SSブログ

【 西川善文という男 】

【 西川善文という男 】 

男の評価は棺を覆うて初めて定まる・・というのであれば、まだ何も言えませんが、西川善文という男は、それなりに面白い男なのかも知れません。オヒョウがそう思うのは、彼の日本郵政社長の辞任の仕方にちょっと感心したからです。

・・・・・・・・・・・

功なり名を遂げた・・とは言えませんが、彼は既に役職にも報酬にも未練を残す必要の無い男ですから、四面楚歌の雰囲気になった時に、すぐに辞任しても良かったのです。鳩山(弟)から痛罵される屈辱を凌いで、晩節を汚す形で地位に留まり、政権交代の後、ありとあらゆる方向から辞任要求が出ている中、彼は辞め時を探っていたに違いありません。そして、会社の株式売却が凍結になった時点で、自分の希望が叶わないという理由を付けてけじめをつけたのでしょう。

・・・・・・・・・・

自分からなりたいと手を挙げたのなら、すぐに辞める事もできます。しかし時の宰相小泉純一郎と、その子分であるケケ中から、三顧の礼で請われたとなると、無責任に放り出す事もできなかったのでしょう。 既に小泉も竹中も権力の座から離れた現在、彼らに義理立てする必要も無いと思いますが、ある意味律儀なのかも知れません。

・・・・・・・・

逆説で考えるオヒョウは、他人が、未練たらしくて見苦しいとする、西川氏の辞め方を評価するのです。でも、では日本郵政の社長に就任するまでの西川氏の業績がどうか・・というと、逆にオヒョウは首をひねるのです。

彼は本当に一流の銀行家か?

・・・・・・・・

関西では、京大か阪大に入れば、秀才として尊敬されます。さらに一流の財閥である住友グループに就職できれば、エリートとして尊敬されます。

「 住友はんに勤めてはるなら、嫁にやろか 」なんて言葉もあるそうです。 ・・・・・・・

そして住友グループは格式を重んじる財閥で、御三家と呼ばれる三社の格が特に高く、中でも銀行は一番威張っています。もっとも、これは住友グループだけではなく、どの企業グループでも財布の紐を握っている銀行が一番偉いのは同じ事ですが・・・。

・・・・・・・

阪大を卒業し、住友銀行でトップまで上り詰め、三井銀行を吸収し、銀行協会の会長を2度も務めたとなると、これは関西での出世街道の頂点に達した事になります。 では彼の業績は何か? 

調べてみると、資料には「銀行の不良債権処理に手腕を発揮し、銀行経営を健全な状態に戻すのに尽力した・・・」とあります。 何だこれは?

・・・・・・・・

普通、住友銀行の幹部を長く務めていれば、幾つかの手柄があるはずです。 安宅産業が破綻した後始末をしたとか、瀕死の東洋工業を救って、マツダとして再生させた・・とか、同じく瀕死の状態だった朝日麦酒を改革してキリンを凌ぐアサヒビールに蘇らせた・・とか。あるいはイトマン事件の処理を的確にした・・・とか。

・・・・・・・・

銀行家の手柄とは、貸付先の企業あるいは社会全体を救済し、蘇らせて経済を活性化させて、社会の人々から感謝される行為です。そうでなければ、労せずして利益だけを貪る悪しき金貸しに過ぎません。

・・・・・・・・・

しかし、不良債権の処理というのは、クライアントの救済より自分の銀行の救済を優先して行ったという事です。具体的には、貸し渋りや貸し剥がしをする一方、預金金利をほとんどゼロにして、預金者がうべかりし利益を、強引に銀行側の利益に転換した行為です。銀行の外側にあった富を銀行の内側に移した訳ですが、極端な低金利は、預金者の購買意欲を減退させ、景気回復を更に遅らせる要因になりました(マスコミは誰も言いませんでしたが)。借り手の企業が貸し渋りや貸し剥がしで苦しんだ事は、マスコミの報じる通りです。

・・・・・・・・・

しかも三井住友銀行は、西川頭取時代に、貸付先に怪しげなデリバティブを抱き合わせで強引に売りつけています。当然ですが、この場合、借り手の利益と銀行の利益は反します。Win-winストーリーが銀行家の夢ですが、そうではありません。西川氏は、もし日本郵政が赤字だったら、変額保険だとかデリバティブなどの怪しげな金融商品を、売る積もりだったのでしょうか?

・・・・・・・・・

銀行協会の会長を務め、銀行業界のトップになったとは言え、悲しいかな、金貸しは賤業です。シャイロックがポーシャ姫に言い負かされる事で観客は溜飲を下げ、また観客はお宮さんにダイヤを贈った男を憎みます。金貸しは悲しい商売です。

・・・・・・・・・

だから西川氏は、自分自身が賤業のトップではなく郵政のトップになる事で、履歴のロンダリングを図ったのかも知れません。

・・・・・・・・・

繰り返しになりますが、本当の銀行家は単に金貸しの論理で利益を追求するのではなく、企業に貢献し社会を豊かにする事を考えます。

・・・・・・・・・

10年以上昔になりますが、ロンドンで住友グループのゴルフ会があった時、オヒョウは住友銀行の若い駐在員と回りました。彼は 「 単なる金貸しと思われるのは心外ですし、だから銀行家は嫌いだ・・と言われると悲しいです。銀行業務を通じて、何とか、社会に貢献し喜んで貰おうと、本当の銀行家は皆思っているはずです 」と語りました。

しかし、そのホール、グリーン手前のバンカーに捕まって、ボールがなかなか出せなかったオヒョウは、思わず口に出してしまいました。

「 だからバンカーは嫌いだ 」


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。