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【 中国にとってのCOP15 】 [鉄鋼]

【 中国にとってのCOP15 】 

中国がコペンハーゲンで記者会見を開き、EU、米国、日本の温暖化対策の目標値を厳しく非難しています。EUや米国の提案を目標値が低すぎると斬り捨て、返す刀で日本の提案を実現性に乏しいと否定しています。

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自分自身がオブリゲーションを負う気がないくせに、他国の提案を非難するとは、ずうずうしい限りですし、第一、会議が始まる直前に、他の参加国を露骨に非難するなどマナー違反で、これをすれば、他の参加国も態度を硬化させ、合意に至る可能性がそれだけ下がる事になります。

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いや、中国はCOP15が合意に達して成功する事を願っていない・・というのが本音でしょう。 オヒョウの乏しい経験を元に考えれば、中国流の考えでは、自分が損をする可能性が高い会議や契約は先送りするか、破談になるよう画策します。

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会社対会社の契約でも、最初に日本が譲歩して中国が得をする契約を結び、あとで中国側が譲歩する内容に契約を見直して、バランスを取ろうとすると、最初の契約はすんなりできるのですが、後の方の契約は、どんどん先送りされます。中国企業側にとって、その時点で損する方に見直す内容であれば受け入れられないのです。

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京都会議では中国は温室効果ガスの削減義務を負っていません。しかしコペンハーゲンのCOP15では何らかの形で削減義務を負わされる可能性が高いのです。それなら、中国にとってコペンハーゲン会議は失敗した方が好都合です。口が裂けても中国は言わないでしょうが、彼らはCOP15の失敗を望んでいます。

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無論、中国にとっても地球温暖化は、大きな問題ですが、日本とは事情が違います。太平洋やインド洋の島嶼諸国とは違い、海面上昇によって国土がなくなる危険はありません。中国大陸北部の砂漠化は猛烈な勢いで進行し、雲南省など南部の洪水被害も深刻ですが、「中国国家地理」誌によれば、中国はこれを地球温暖化とは直接結びつけず、国内問題と考えています。

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もう一つの中国の特徴は、自国にCO2削減義務が課せられるのを全力で回避しながら、一方で着々とCO2削減を実施する事です。彼らはポケットを持ち、オブリゲーションを課せられても、何時でも対応できるようにしているのです。

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しかし、中国にとって、日本などと異なるのは温暖化対策のコストです。日本の場合も温暖化対策を講じるにはコストがかかり、新税の導入を考えていますが、中国の場合はもっと大変です。

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この国は、エネルギーの相当量を値段の安い山西省などの国内炭に頼っています。そもそも、この国は西側諸国が195060年代に経験したエネルギー革命(石炭から石油に切り替えた変革)を経験していません。その時期に、かの国は文化大革命に熱をあげていたのです。だから中国でCO2削減をする場合、安価な国内炭との決別が必要なのです。

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もうひとつ日本と違うのは、日本では化石燃料を燃やす代わりに電化すればCO2削減が達成できるのに対して、中国では必ずしもそうではないことです。 これは日本では原子力発電やLNG火力が相当の比率であるのに、中国では石炭火力の比率が圧倒的だからです。でも中国では急速に原子力発電の比率が増える見込みであり、事情は日本に近くなると思います。

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中国の鉄道には、いまだにSLがあります。上海でさえ、構内入替用の機関車にはSLが残っています。これらがディーセル化、さらに電化されれば、かなり鉄道で発生するCO2は減ります。

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そして、最大の課題は製鉄業です。製鉄業は、石炭を燃やしてなんぼの商売ですが、銑鉄を作るのに必要な石炭の量は少ないに越したことはありません。銑鉄1トンを生産するのに必要なコークストン数をコークス比と言いますが、この値が中国の場合、まだ高いのです。 

中国の製鉄所のコークス比についての文献は多いのですが、無料で読めるものとしては、下記の新日鉄技報があります。(いささか古いですが)。http://www.nsc.co.jp/tech/report/pdf/38403.pdf 

この数値の改善は、中国製鉄業あるいは中国政府にとって重要な課題です。しかし簡単ではありません。

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コークス比を決定するのは、高炉の炉容積、炉頂圧、熱風炉の送風量と温度、微粉炭吹き込み量など、数多くのパラメーターです。それに加えて、高炉操業には曰く言い難い要素があり、高炉は一種の単純な複雑系です(本質的に矛盾した表現ですが・・・)。コークス比や高炉操業について、このブログで簡単に説明する事はできませんから、この話はここでやめます。

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おそらく中国は、今後に日本にコークス比改善の技術指導を無償で行う様求めるでしょう。勿論、地球温暖化阻止の大義名分のもとに。実は、中国はそれ以前に製鉄所の近代化、合理化を全速力で進めています。 

例えば日経産業新聞に下記の記事があります。

http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx

でも中小の製鉄所を閉鎖し統合するのは、実は簡単ではありません。地域経済と密着し、雇用を創出し、税金を納める小型の製鉄所は、中国の地域社会にとっては、貴重な財産であり、たとえ効率が悪く、CO2を出しまくっていても、閉鎖するのには抵抗があります。

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日本の場合を思い出せば、新日鉄の釜石や堺で高炉を閉鎖した時の寂寥感は社員だけでなく地域社会の誰もが分かちあいました。 もっとも人によっては、釜石の高炉より釜石のラグビー部の方を惜しみましたが。

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日本でもCO2削減が本格化すれば、内容積1000m3以下の高炉を閉じて、海外に移転する様な話が出てくるかも知れません。コペンハーゲンでは鋭く対立する日本と中国ですが、小型製鉄所の整理の問題では、立場を同じくして、協力しあえるかも知れません。


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笑うオヒョウ

失礼しました。題名のてにをはが間違っていました。
中国にとってのCOP15が正です。お詫びして訂正します。
by 笑うオヒョウ (2009-12-15 01:31) 

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