様に、メンツや形式、立場にこだわる中国が、無理を承知で、非礼な会見を要求するのは、日本の民主党政権がどれだけ中国の事を重んじるかを占う為かも知れません。 日本人としては愉快な事ではありません。

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そしてもう一つ、オヒョウが心配するのは、習近平が印鑑を持ってくるのではないか・・という事です。

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実は、過去にも一度、中国は天皇陛下に「日本国天皇」と刻した印鑑をプレゼントしようとして、直前に日本側随行員の機転で断られたという経緯があります。

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中国が外国の元首に印鑑を贈るという事は、その地位を中国が認めてやるぞ・・・という冊封外交の一つの手続きであり、主従関係を示す事でもあるのです。

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もっとも、中国では印鑑の贈答は普通に行われます。

オヒョウの中国での勤務先の、重要顧客のトップが、日本の親会社に栄転する際、お祝いと餞別として、印鑑を贈ろう・・・と中国人副総経理が言い出しました。 そこでオヒョウが不用意に印鑑を贈るべきではない・・と言うと、キョトンとします。 理由を説明すると、なるほど・・と頷き、議論になりましたが、結局役職名なしの名前だけの印鑑だけならいいだろうという結論になりました。 

中国の翡翠の石に流麗な篆刻を施した印鑑は、確かに見事な美術品なのです・・・。

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でも中国の要人が天皇陛下に贈るとなると大問題です。

今から、2000年後の将来、福岡県志賀島あたりで、農夫の鍬に何かがカチリと当たったとします。そこには、「中華人民共和国ノ倭ノ日本国天皇」と篆刻した印鑑があり、一緒に出てきた、記録には「中国国家副主席ノ習近平、明仁ヲ天皇ニ任ズ」などと書いてあったら、ちょっと嫌ですね。


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Dr.Y.

この件、メディアの報道を充分に追ってなくて、ピントはずれの感想かもしれませんが、小沢さんが宮内庁長官に激怒した、とか辞任しろというニュアンスの発言をしたとか(違いましたか?)、私は拍手喝采でした。
まあ、たしかに事は日中問題という側面もあって簡単ではないでしょうが、宮内庁に関する限り、天皇の権威を傘にきて、これまで数多くの文化財をいわば差しおさえ状態にするなど、やりたい放題でした(たしかに、文化財は日本が英国君主制に学んだ概念ではありますが.....)。
で、その実態はというと、単なる木っ端役人ではないか、という。小沢さん、グッジョブ! 長官早く辞めろ!、といった感じでしょうか。
by Dr.Y. (2009-12-15 09:39) 

笑うオヒョウ

Y博士殿
コメントありがとうございます。 実はオヒョウは、宮内庁の役人の発言にはあまり興味がありません。 どの世界にも、偉い人の側近には「虎の威を借る狐」的存在がいまが、特に宮内庁の場合は、顕著でしょうね。
天皇の政治利用については、議論の余地があるかも知れません。 政治的に利用するのは不可・・と言いますが、そもそも皇室外交は政治の一部ではないか?と考える事もできます。 生臭くない上品な世界であるとはいうものの、国策として友好を深めたい国を選んで訪問したり、招待する訳ですから。
そのあたり、また考えたいと思います。

ただ、一言いいたいのは、中国とは本来非常に尊大な国である事。しかも気づかないうちに、臣下の礼を取らされていたりするので、注意が必要である事です。 またコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2009-12-15 10:11) 

Dr.Y.

たしかに、日中問題と見ればおっしゃる通りかもしれません。しかし、今日の報道でも、与党側が、役人に過ぎない宮内庁長官が記者会見するのは越権だ、というようなことを言っているみたいですね。まさしく、その通りで、木っ端役人、早く辞めろ!、と私は思っています。
私のような社会学民俗学関係の人間にはあまり関係ないですが、どこのフィールドでも“宮内庁”という錦の御旗で調査できない領域が一杯あります。で、宮内庁と言うだけで皇室と関わりある特権階級のようなイメージを何となく抱かされてきましたが、今度の件で奴らも平民、だけでなく只の公僕に過ぎないことが露呈し、有権者をバックにする政治家に何てこと言うんだ、という図式になって私は大喜びです。
by Dr.Y. (2009-12-15 15:00) 

笑うオヒョウ

オヒョウの如き下賤の輩には、宮内庁など、とんと縁が無いので、ピンと来ないのですが、
貴兄の話を読んで思い出しました。 その昔(戦前ですが)母が修学旅行で京都御所を見学する事になったのですが、待てど暮らせど、宮内省(当時)からの許可が出ず、やきもきしたとの事です。結局、見学許可はでたのですが、金沢を出発し京都に着いてからその連絡を受けたとの事。他にも、正倉院の御物や、古文書、古墳など、宮内庁管轄で公開されていない文物はたくさんあるはずです。 それらが、本当に品物の保全管理の為に公開できないのか、それとも勿体つけているだけなのか、皇室から見せるな・・という指示がでているのか、そのあたり門外漢のオヒョウも知りたいな・・と思います。

by 笑うオヒョウ (2009-12-15 17:52) 

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